「中国アニメ meets X MEN」羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来 しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
中国アニメ meets X MEN
90年代、安価な労働力を求め、日本や欧米メーカーは中国に工場を進出させた。
だが、アジアへの工場進出はこれが初めてではない。タイやインドネシアへの進出は、すでに70年代から行なわれてきた。
だが、こうしたアジアの国からは、世界的なメーカーは誕生していない。
一方の中国はどうか。
レノボはNECや富士通のパソコン事業を買収、ハイアールは米国ジェネラル・エレクトリックの家電部門を買収と、進出してきた国のメーカーを超えるような中国企業もすでに多い。
もともとはモノマネかも知れないが、自分たちの企業を作ろうというベンチャースピリット、そして、さらに技術革新してビジネスを拡げるチャイナパワーはスゴい。
本作を観ながら、そんなことを考えていた。
この映画には「ドラゴンボール」がある。ジブリアニメがある。いや、さかのぼれば「綿の国星」はもちろん、「デビルマン」すら見出せる。
そういう、先達の作品たちを参照したことを感じさせながらも、オリジナルな魅力に溢れた作品だ。
舞台は妖精(違和感のある訳語だ)という、特殊能力を持った人間とは異なる種族が存在する世界。
こうした設定はX MENを思い出させる。
テーマは善悪。
自然の中で暮らしてきた妖精たち。それを脅かす人間の自然破壊と開発。
そうして人間は文明を発展させ、“豊かさ”を手に入れてきた。
だが、こうした人間のおこないは行き過ぎてはいないか?
豊かさのために自然を破壊することは許されるのか?
そういう問いが提示される。
簡単に答えが出る問いではない。
だから葛藤がある。
そして対立が、戦いが生まれる。
戦いの舞台は高層ビルの立ち並ぶ都市。
ゆえに、その風景は、どうしても911を思い出させる。
正しい主張のためだったら、テロは正しい手段なのか?という現代的な問いをも、観る者に突きつける。
善とは、正しいおこないとは何か?
差別や分断、そして共生といった今日的なスパイスを効かせながら、幼い主人公の成長(というより学び)を描く。
前半、冗長と思えるほど丁寧に主人公たちのやり取りを描き、視点の転換を挟みながら、クライマックスに持っていく脚本はよく出来ている。
戦闘シーンのスピード感と激しさも見応えたっぷり。
なお、日本語吹き替え版は宮野真守、花澤香菜ら豪華声優陣をキャスティング。
中国アニメの到達点に驚きと拍手を送りたい。