「思ってたのとは違ったけど」水曜日が消えた テツさんの映画レビュー(感想・評価)
思ってたのとは違ったけど
うん、なかなか良かったんじゃないかな?
曜日ごとの7つの人格、ある日消えた一人の人格、起こる体調の異変…というミステリーな部分で物語を引っ張りつつ、一人の身体の中に7つの人生を生きてきた男の転機を描く。
一人七役という部分が発揮される部分はかなり少なく、あくまでも火曜日の視点で物語が進むのは少し勿体ない気もする(まぁ、わざわざ全員分一日を見せるのは大変だから仕方ないが)
ミステリーとして物語を引っ張る、一つの人格が消えたということについては副産物的なもの(劇中でもハッキリ理由が言及されるわけでもない)であり、物語としては一人の男の生き方を描いている。
テーマとしてはザックリ「自分を受け入れる」「他者(この場合は他の人格も含む)を受け入れる」「"元"や"過去"に縛られらず今を生きる」あたりだろうか。
そこまで強いメッセージ性の映画ではないが、ミステリアスな展開とたどり着く結末まで目が離せなくなる良作
事故現場の鳥の描写なども面白く、他の演出についても改めて見たくなる
個人的には彼らがどう生計を立てているのか(後半で僅かながら分かるが)、交換日記のようなものでよく16年くらいを乗り越えられたな…など描写されない部分がノイズになってしまったのも事実だったりするので、そこを上手く回避して欲しかったかなぁとも思う。
主人公の友達、一ノ瀬のなんとも言えない立ち位置も良かった
各曜日、7つの人格を過ごす主人公。その中で真面目で地味な"火曜日"を軸に彼の日常と"水曜日が消えた"ことから始まる転機を描く。
劇中、何度も映し出される主人公の子供時代の事故現場。車のサイドミラーに映る鳥が7つに分かれる(そして物語が進むにつれ変化していく)様の描写が面白い。
物語は火曜日の視点を中心に展開する。地味でつまらない毎日、遊び散らかす月曜日の片付けをし、閉まっている図書館に思いを馳せ、検査を受ける日々…
しかし、水曜日の人格が消えてしまい…
火曜日の視点なので、火曜日の1日が繰り返されるが同じように見えて、少しずつ月曜日にも変化が訪れているのが同じ画角でチラリと示されているのも面白い(彼の布団に警備員人形があったり=夜中まで活動していたと見えるなど他にもあったかも知れない)
水曜日が消えたことにより、困惑しながらも火曜日は水曜の1日を過ごし始める。彼に取って最大の関心は図書館。そこの職員:瑞野に淡い恋心を抱くも、彼女の中には別の曜日の自分がいることが後に判明してくる…
彼女との関係については最終的にどうなったのかはあまり言及はされなくなるが、水曜を過ごせる火曜日の喜びと別の自分への変化をもたらす重要な存在ではあっただろう。
もう一人、一ノ瀬も重要なポジションであろう。各曜日の彼を知る友達である彼女の火曜日へのもどかしい想い。身を案じつつも火曜日の共犯者になってしまう彼女について明かされる秘密…彼の過去と今を繋ぐ存在で、彼(7つの人格)以外の他者という意味でも重要な存在であり、この親しみやすくもどかしさを放つ演技も良いと思った。
火曜と水曜を過ごす内に、火曜日にも異変が起き始める。ぐらつく身体に始まり、飛んでしまう意識とその間の空白の行動…意識が飛ぶ時のフラッシュのようなルックもちょっと面白いなと思った。
実は他の曜日も消えており、ついにビデオを通じ、月曜日と火曜日が対峙する。中村倫也の演技のバリエーションがようやく後半で発揮される場面だ。
自分勝手っぽい月曜日と他の人格も大切な時間があるのだと気づいた火曜日、甦る記憶、その果て…
クライマックスで残ったのは月曜日?のようであったが、彼は7つの人格を残すように治療にあたる者に告げる。
そして、ここでようやく彼ら7人がビジュアルとして出てくる(それぞれ在宅で出来る仕事などをしているようだ)
最終的に、主人公は今の自分を、7つの人格という他者を受け入れて生活をすることに決めた。幼き頃「元の自分とは」と言っていた自分から今の自分(7人)を生きると。
事故の場面に、鳥が映らなくなったのも彼が倒れていないのも、過去いや「元の自分」という存在から今の自分を受け入れたということではないだろうか?
また、一人でしていた卓球も一ノ瀬にラケットを渡した…これも他者を受け入れ新たな生活を始めた彼を示しているのだなと…
7つの人格、消えた一人の人格というサスペンスミステリーな内容を縦軸に一人の男が人生の大きな転機を迎える姿を描いた作品。
エンドロールのポストイットでのやり取りも面白いのでお見逃しなく
あぁ、もうちょっと上手く文章を纏められるように修行しないとなぁ…