ナイル殺人事件のレビュー・感想・評価
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事件で浮き彫りになる人間の裏側のドラマ
「オリエント急行殺人事件」(2017年)は見たけれど、本作の78年版や原作は未見。ミステリなので結末を知らないのはむしろラッキーと思って見に行った。
謎解きに関しては、申し訳ないがちょっと拍子抜けだった。6週間で富豪女性に乗り換えて結婚までした時点で、もうこいつ(サイモンです)が動機もあって行動も怪しいし、女もグルだろうと思ってしまった。(あとこれは私の煩悩なのだが、有色人種の俳優を犯人に配することはしないだろうという邪道な推理をしてしまった)
それに加えて事件後のポアロの取調べが、関係者総当たりで全て煽り倒していくスタイルだったので、理詰めでじりじり真実に近づく過程というより、みんな怪しいよねという目眩しのための説明を聞いているような気分になった。ポアロがそれぞれに喝破していた内容が動機の話主体で、細かい現場の証拠の積み上げがなかったせいもある。
オリエント急行ではこんな調子だったっけ?あまり記憶にない。
彼の決めつけに近い口調の取調べの場に、うかつに第三者を立ち合わせたことで余計な死人が増えたように思えた。限られた面子の中にいるはずの犯人が判明していないのに油断していいのか、または何か意図があってあえて立ち合わせているのかとはらはらした。
失くなった絵の具やスカーフに着目して途中で考察するような、探偵らしい推理の経過を披露するシーンがなかったのも、謎解きの話としてはちょっと残念だった。(78年版と原作は、描写がもっと巧みなのかも知れません。あくまで本作の個人的印象のみ)
一方、謎解きをサイドディッシュにした人間ドラマと考えると、とても面白かった。あの場にいた人間たちの金銭欲や嫉妬や猜疑心は、それぞれの状況を踏まえれば気持ちは分かるようなものだったり、そういう人間は現実でも身近にいておかしくないと思えるような内容が多い。どこにでも転がっている心情が舞台さえ整えば、殺人を疑われてもおかしくない動機になり得るのだ。
最初の殺人が起きるまでが結構長かったのも、事件によって本心が見えてくる登場人物をそれぞれきちんと描くことに重点を置いているからと思えば納得出来た。一見にこやかに付き合っている人間達の裏側にとてもリアリティがあった。
それと、エジプトの壮大な景観には癒された。悠久のナイルの流れ、威容を誇るピラミッド、そんな景勝地を行く贅を尽くしたハネムーン。最近国内でもあまり遠出していなかったせいか、解放感が心に沁みた。
名作の理由にもっと納得したいので、原作も読んでみようと思う。
卓越したポアロの切れ味に震撼する
最初、戦場に立つ若き日のポアロの姿から始まるのですが、はて、何故そこからなのか? それは物語の終盤に実感しました。果たして、如何に優れた推理を持ち合わせていたからと云って、生死を別ける作戦行動を上官に向かって進言できるものだろうか。しかも農家の出身で? 銃を構え敵に向かうのが勇者ならば、灰色の脳細胞をフル回転させ、犯人の心理を読み解き、殺人の犯行を指摘するのもまた戦士の凄み。例え相手にどれほど憎まれようとも確信を持って相手に詰め寄るポアロの姿に、震え上がるほどの切れ味を感じました。しかも犯人の真相――ああ、冒頭で、かつてのポアロの恋人が云っていたではないか。愛があれば全てを超えられると。犯人は一貫して愛を貫き、それ故に、恐るべき計画を立てたのだと。映画の冒頭で全てを描く、映画の基本を踏み固められた、見事な映画だったと思います。
実のところ、原作は読んでないし、旧作の映画も観ていませんが、それが幸いだったかも知れません。今作を十二分に楽しむことが出来ました。アガサ・クリスティーの作品はセレブ系の人々がおりなす殺人事件と知っていましたが、「お金を持っていると本当の友情は得られない(だったかな)」という台詞に、「それほど華やかな世界じゃ無いんだよ」と語られているような気がしてなりません。美しいナイル川の自然の中で、猛獣が噛み合う凄まじいシーンが交えられているのが印象的でした。
ポアロ自身のドラマは完結したけど、三作目はどうする?
ケネス・ブラナーの『オリエント急行殺人事件』は、主人公の探偵ポアロがカッコつけてばかりいて、全体的に冗長な印象だった。しかも監督のブラナーがポアロ役なのだから、おいしっかりしてくれよと言いたくもなる。とはいえシドニー・ルメット監督版でのアルバート・フィニーのポアロは天才的に面白いキャラだったので、ブラナーは不利な勝負で違う道を模索したのだろうとは思う。
そして二作目となるこちらでは、相変わらずブラナーのポアロはカッコつけているのだが、ブラナーは前作よりも積極的にナルシシズムに向き合って、本来なら事件の外にいるポアロを、物語の中心に持っていく改変を行ってみせている。すると不思議なことに、あれだけ鼻についたポアロのカッコつけが、この作品には合っている。殺人事件と謎解きという従来のストーリーに、ポアロ自身のドラマが加わって、作品に奥行きが出た。
ただ、殺人事件の解決に執着し、人には冷淡に接するポアロのスタイルに過去のトラウマという設定を与え、さらにはトラウマ克服のために執着を捨てる決意をしたラストシーンを観る限り、もうブラナーのポアロのドラマは終着駅に達したのではないか。三作目も準備中だそうで、どの面下げてまた探偵の戻るのかと思ってしまうが、そこは納得のいくプロットが用意されていることを願っています。
ミステリーナーイル♪
の歌が印象的だった前作、その時の出演者見てみたら錚々たるメンバーだったのね。今回のもエジプトの情景が素晴らしく楽しめたけどこれ人殺されすぎて事件解決したとは言えないよね。
「愛ってこえええ…」鑑賞後、思わず声が漏れた
「愛ってこえええ…」鑑賞後、思わず声が漏れた。最初はよくある三角関係ズルズルの嫉妬ものかと思っていた。でも最後でサイモンとジャクリーンが共犯者だったのに驚いたし予想できなかったなぁ。リネットをハメるだけのために偽りの結婚まで演じるとかすごすぎる。サイモンとリネットの出会いの時点から仕込まれていたのね。鑑賞後にOPのダンスパーティを思い出すとゾクゾクするわ。もう一度OPを見直したい。
最期も互いに自害したサイモンとジャクリーンの愛は相当なものだったに違いない。俺は本気で人を愛したことないから分からないけど、人間本気で愛するとあそこまでいっちゃうものなの?どんでん返しの驚きよりも恐怖が残ったので、個人的にはホラー映画に近いと思っている。
エジプトの景色が美しく観光してみたくなった。列車オンリーで閉鎖的だったオリエント急行殺人事件とは対照的で、シリーズものとは全く違う作品の印象を受ける。
全体的にドロドロして陰鬱な雰囲気が漂う今作。その暗い要素を明るいエジプトの景色が和らげてくれた。これでもし舞台が閉鎖的だったら気分が落ちて後味悪くなってたかもしれない。
最後ポワロがサロメの歌を聞きに来るシーンが好き。口ひげ剃ってたしホントの自分をさらけ出して、サロメと向き合おうとしたのだろうか。台詞は一切なかったけど余韻が心地よい。フェードアウトして終わったからその後が気になる。
ストーリーを象徴するガル・ギャドットとエマ・マッキーの美しさ
ケネス・ブラナー 製作・監督・主演の2022年製作(127分/G)のアメリカ映画。
原題:Death on the Nile、配給:ディズニー、劇場公開日:2022年2月25日
ピラミッドもスフィンクスも登場するが、主な舞台はナイル川をめぐる豪華客船の中で、
“ナイル”殺人事件のタイトルから期待した異国感はあまりなかった。
事件の犠牲者大富豪の娘リネットが、何とも貴賓高くてエロ美しいと思ったが、ワンダーウーマンのガル・ギャドットが演じてたことを視聴後に知ってギャップに驚かされた。彼女に彼氏を取られてしまうジャクリーン役がエマ・マッキーで、彼女の美貌にはずっと目を見晴らされていた。
古典的名作だけに、ストーリーは面白く、大富豪的いろどり、凶器や絵の具やマフラー等小道具の扱い、アリバイ崩し等、さすが見事と思わされた。ただ、銃撃戦で船内を走り回るポアロには、先入観からと思うのだが、少し違和感を感じてしまった。戦争時の映像を挿入していたので、そこに銃撃戦で活躍する絵が有ったらとは思った。
監督ケネス・ブラナー、製作リドリー・スコット 、ケビン・J・ウォルシュ、 ケネス・ブラナー 、ジュディ・ホフランド、製作総指揮マーク・ゴードン 、サイモン・キンバーグ、 マシュー・ジェンキンス、 ジェームズ・プリチャード 、マシュー・プリチャード、原作アガサ・クリスティ、脚本マイケル・グリーン、撮影ハリス・ザンバーラウコス、美術ジム・クレイ、衣装パコ・デルガド、編集ウナ・ニ・ドンガイル、音楽パトリック・ドイル、視覚効果監修ジョージ・マーフィ。
出演
エルキュール・ポアロケネス・ブラナー、リネット・リッジウェイガル・ギャドット、サイモン・ドイルアーミー・ハマー、ブークトム・ベイトマン、ユーフェミア・ブークアネット・ベニング、ウィンドルシャムラッセル・ブランド、アンドリュー・カチャドリアンアリ・ファザル、バワーズドーン・フレンチ、ルイーズ・ブルージェローズ・レスリー、ジャクリーン・ド・ベルフォールエマ・マッキー、サロメ・オッタボーンソフィー・オコネドー、マリー・ヴァン・スカイラージェニファー・ソーンダース、ロザリー・オッタボーンレティーシャ・ライト。
凄い人達の饗宴
原作者のアガサ・クリスティはまさに緻密。そして緻密。一体どんな脳の構造をしているのだろう。舌を巻くとはこのことだ。これを映画化するなんて!アブ・シンベルだけでなく、船の構造等も含め、途轍もない苦労があったでしょうね。
映画館ではナイル川の夕陽の美しさや、畔の歴史あるアブ・シンベル神殿(移築前)、そして、ピラミッドの壮大さに目を奪われ、登場人物の関係や名前や顔を把握出来なかった。
犯人は覚えていたのに詳しい殺害方法までは忘れてしまい、再度WOWOWで鑑賞。
船に乗っていた殆どの人が疑われるような秘密を持っていることも頭を混乱させた。
また、思慮深く真相に迫っていくポアロを演じたケネス・ブラナーの演技は見事。
ポアロに負けない完全犯罪を考える妖艶なジャクリーンも凄い。同情さえしてしまう演技。
映画ってやっぱりいいですね。
ポワロもガル・ギャドットも残念
原作未読です。
にしてもポワロも金田一耕助も、謎は解くけど誰も救えないのは毎度のことで。ポワロは今作は酔って寝てミスるし。
ガル・ギャドット好きなんだけど今作はかなりのバカ女で好感度爆下がりで残念。
友達の婚約者を寝取る金持ちのいけ好かない女子とはいえ、もう少し魅力的にできなかったものでしょうか。
あと、新型コロナの影響なのかもしれませんが、本来はロケやリアルなセットにしたいところをCGにしてしまって興ざめな作品が多い気がします。
映画としてそこそこは楽しめるけど、残念な部分も多かったかな。
前作
オリエント急行殺人事件より、こちらの方が好み。
推理した答えの一つが当たっていたのもじわっと嬉しかった。
ただ、ラストで22口径で果たして1人を貫通して2人目も殺傷する威力はあるのかがモヤモヤした。
やや間延び・・でも内容見事。
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金持ち女が、親友の恋人を寝取り、結婚する。
その親友は未練タラタラで、2人の前に何度も現れる。
そしてその男が心から愛してるのは自分だと言い張る。
そんな中、夫婦は新婚旅行でエジプトへ。
親族や友人達と共にナイル川を大型客船で観光する。
そしてそこにも元親友が現れた。
いい加減にしろと男がついにブチ切れ、元親友が逆切れ。
持ってた銃で男の足を撃ち、医務室にて鎮静剤で眠らされる。
自殺する可能性があったので、看護婦が一晩寝ずに看病。
そして翌朝、金持ち女が遺体で発見された。
これを皮切りにさらに2つの殺人事件が起こる。
これを乗船してたポアロが解き明かし、犯人確定。
実は元親友と男は共犯だった。実は裏で愛し合ってた。
元親友が男を撃ったのは空砲で、男は撃たれたフリしてただけ。
で隙を見てダッシュで妻の部屋へ。殺して戻って自ら足を撃った。
これにより鉄壁のアリバイを手に入れたというわけ。
元親友にも上記の通り、医務室で鉄壁のアリバイがあった。
ところが目撃者がいたことが分かり、2つ目の殺人を決行。
そしてその殺人にも目撃者がいて、3つ目の殺人を決行。
そんな感じの流れの中、ボロが出て来た。
ポアロの推理ショーにより2人の犯行が明るみに出たが、
2人はその場で銃で自殺した。
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有名な作品やし、本なり映画なりで見たことがあるはず。
でも内容は全く覚えてなかった。
それにしても改めて、素晴らしいトリックの作品よな。
さすがはアガサ・クリスティとしか言いようがない。
でも映画としてはどうだったかなあ、やや間延びして感じられた。
開始後1時間経っても殺人が起こらず、展開の軸が定まらん感じ。
さすがに眠くなって来て、早よ誰か死ねやとか思ってもうたがなw
新作を観る前に!
小説ばかり読んでいますがたまには映画でミステリを楽しもうと。
綺麗な映像で美女がたくさんいて目の保養になりました。
ジャッキーが可愛すぎた。金のためとはいえ、よく婚約者を親友と結婚させたな…
サイモンは魅力的でもないのにモテて、魔性の男なのか…??
殺人事件ものというよりメロドラマを観てるようだった。ダンスシーンやキスシーンがエロ過ぎたけど、ベッドシーンがないのは良かった。
ポアロの問い詰め方はあまり好きにはなれないが、甘党なところは可愛い。彼が品種改良したカボチャは食べてみたい。
ポアロがいるから次々人が死んでいくみたいに見えた。
原作も読んでみようと思った。
愛は異なもの罪なもの。 ポアロの髭に悲しき過去…ってそれいる!?
ケネス・ブラナーが名探偵ポアロを演じるミステリー「エルキュール・ポアロ」シリーズの第2作。
ナイル川を行くクルーズ船内で発生した殺人事件に、”灰色の脳細胞”エルキュール・ポアロが挑む。
○キャスト
エルキュール・ポアロ…サー・ケネス・ブラナー(兼監督/製作)。
クルーズ旅行の主催者にして大富豪リネットの夫、サイモン・ドイルを演じるのは『ソーシャル・ネットワーク』『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマー。
サイモンの妻である大富豪、リネット・ドイルを演じるのは『ワイルド・スピード』シリーズや「DCEU」シリーズのガル・ガドット。
リネットの親友でサイモンの元婚約者、ジャクリーン・ド・ベルフォールを演じるのはドラマ『セックス・エデュケーション』シリーズのエマ・マッキー。
製作はサー・リドリー・スコット。
アガサ・クリスティが原作小説「ナイルに死す」を発表したのは1937年。その後、1978年に初の映画化、2004年にはTVドラマ化しており、今回が3度目の映像化。ちなみに私、1978年版も2004年版も未見であり、更に原作小説も未読であります💦
はじめに申し上げておきますが、自分はケネス・ブラナー版ポアロが結構好き。
世間的にはデヴィッド・スーシェ版ポアロがよく知られているし、スーシェのポアロしか認めん!というコアなファンも居るとは思うのだが、スーシェ版に思い入れのない自分としてはケネス演じるポアロの、切れ者なんだけど神経質で嫌なオヤジという感じに惹かれます。
超豪華なキャストが集結するのもこのシリーズの魅力。
ジョニー・デップ、ミッシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、デイジー・リドリーなど、異常なほどのキャスティングだった前作に負けず劣らずな、…まぁ正直言うと前作からはパワーダウンした感は否めないが、ガル姐さんやアーミー・ハマー、レティーシャ・ライトなどが出演するという華ありまくりなキャスティングは見事🌸
今回目を見張ったのは衣装の美しさ✨
1930年代の服飾には全く詳しくないので本作の考証が正確かどうかは知らーんのだけれど、まぁとにかくどのキャラクターの衣装もカラフルでスマートでコケティッシュ!ボタンとネイルを同色で合わせていたりと、とにかくお洒落なのです♪
特にガル・ガドットの衣装がとにかく魅惑的💕まさかの”童貞を殺す服”にはドキドキが止まりませんでした…。鼻血ブーーーッ!!
夢に出るほど淫靡なガル姐さんの姿を拝めただけで、本作を鑑賞した価値は十分にあったと言えるでしょう。
全編に渡り撮影はイギリスで行ったらしい。
せっかくエジプトが舞台なのだから、どうせならCGやセットではない、実物のピラミッドや遺跡を見せて欲しかったところだが、これに関してはコロナ禍もあったし仕方がなかったのかも。とはいえ、殺人の舞台となる豪華客船カルナック号は実物大のセットを組んで撮影したらしく、その臨場感は抜群。
背景などのCGっぽさが気にならないといえば嘘になるが、セットのクオリティが素晴らしいので映画への没入感が損なわれる事はなかった。
前作とは違い、今回は事件の顛末や犯人など、内容を全く知らない状態で鑑賞。そのため、誰が殺されるかわからない展開にはかなりハラハラ。犯人に関してはまぁそうでしょうね、という感じだったが、それでもミステリーとして十分に楽しむ事が出来たように思います。
80年以上前に書かれた小説が原作なのだから意外性や先進性はないものの、王道を征く展開には安心感がある。ちょうど良い娯楽ミステリーだったと思います。
…ただ、前作以上に気になる点が多かったのも事実。
まずもって言いたいのは、ポアロの過去なんか描くのは不要だと言うこと。
原作を全く知らないものの、冒頭で描かれるポアロの過去が映画オリジナル要素であることは容易に想像がつく。だってその後の物語と温度感が全く違うもん。
アガサ・クリスティはポアロの過去についてほとんど描かなかったらしい。製作陣はそこに目をつけ、ポアロの過去を描写することで彼の人物像に肉付けをしようと試みたようだ。
…いや、多分そこクリスティ女史はあえて描こうとしなかった部分なんだと思いますよ。
名探偵というのは「神の視点」を持った存在でなくてはならない。物事を俯瞰し、隠された真実を探り出す存在である彼らにとって、感情移入できるような人物造詣は不要。
名探偵は物語世界の真理を見破る神的な存在だからこそ良いのであって、ポアロもれっきとした人間だったのです、なんて陳腐な人物説明は蛇足でしかない。
大体なんだよ顔の傷を隠すために髭を生やしてたって…😅髭生やすくらいで隠れる傷だったら、最初から気にすんなっつーの。
第一次世界大戦なんて、それこそ四肢の欠損した傷痍軍人がたくさんいただろうし、そういう人たちを差し置いてそれしきの傷を気に病むなんてそれどうなのよ?それよりも生きてたことに感謝せんかい。せめて『バットマン』のトゥーフェイスくらいドロドロの顔面になってから落ち込んで欲しい。
クライマックスでポアロが髭を剃ってたのも意味がわからん。シスター・ロゼッタ・サープのパチモンみたいなブルースシンガーと出会ったことで心の傷が癒えたのか?そんなにこの2人、作中で絡みあったっけ?
もう一つ気になったのは時間の配分。
まさか映画の開始から1時間近く殺人事件が起こらないとは思ってもみなかった。これじゃ「ナイルなかなか殺人起こらない事件」だよ〜🌀
ガル・ガドットの美しさのおかげで観ていられたが、それがなかったら退屈さでこっちが殺されていたかも。
前半1時間をセットアップに費やした結果、後半の1時間はとにかく忙しない。前半の静けさが嘘のように人が死にまくる。
そのスピード感は良かったものの、推理パートの作業感はいただけない。とにかくポアロが天才すぎるおかげで、「えっ!もう真相わかったの!?ほとんど推理してなくない?」という感じに事件の謎が解き明かされてしまう。もう少し観客にも推理のドキドキ感を味わわせてくれよ!
ポアロの人物像が掘り下げられた代わりに、事件の被害者や容疑者に関しての掘り下げは不足している。
殺されたリネットがどういう人物だったのか、サイモン&ジャッキーが何を思い犯行に及んだのか、そのあたりのことがほとんど読み取れなかったため全くドラマ部分に感情が乗っていかなかった。
特に問題ありだと思うのは前作から引き続き登場しているポアロの親友ブークの扱い。
てっきりホームズにおけるワトソンのようなポジションになっていくのかと思いきや、物凄く雑に処分されてしまった。こんなことなら登場させなくても良かったのでは…?
面白みのあるキャラクターだったし、今後まだまだ成長する余地を残していただけに、2作目で退場してしまったことが残念でならない。
キャスティングは見事だと思う。ただ、細かいことを言うとガル・ガドットとレティーシャ・ライト、そしてエマ・マッキーの3人が同世代とはどうしても思えない。
レティーシャ・ライトとエマ・マッキーは実年齢も近いし同世代に見えますよ。ただ、どうしてもこの2人と比べるとガル・ガドットはおばさ…もとい、お姉さんに見える。実年齢も10歳くらい上だし。
この3人をキャスティングしたかったのであれば設定から変更しないと。さすがにガル姐さんとレティーシャ・ライトが同級生は無理あるって💦
ちなみに、2004年のドラマ版でリネットを演じていたのはブレイク前のエミリー・ブラント。それを踏襲して、今回はエミリーをジャッキー役にキャスティングしていれば、話題性もあるしガル姐さんとの年齢も釣り合うしでとっても良かったんじゃないかと思うんだけど…。エマ・マッキーが悪かった訳ではないんだけどね。
とまぁ、ぶっちゃけると不満点も多くある映画だった。
とはいえ普通に楽しめたことは確か。続編の公開も決定しているようだし、次は劇場で鑑賞しても良いかなと思えるくらいにはこのシリーズのファンになってます♪
巷では本シリーズを中心とした「アガサ・クリスティ・ユニバース」の制作が噂されたりしているようですが、どうせならホームズやルパン、マーロウや明智小五郎なども登場する「名探偵シネマティック・ユニバース」を作ってみたらどう?
日本のミステリーに慣れていると
非常に面白い作品であったが、事が起きるまでが非常に長く、解決までが短い印象。
前作からの続きのネタがあるので、続けてみることをお勧めするが、見てなくても楽しめる。
日本のミステリーは早めに事件が起き、様々な参加者のストーリーが紹介されていく流れに慣れていると、流れが若干気になる。
映像美も演技も楽しめました。
津田健次郎さん目当てで吹き替え版を観ました。津田さんの演技がうますぎて、途中の泣きの演技に感動。彼女を失った激しい悲しみが伝わってきてもらい泣きしそうになるほど。
その後「お前がやったんかーーい!」と盛大にツッコミましたが。笑
全体的に映像が美しく、壮大なナイル川の光景が素晴らしい。ストーリーも矛盾なく分かりやすかったように思います。原作は昔読んだ気がするけどすっかり忘れてましたが、楽しめました。
ケネス・ブラナーのポアロにハマる
名探偵エルキュール・ポアロが殺人事件の真相を解くご存知
アガサ・クリスティの名作「ナイルに死す」の3度目かの映画化。
1978年のものが有名ですがケネス・ブラナーのポアロもgoodです。
最初の見せ場。
ロンドンのクラブ。
ジャクリーン(エマ・マッキー)は親友のリネット(ガル・ガドット)に
最愛の婚約者サイモン(アーミー・ハマー)を紹介します。
たちまち意気投合してサロメ・オッターボンのブルースにに合わせて踊り狂う2人。
6週間後。
新婚旅行のナイル川辺のホテルでお披露目したサイモンの花嫁は、
なんとリネットなのです。
だった6週間でパートナーがジャクリーンから、大富豪のリネットに代わっているのは、
正直言って、呆気に取られます。
前半1時間近くはエジプト観光。
豪華客船ssカルナック号。
ピラミッドにスフィンクスそしてナイル川と、川辺に建つエキゾチックなホテルが、
上空から映されて、旅行気分は上々です。
朝方、夕闇とコントラストが美しい。
アブ・シンベル宮殿を散策するリネットとエリオット夫妻目掛けて、大岩が目がけて落ちて来るまでは、
・・・観光と豪華船の仕様や客たちのファッションに見惚れていました。
後半は殺人事件が頻発。
3つの死体が転がる事態に・・・。
心拍数はアゲアゲです。
そして後半30分になりポアロも謎解きの幕が落とされます。
複雑に入り組んだ観客の思惑と犯人の真相。
悲劇が立て続けに起こり、豪華客船ssカルナック号は血塗られた戦場に!!
男女の愛憎と怨念と欲の皮。
ワンダーウーマン(ガル・ガドット)は最高に美しいまま。
金持ちで嫌われ者の我の強い女。
そんな感じはほとんど受けませんね。
リネットの資産を誤魔化そうとか、愛を独占しようとか、遺産のおこぼれに預かろう・・・
そんな男どもが、けっこう醜いですね。
ナイル川下りのクルーズ船を舞台にこんなゴージャスで哀しい物語を紡いだアガサ・クリスティ。
(元祖・旅行ミステリー。20世紀最大のセールスをあげたミステリーの女王)
今回も推理ドラマは悲劇のてんこ盛りでした。
過去鑑賞
エンターテイメント映画
ガルガドットにエママッキーとかめちゃ好きい!出てる人も豪華だし絶対面白いじゃん!て感じで観たんですが、2人の演技は凄いし、とにかく映像がダイナミックで綺麗で相当お金をかけてこだわって作ったんだろうなという印象。
なんだろうミュージカル寄りっぽい映像というか??
ショーを見せられてるようなエンターテイメント感がありました!!
私は原作の事とか本当になにも知らずに観たので、個人的な感想は意外とポアロめっちゃ感情的じゃね!?!この人本当に名探偵??て思いました。www
一人ひとりに執拗にめちゃ責め立ててましたよね?
それを全員に繰り返してるからなんか見ててイライラ…
優しいおじさんだっていう私の勝手な印象が余計にそうさせたのかも?しれないですが、
事件も結局は綺麗に解決したわけではなく被害者も多かったし、犯人も死んじゃうしであんまりスッキリするものではなかったですね。
しかも、止められたじゃん…ていうのが多かったというか…そうしてる間に誰か死ぬよ?ていう気持ちで観てました。案の定死んだし。
まあ夫が犯人なんだろうな〜ていうのは結構序盤から感じてましたが、まさか共犯だったか〜そこだけは気がつかなかった!!エママッキー大活躍だった!!
映像が綺麗で豪華なので見応えはあったんですが内容の方が若干間延びしてる印象で個人的にはあんまり好きではなかったかな〜
ポアロの髭…殺人クルーズに愛はあるか?
ポアロ・シリーズ(ケネス・ブラナー版)第2作。
Disney+で鑑賞(吹替)。
原作は未読、旧作映画は鑑賞済みです。
愛憎渦巻くナイル川遊覧船で発生した美しき富豪夫人銃殺事件。全員にアリバイがあるものの、犯人は外部から来たとは考えられず、前作「オリエント急行~」同様、限られた空間(密室と化した船内)でポアロは自慢の灰色の脳細胞を駆使し、事件の解明に挑むが、事態は混迷を極め…
ピーター・ユスティノフ主演で映画化されたバージョンとは違い、ポアロの人生が掘り下げられて、彼の過去や髭に隠された秘密が描かれるのがとても興味深かったです。
愛と欲が複雑に絡み合って引き起こされた今回の事件を通して、彼自身が抱える悲しい過去とも向き合うことになると云う展開が斬新で、単なる推理機械では無い、人間としてのポアロの魅力を見事に引き出した脚本が秀逸でした。
ポアロのドラマは一応の終着となりましたが、第3作が製作されると云うことなので、どのような事件、どのような人間ドラマが待ち受けているのか、今からとても楽しみです。
異国情緒を味わう
正直な感想は・・・ポワロ、犠牲者が増える前に事件解決してほしかった・・・(涙)
とはいえ、(たとえセットやCGだと分かっても)ピラミッドやスフィンクス、アブ・シンベル宮殿など、雄大なエジプトの景色を大画面で見られたことに感動した。
なかなか旅行にも行けないこの鬱屈した情勢の中、まるで海外旅行に行ったような気分を味わえて、それだけでも見た価値があったと思う。
(2022年3月鑑賞)
愛に死す 愛に報いる
シェイクスピア作品が定番だったケネス・ブラナーが、新たな金脈を掘り当てたのが、前作『オリエント急行殺人事件』。
ミステリーの女王、アガサ・クリスティーが生んだ名探偵、エルキュール・ポアロを再演。
『オリエント急行殺人事件』は旧作版も見て犯人やオチも知っていたが、今回の『ナイル殺人事件』は旧作版は見てないような…。犯人やオチを知らなかった。見た事あるのは別の“事件”だったかも…。
なので、シンプルにこの“ミステリー・クルーズ”に乗船。
そう。前作が列車なら、今回は船。(船の中で起きる事件…今ならあの事故で不謹慎かもしれないが)
大富豪の娘リネットは結婚したばかりの夫サイモンとハネムーン。
豪華客船でエジプトのナイル川を行く。友人、知人、親族…多くの招待客を乗せて。
友人ブーク(『オリエント急行殺人事件』から引き続き登場)とばったり出会い、ポアロも招かれる。
美しいエジプトを巡りながらの贅沢クルーズは申し分ない。
気分は最高だが、船の中は…。
金も美貌も兼ね備えている“ワンダーウーマン”な新婦に対し、新郎は文無し。逆玉。
そんな結婚に冷ややかな目も…。
招待客の中には、新婦一族に苦水を飲まされ、人生をメチャクチャにされた者も…。
さらに、新婦新郎それぞれの元婚約者の姿も…。
幸せと祝福に見えて、実際は憎しみ、恨み、ギスギスした人間模様。
何か起こらない訳がない。
発狂した新郎の元婚約者ジャッキーが、サイモンに小銃で発砲。サイモンは足に怪我を負う。
この元恋人同士であった男女のいざこざは、これから始まる“事件”の幕開けに過ぎなかった。
翌朝、新婦リネットが小銃で撃たれ殺された姿で発見される。
それを皮切りに、第2、第3の殺人が…。
ポアロは“灰色の脳細胞”を駆使して、捜査を開始するが…。
舞台は川を行く船の中。
言わずもがな、犯人は乗客の中にいる…!
凶器は小銃。所持していたジャッキーに疑いが掛かるが、彼女は犯行時刻、アリバイが。足を負傷したサイモンも然り。
聞き込みを始めると、次から次へと飛び出すリネットと彼女の一族への憎悪。つまりは、乗客ほぼ全員に動機がある。
そんな中発生した第2の殺人。被害者は、リネットのメイド。彼女は、犯人の姿を目撃していた…?
そう証言したのが、第3の殺人の被害者。
その被害者はポアロにとってまさかの…。しかも、ポアロの目の前で…!
愛憎と哀しみ乗せたこの謎を、ポアロは解決出来るか…?
前半1時間はじっくりと、容疑者たちと怪しい動機やエピソードを見せる。
容疑者は…
新郎サイモン、その元婚約者、ポアロの友人、その母で画家、ブルース歌手、その姪でマネージャー、リネットの元婚約者の医師、リネットのいとこで財産管理人、リネットの後見人、その友人で看護師…。
消えた凶器。無くなった幾つかの持ち物。勿論それらは事件に関わり…。
新婦新郎の愛憎関係だけではなく、ポアロの友人ブークとブルース歌手の姪の恋愛関係なども同時進行。
ミステリーのキーの一つは、“愛”。
人は愛の為なら…。
後半は一気に謎解き。
犯人やオチを知らなかったので、純粋に犯人捜しを楽しんだ。
ズバリその犯人は…、新郎サイモン。
何を言ってるんだ、ミスター・ポアロ。足を負傷した僕がどうやって…?
確かにサイモンには一見完璧なアリバイや、第3の殺人の時追うポアロから走って逃げる姿が目撃されている。
サイモンには無理。第2、第3の殺人は。サイモンはリネット殺しの犯人。
共犯者がいる。その共犯者は…、ジャッキー。
彼女にも完璧なアリバイあるが、それこそ犯人二人による巧妙なトリック。
ジャッキーがサイモンに発砲した小銃は空砲。サイモンは怪我を偽造。
騒ぎで一人になった時、サイモンはリネットを弾を入れた小銃で殺害。その後、自分で小銃を撃って足を負傷。
二人の犯行計画を知ったリネットのメイドを、ジャッキーが口封じで殺害。さらにその場を目撃したある人物も彼女が…。
彼女こそ黒幕と言っていい。
リネットとサイモンの結婚に嫉妬し、船にまで乗り込む目障りな元婚約者。
が、本当は、ジャッキーとサイモンはまだ恋人同士。愛し合っている。
サイモンがリネットと結婚し、財産を手に入れて、彼女を殺害。
その後人知れず落ち合い、金も愛も私たちのもの。
自分勝手…と言うより“二人勝手”な動機と犯行だが、これも愛故。
歪んだ愛の形ではあるが、最期心中する二人の姿は哀しい。
人は愛の為なら…。
明かされていくトリックや犯人は、さすが“アガサ・ミステリー”。面白味あった。
コロナ禍云々だからではなく、おそらく私は人生の中で行きたくとも行けないだろう。
だからこそ、エジプト旅行の気分だけでも味わえる。
70mmフィルムで撮影されたエジプトの美しい風景。
ゴージャスな船内、華麗なファッション。
これらも醍醐味の一つ。
正直キャストは前作の方が豪華。旧作版同様のオールスター・ムービーであった。
それでもこちらも、ガル・ギャドット、アーミー・ハマー、アネット・ベニングらビッグネーム。知名度はまだ低いかもしれないが、中でもジャッキー役エマ・マッキーが光っていた。
彼らが織り成す嫉妬、怒り、哀しみ、愛の人間関係図は、前作より色濃かったと思う。
2作目ともなると役や演技に余裕が出てきたばかりではなく、よりポアロ像が語られる。
開幕の第一次大戦時のエピソード。顔に深い傷を負い、奇抜な口髭を生やしたのはそれを隠す為。
当時恋人がおり、その悲恋…。
この『ナイル殺人事件』は、ポアロの運命を変えたとも言われているよう。確かに彼の心に深い悲しみの傷を遺した悲劇が…。
第3の殺人。友人ブークの死。
乗船前のブークとのばったり出くわしは、偶然ではない。実は、ある人からの依頼。ポアロは友人の幸せの為に。
が、友人は事件に巻き込まれ…。
ある時犯人の姿を目撃した友人から犯人を聞き出そうと追い詰めてしまったばかりではなく、死なせてしまった。
何が名探偵だ…? 友も救えず。
ポアロにとって苦く、痛々しい悲しい事件。
だからこそ、解決する。友の無念を晴らす為に。
友情も愛と言うならば、本作のポアロもそうだろう。
人は愛の為なら…。
ミステリーや旅気分の醍醐味は勿論、積み重ね始めたブラナー版ポアロ。
灰色の脳細胞、ユーモア、滲ませる渋みや悲しみ…。
また次なる事件と名推理も見たい。
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