劇場公開日 2021年6月4日

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「令和になってこういう題材で映画を作る人がいるとは思わなかった。女優陣が濃い。何だか泪が出てくるし。」はるヲうるひと もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0令和になってこういう題材で映画を作る人がいるとは思わなかった。女優陣が濃い。何だか泪が出てくるし。

2021年6月12日
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鑑賞方法:映画館

①昭和では女郎屋・売春宿を舞台にした映画は星の数ほどあった。平成或いは21世紀になって極端に減った。時流かな、と思います。だから「はるヲうるひと」ってどういう意味だろうと思っていたら“売春”のことだったのね。なあんーだ。②佐藤二郎はTVでの一本調子のお笑い演技が鼻につくけど映画作家としてはなかなかの腕前があったんだ。ちょっと見直しました。③昭和の女郎屋映画は暗い雰囲気のが多かったけど、この映画は暗いようでどこか可笑しいのが宜しい。単に苦界に沈んだ女たちを悲しく描くのではなく「どっこい生きてます」という視点が話の支えになってます(まあ、昭和の映画でもありましたけど)。④薬局のお婆ちゃんとか、寒いのに日焼けしようとしている男とか、処女と筆下ろしするために売春宿にくるミャンマー男とか、時々挿入される本筋とあまり関係ないところで笑わせてくれます。(ミャンマー男はその後本筋に絡んできますが。)⑤クライマックスで思わぬ真相が暴露されて、それまでのモヤモヤが晴れるという話の構成はロマン・ボランスキーの『チャイナタウン』(そういえば『クルエラ』もそうでしたね)をはじめ古今東西の映画では珍しくありません。ただ、この映画でも彼らの抱えている問題の深刻さが分かっても何も解決されないのが切ないところだけど。⑥坂井真紀が言う『何かに成れても成れなくても何とかなるわよ。』という諦感はあらゆる人生に共通しているかも。⑦難を言えば哲男の役は佐藤二郎がやらない方が良かったのでは。でもやりたかったんでしょうね。おいしい役だもの。⑧あと、どうでもいいことですけれども、レビューの中に雰囲気だけで映画を作るな、みたいなことを書いている人がいましたが、雰囲気だけの映画でも佳作・秀作はあります(この映画が雰囲気だけの映画と言っているわけではありません)。大事なのは話の中身云々より映画としての力があるかどうかということ。一から十まで説明してくれるような観客に媚びる映画ばかりを作る方が映画を駄目にします。かの淀川長治先生は仰いました。『どんな駄目な映画でも私は一ヶ所でも好きなところを探そうとして映画を観ます』『映画とは格闘すること。一回や二回観ただけは本当にその映画を理解できたとは言えません。』確かに時間潰し(カップルに多い)に映画を観たり、分かりやすい映画しか観ない人には向いていない映画であるのは確か。ちゃんちゃん。

もーさん