「『街の灯』の邦画版としては成功している方。吉高由里子は笑顔の多い役が良い。この役は良かった。横浜流星は顔だけ。でも華はある。「あなたでしたのね…」のシーンは流石に泣かされた。でもラストシーンは蛇足。」きみの瞳(め)が問いかけている もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
『街の灯』の邦画版としては成功している方。吉高由里子は笑顔の多い役が良い。この役は良かった。横浜流星は顔だけ。でも華はある。「あなたでしたのね…」のシーンは流石に泣かされた。でもラストシーンは蛇足。
①演出は特に個性的でも特徴もないが堅実で最後まで飽きさせない。②鑑賞中ずっと主演の二人の見た目の年齢差が気になった。映画は映像で語るものなので、その点では残酷なのだ。吉高由里子が年相応の風貌になってきたこともあるし、前半は特にダボッとした服を着ているので、二人でいると姉と弟、酷いときはおばさんと若者に見える一瞬すらある。然し、悪いのは吉高由里子ではない。何故ならこの映画は吉高由里子(の演技力)が無ければ成立しなかった映画だからだ。③そうなると男側の問題となる。横浜流星の人気(あるのかな?)を当て込んだキャスティングかも知れないが、実際これは男側のキャラや設定を変えても基本成立する話だ。もう少し吉高由里子に釣り合う年齢の相手役を選ぶべきではなかったか。④話もよく考えれば(よく考えなくてもか)ご都合主義が多い。特に後半。前半は話にまだリアリティーがある。特に、明香里が自宅まで押しかけた色キチ上司に乱暴されかけた現場に居合わせた塁が、上司を痛め付ける場面が白眉。必死で止める明香里の頼みを無視して報復の乱暴を働いた塁に明香里は生きていく為に仕事を見つけしがみつくのがどれ程大変か涙ながらに訴える。吉高由里子のリアルな演技もあって見応えのある場面になっている。横浜流星の非日常的な風貌も前半は現実社会に馴染めない塁の孤独な佇まいを表すのに適していたかも知れない。⑤そういう前半に比べ後半はご都合主義が多く非現実的な話になっていく。おとぎ話が好きな人にはこれで良いかも知れないが、人生60年生きてきたオジサンには違和感が増していく。視力を取り戻した明香里が、特段才能があったようには描かれていなかったのに、たった2年で厳しい陶芸の世界で自分の店を持てるようになるものだろうか。知らなかったとはいえ、自分の眼の手術のお金が裏社会のお金だと知って嬉しいだろうか。塁が明香里がボランティアをしている病院に入るまでの2年間はどうやって生きてきたの?裏切り者は許さない組織が塁が生きていることを知ったら息の根を止めに来ない?ついつい要らぬ心配をしてしまう。⑥それでも塁が生きていたことと「あの人物」が塁だったことに明香里が気付くクライマックスシーンは演出の呼吸と吉高由里子の演技とが上手く相まって泣かせてくれる。ただ、ここにはチャップリン(男側)は立ち合っていない。ここで映画は終わって良かったかもしれない。或いは明香里が塁の居所を見つけたような希望のあるシーンくらいは付け足して。実際のラストシーンはこの映画に何の貢献もしていない。