「2年後」きみの瞳(め)が問いかけている U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
2年後
のっけから吉高さんに鷲掴みにされる。
くるくる動く表情があどけなく可愛いらしい。
まるで韓国ドラマを観ているようであった。
盲目ではないが事故で視力を奪われた彼女。過去に傷をもつ社会からドロップアウトした元キックボクサー。そんな2人が育むとても切ないラブストーリー。
よく出来た脚本だった。
特に彼が姿を消した2年後からの展開が泣ける。
彼は地下格闘のファイターで、1度足を洗ったものの彼女の視力を取り戻す為に再びリングにあがる。
それまでの展開が淀みなく流れるからこその結果ではあるが、彼の心情を思うと辛いのだ。
2人は彼女の視力が戻らない時に出会い、そして離れる。彼が彼女を見つめる視線はどこまでも優しく温かい。逆に彼女は彼の顔を知らないままに別れる。
視力を取り戻した彼女は彼と分からないままに再会するのだ。そして彼には名乗れない事情が幾つもある。
感情を押し殺す彼の心中たるや…よくぞ堪えたとその一途な想いに泣けてくる。
彼は退院し彼女の店を訪ねる。
彼女が店を後にしたのを確認してからだ。
その店は2人でいた時に話した叶うとも分からない夢だ。店の名前は「アントニオ」可愛らしい品揃えとはかけ離れた名前だけれど、これは彼の洗礼名なのだ。
金木犀の鉢植えを手にし店を出て行く彼。
通りを歩く彼に犬が吠える。
スクだ。
彼が彼女に送った犬だ。
スクは飼主の匂いを覚えてた。スクが2人をまた引き合わせるのかと思ったが、そうではない。
彼女はまた立ち去っていく。
ラストシーンは海だった。
彼の母が彼を連れて無理心中しようとした海だ。
このまま悲哀の物語で終わるのも止む無しと思ってた。彼は頑なに自分を隠し、彼が描いた幸せな未来も確認できた。これ以上望むのは贅沢だ、もう十分だと、海に歩き出す彼の姿が語ってた。
そこに掛かる言葉…「ルイ!」
自分の名前だった。
振り返ると彼女が立っている。
全てを理解し受け入れてるかのような表現で。
「ここじゃないよ、帰る場所は」
どれほど嬉しいのかと思う。
「おかえり」
彼は、ようやく許されたのだと思う。
この「おかえり」を言う前の吉高さんが素晴らしく…彼女は一旦視線を逸らす。
溢れ出しそうな感情を抑えて、彼の為のこの一言をちゃんと、ちゃんと伝えなきゃいけないと堪えてるように見える。
2人の一途な想いが、あらゆる障害を乗り越えて再び結ばれる。王道なラブストーリーで韓国がデフォルトのような作りもするが、やはり支持されるには支持されるだけの理由があると思えた作品だった。
横浜氏と吉高さん。
2人の目が印象に残る。とても繊細なお芝居で「目は口程にモノを言う」は、間違いではない。
■追記
他の方のレビューを読むに、本作はどおやら韓国作品のリメイクらしい。どおりで韓国っぽい匂いがするわけだと納得する。そして、その韓国作品はチャップリンの名作「街の灯」にインスパイアされたものなのだとか。
…不勉強な自分が恥ずかしくもあるが、名作のストーリーを今の時代に反映した作品を新鮮な気持ちで観れた事を嬉しく思う。
とある先輩が「物語の筋ってのは、ほぼ出尽くしてる」と言った言葉を噛み締めつつも、良いものは時を経ても良いのだなぁと改めて思う。