「赤い風船🎈」羊飼いと風船 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
赤い風船🎈
文成公主(唐時代)の巨大像は大乗仏教のチベット仏教では観音菩薩、多羅菩薩を表しているらしい。チベットの人にとって民族の誇りと信仰を忘れないためのものでもあるのだろう。現在の中国政府からの弾圧のもと、チベット映画人ができる最大限の抵抗なのかもしれない。ダライ・ラマを口にするだけで逮捕されてしまう現実。
避妊リングを子供がオモチャの指輪ににしているのを隣人にみられることや子供がスキンを風船にして遊んでいることを「恥」と感じる人々。民族性なのか。文化なのか。それとも、中国政府による出産制限政策に屈する現実に対する情けなさなのか? 主要な経済拠点は省に組み入れられ、伝統的放牧生活に頼らざるを得ないチベット自治区の生活。子供の教育問題と人手問題の葛藤。教師になった青年と恋が実らず、尼になることで、家族の経済的負担から外れることを選択した妹。精力絶倫の旦那を持ち、一見幸せそうな姉が苦しみ、妹を羨む現実。
青空にあがってゆく赤い風船🎈をすべてのキャストが見上げるラスト。
チベットの人がそれぞれの希望を風船に見立て、生まれ変わり(転生)を信じて、暮らして行こうとしているように感じた。
チベット頑張れ❗
子供がスキンを膨らます場面。すごい肺活量だなぁと思いました。結構力要りますよね。標高が高くて、空気が薄くて、気圧が低いから、膨らますの楽なのかなぁ?
子供の頃、デパートでもらったヘリウム入りの風船を空に飛ばしたら、母親に「もったいない」とえらく怒られたことがずっとトラウマになっています。タダで貰った風船にああまで固執する母親にすごく幻滅しました。ケチ野郎。狭い住宅地の路地から空にあがってゆく風船は自由で羨ましく思えました。萎んでしまう前に放してあげたかっただけ。あんなに青い広い空だったら、もっと気持ち良かったに違いありません。
カールⅢ世さんへ
コメント有難うございます。幼少の頃のエピソードに思わず笑みがこぼれてしまいました。
ラストシーンは綺麗な終わり方で物語を詩的にまとめていると思います。ただあのカット繋ぎだと、チベットの美しい平原の広がりが感じ難くなっています。天高く上がる風船から望む鳥瞰ショットで少年二人を捉えたら、本編のチベット大地を最後雄大に表現できたのではと思いました。素朴な映像詩の貴重さを認めた上での個人的な意見です。