お口の濃い人のレビュー・感想・評価
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ウォッカ15mlメロン・リキュール20mlクレーム・ド・フランボワーズ10mlパイナップルジュース80ml
カクテル“セックス・オン・ザ・ビーチ”のレシピである。作中でラストのオチの台詞でもある。
今作は、ワンシチュエーションコメディであり、BAR内での様々な客、スタッフがそれぞれの会話劇を繰り返しながら、やがてそれが収束していくストーリー構成になっている。グループ毎に巻き起こるドタバタやいざこざの群像劇同士が繋がりを持っており、それが一種、アミダクジ又はメイズのような建付けであるのだが、後出しジャンケンのように唐突に関係が明らかになるところがこの作品の好き嫌いの分かれ目かもしれない。舞台のように一つの場所なのだが、異様に長いテーブルという設定にしてあるので隣の組とは被らない演出となっている。会話の内容はコメディとしてそれ程は面白くはないのだが、クスッとした優しいギャグは配置している。流行りの伏線回収モノとしての側面もあるのだが、上記の通り、後からこじつける構成は、漫才とかではお馴染みかもしれない。女子会の片割れが実はそこそこ売れてるバンドのボーカル、ネトゲーのオフ会参加者の1人の男の妹が街金のヤクザに脅かされている状況、そしてそれを助けるサニー・ディビスJr気取りの変わったオヤジ、実はその兄にネット上で借金踏み倒していた関係、店のオーナーがラグビーでもやりそうな厳ついガタイなのに3歳からピアノを習っていたので、喧嘩は足技のみという件。まぁ感心する程の巧みな関係性ではないのだが、その緩さが今作のキモなのかもしれない。そう来たかと唸るものもない。鮮やかなどんでん返しには程遠いが、その後半の街金の件がクライマックスシーンに設定されているので、それなりにシビアな設定からの救出劇というカタルシスは得られる。演じる役者陣の中ではそのヤクザ役の俳優が絶妙の演技をしていたことが今作の救いだ。ここがリアリティを生んだ事で展開が締まったと思う。でないと、下手な音声技術も手伝って、まるで学生映画のような低クオリティレベルで終わってしまう筈だったからだ。
遠山景織子のクオリティも芳しくない状況で、もう少し歯切れの良いセンスある台詞の応酬が望まれる作品であった。
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