「ポアロ自身のドラマは完結したけど、三作目はどうする?」ナイル殺人事件 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ポアロ自身のドラマは完結したけど、三作目はどうする?
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ケネス・ブラナーの『オリエント急行殺人事件』は、主人公の探偵ポアロがカッコつけてばかりいて、全体的に冗長な印象だった。しかも監督のブラナーがポアロ役なのだから、おいしっかりしてくれよと言いたくもなる。とはいえシドニー・ルメット監督版でのアルバート・フィニーのポアロは天才的に面白いキャラだったので、ブラナーは不利な勝負で違う道を模索したのだろうとは思う。
そして二作目となるこちらでは、相変わらずブラナーのポアロはカッコつけているのだが、ブラナーは前作よりも積極的にナルシシズムに向き合って、本来なら事件の外にいるポアロを、物語の中心に持っていく改変を行ってみせている。すると不思議なことに、あれだけ鼻についたポアロのカッコつけが、この作品には合っている。殺人事件と謎解きという従来のストーリーに、ポアロ自身のドラマが加わって、作品に奥行きが出た。
ただ、殺人事件の解決に執着し、人には冷淡に接するポアロのスタイルに過去のトラウマという設定を与え、さらにはトラウマ克服のために執着を捨てる決意をしたラストシーンを観る限り、もうブラナーのポアロのドラマは終着駅に達したのではないか。三作目も準備中だそうで、どの面下げてまた探偵の戻るのかと思ってしまうが、そこは納得のいくプロットが用意されていることを願っています。
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