「この映画には”希望・優しさ”という言葉は、存在しない。」トラフィッカー 運び屋の女 Naaki Iさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画には”希望・優しさ”という言葉は、存在しない。
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何と例えたらいいのか?分からない程に冷め切った映画作りが成されていて、ただ変化のないシナリオに腹を立てる訳ではなくて、かえって潔さも感じる。運び屋のシングルマザーの女性がいかにも飲み辛そうな麻薬入りのカプセルを飲む場面から始まり、終始、えずいたり、今度は吐き出そうにも吐き出せない不快感からだんだんと顔色も悪くなっていく様子を見ていると映画を見ている立場の方が、憤りや不快感がず~ッと続く感じがして、終いにはどうにかしてほしくなる。
人物の描き方も刑務所から出所したての弟のほうが、人間的には、最後の砦の人道というものをわきまえていて、それが小悪党とされる所以か?その反面、同じ兄弟なのに弁護士である兄のエリックのほうが後先や人の命なんかを何とも考えない知的・自己中人間に映ってしまっている。
そんな二人を追うのがマリヤーナ・ヤンコビッチ演じるリナ特別捜査官。彼女の存在がこの映画を何とも言えない憂欝感に縛り付けるもう一つの要因で、彼女の徹底した言葉をそぎ落としたような演技が、彼ら兄弟をジリジリと追い詰めていく過程を見ているだけで映画から目を背けることのできないものにしている。
ちょっとしたほころびから、兄弟の麻薬の密輸計画やお互いの妻や子供との家族のつながりさえも破綻していく殺伐とした様子がアイスランドの風景や太陽が昇っているのかわからないような暗い雰囲気が、この映画の肝と言えるものかもしれない。それとアイスランドの捜査官はトランクに小さな金庫を備え付けて、そこに拳銃を保管しているシーンも出てきていました。余談として。
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