「韓国エンタメは更なる高みへ全力疾走!」EXIT 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
韓国エンタメは更なる高みへ全力疾走!
韓国の街中で突然、事故や爆発が続発。
原因は、街中に蔓延した致死性の高い有毒ガス。
押し寄せるガスから逃れようと人々は高いビルに避難するが、ガスはみるみる街を覆っていき…。
…という、『タワーリング・インフェルノ』風味の韓国製パニック・エンタメ。
序盤は退屈。
大学時代、山岳部だった主人公のヨンナム。
今はうだつが上がらない無職の身。
母親の古希祝いのパーティーが開かれ、親族が集う。情けなく思われる。
そのホテルで、学生時代想いを寄せていた美人後輩で、今は副支配人のウィジュと再会。ウハウハ浮き足立つ単純なヨンナムだが、それも分からんではないくらい演じたユナがキュート。
が、彼女は支配人と交際中。ハイ、出ました、恋敵!
そこに事件を起こした科学者を挟み…と、定番。
ありふれたコメディみたいで、少々眠気を誘う…いや、ハッキリ言おう。連日の梅雨や暑さや仕事疲れでマジで寝ちまった。
でも、大丈夫! 休日の翌朝、話のメインが始まってからでも全く何の問題ナシにすんなり見れた。
とにかく、本筋が始まってからの面白さたるや!
何かただ事でない事が起こり、皆パニックに。
ホテルの外に出るが、異様なガスが押し寄せて来る。この時、ヨンナムの姉がガスに触れてしまい、重体に。
再びホテルに戻り、屋上へ避難しようとするが…
鍵が掛かっていて開けられない。
そこでヨンナムは防弾窓ガラスを壊し、ホテルの壁をつたって屋上までよじ登り、鍵を開けようとするのだが…。
家族/親族からすれば、いよいよ気がおかしくなったのか。
幾ら元山岳部とは言え、それとこれとは状況が違う。
即席の物で備品を作り、よじ登る。
手に汗握り、力が入る、ハラハラドキドキ!
見事屋上まで辿り着き、鍵を開ける。
が!
ヘリが近付いてくるも、全く気付かない。
そうなのだ。よく実録サバイバルでもあるが、こっちはヘリに気付いても、ヘリからは地上の豆粒みたいな人は気付かないのだ。
ウィジュの機転でヘリが気付き、やっと窮地を逃れる事が出来る。
…かと思ったら!
重量オーバー。
かくしてヨンナムとウィジュは次のヘリを待つ事になるが、その間もガスは押し寄せ、より高いビルの屋上へ避難する決死のサバイバルが始まるのであった…。
ここからが本番も本番と言っていいだろう。
二人共元山岳部なので、基本的なスキルは充分。
ユニークで豊富なアイデア。
顔はガスマスク、身体はゴミ袋で覆って防護服。
ダンベルにロープを括り付け、隣のビルに投げ、橋渡しして、渡る。
SNSやドローンの使われ方も面白い。
ビルの屋上からまたビルの屋上を、全力疾走。
そして最後は、ロープ一本で…。
ハリウッドだったらトムクルが手を挙げてやりたがりそう。
ピンチも次から次へと。
それが、痛快なくらい快テンポで。
従来の韓国映画だったらガスを吸い込み悶絶死する人のグロい描写があるが、本作は一切ナシ。
ハラハラドキドキに、ユーモアや家族愛や仄かな恋愛要素がいっぱい。
救助の際重量オーバーになり、残ろうとするヨンナムに、父親が「代わりに俺が残る!」の親父愛に思わずジ~ンと。また父親は危険地域ギリギリまで行って、息子の救出をお願いする。親父~!
ヨンナムとウィジュの恋愛要素もキスシーンとか一切無く、その後を予感させるのが好感。
また、事件を起こした科学者も挿入するくらいで、話はこのサバイバル劇一本。
それが作品を非常に見易い快作にしている。
あくまで個人的見解だが、皮肉や問題提起も見受けられた。
真っ先に救助ヘリに乗り込んで隠れるホテル支配人は、韓国で起きた沈没船事故のあの船長。
高いビルの人々から助けられ、低いビルの人々は後回しどころかスルーされるのは、韓国格差社会。
それからこれは完全に今だからこその見解だが、押し寄せるガスの恐怖は、言うまでもなく毎日ニュースで報じられ、確実に第二波なのに政治家どもはその状況でないと認めようとしないアレ…。
勿論粗い点やご都合主義はあり、全部が全部実写でノースタントでないかもしれないが、さすがの韓国エンタメ。
アイデアは豊富だが、話自体はワン・シチュエーション。
何故日本ではこういうのが出来ない!?
日本では例えば『AI崩壊』とかアイデアはいいが、話題性重視の客寄せイケメンや過剰大宣伝、ヘンにシリアス感動にして、どうも快作感が無い。
それに対して韓国映画は…何度も何度も言うまでもないだろう。
根本的な作りの問題。
だって見終わった後、素直に面白しれー!と思うもん。