劇場公開日 2021年2月11日

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「もうひとつの「ヤクザと家族」」すばらしき世界 shioshioさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0もうひとつの「ヤクザと家族」

2021年2月11日
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30年前に読んだ佐木隆三の「身分帳」、まさか今ごろ映画化されるとは思いませんでした。実在の殺人犯、田村義明を描いた小説でしたが、この作品を掘り起こし、映像という形で我々に投げかけた西川美和の視点にひとまず拍手。
主人公は芸者の母と海軍大佐の間に生まれた私生児。父親に認知されなかったため戸籍を持てず孤児院に。そこで非行を繰り返し暴力団員となり殺人を犯し服役します。
西川美和はこの映画で時代背景を令和に置き換え、彼が出所してからを鮮烈な人間ドキュメントとして描いています。
先日公開された「ヤクザと家族」にも繋がるような、一度失敗を犯した人間の生き辛さが描かれており、「すばらしき世界」という題名がなんとも皮肉に感じられましたが、スクリーンの役所広司にぐいぐい引き込まれるにつけ、もしかしたら主人公の内的世界は、ある意味、本当にすばらしき世界だったのかもしれないと想像しました。やはり“シャバの空は広かった”のでしょう。
役所広司の、まるで演技を越えて人間力がほとばしるような表情。加えて、仲野太賀を筆頭としたすべての脇役陣の突き抜けた演技。そして繰り返しますが西川美和の豪腕に脱帽です。
大満足の126分。映画というすばらしき世界に浸ることができました。ありがとう。

shioshio
shioshioさんのコメント
2021年2月11日

[閑話休題]
ほどこしを受けるのは嫌いなんじゃ!と、主人公が生活保護受給を嫌がった言葉、どこかの総理大臣に聞いて欲しかったです…

shioshio