「わたしの幸せは…」わたしの叔父さん レモンブルーさんの映画レビュー(感想・評価)
わたしの幸せは…
見たことがないような映画だった。
デンマーク映画。だからではないだろう…
自国でも最初は上映館数は少なかったらしい。でしょうね。と思う。
27歳の未婚女性クリスと その叔父さんの静かな日常のルーティンを丁寧に細やかに映像でこちらに伝えて来る。二人の沈黙を埋めるかのように、TVからのニュースが流れている…音楽もなく、殆どセリフもない。最初はどうして二人なんだろう?と思っていると、次第に二人の関係が解って来る。
クリスは14歳で親を亡くした後、ずっと叔父さんと二人暮らしで、牧場を営んで暮らして来た…そして、ある時、叔父さんが脳卒中?で倒れて身体が不自由となり、クリスは叔父さんの着替えから食事の世話、牧場の仕事を甲斐甲斐しくこなして来たことがわかる。
そんなクリスに訪れる恋の?予感。デートに誘われるが、叔父さんも着いて来る…
獣医になりたいと思ってたクリスに獣医のヨハネスが本を貸してくれたり、牧場を離れた事がないクリスを都会の講演会に誘う。好意を寄せるマイクも、獣医も、クリスの幸せを願っているからこそ…広い世界を見せようとする…
叔父さんも、そうなのだ。クリスを自分の犠牲にしたくないのだ。マッサージ師を頼んだのも、デートに付き添ったのも、相手が相応しいかを確かめたかったのだ、と思う。クリスが自由になれるように…
でも…恐れていた事が起きる!それを機にクリスは獣医の夢も、恋も…潔く捨ててしまう!
そして、やがて…穏やかないつもの静寂の中で二人の生活が、いつものように繰り返される…
でも…いつもの静寂を埋めていた物が…
壊れる。
そこで 終わる…! え?
見終わって、あれ?何だったんだろう?
私のような思慮浅い人間は観ていけない映画だったかもしれない😨と焦った( ̄▽ ̄;)
その後 思い返し思ったのは この映画は 二人が築いて来た長い年月の内の ある数ヶ月?数週間?を切り取って私達に見せていただけなのだ。
そして、クリスと叔父さんの絆が、映画では描かれていない過去で、どんな風に育まれて来たかを想像する、させる映画なのだと思った。
周りがクリスの幸福を願っているのは解る。でも…
幸福を決めるのはクリス自身なのだ。
叔父さんは傷付き寂しかった子供のクリスを どんなに深く愛して来たのだろう。そして、クリスにとって叔父さんは たった一人の肉親であり、倒れる前の叔父さんは きっと逞しく頼り甲斐があり、優しい、かっこいいヒーローのような人物としてクリスには思えていたのかもしれないと思った。だから、クリスは叔父さんが大好きだったのだ。そう思う。
叔父さんは 決して外見が良いとは言えない。でも…その瞳は慈愛に満ちて、優しい。姪の初デートの為にヘアアイロンを買ったり、髪の毛をカットしてあげたり。誕生日に獣医に必要な聴診器をプレゼントしてくれたり…
きっと 叔父さんは ずっと昔から優しかったんだろう…。
クリスにとって 幸せとは…
ずっと叔父さんの傍に居て、
叔父さんを世話し、叔父さんと共に食べ、
叔父さんと共に仕事し、叔父さんを毎朝 起こす事。
だって…大好きな叔父さんだから!
恋よりも、夢よりも、
「わたしの叔父さん」が大切だから。
クリスの選択は仕方なくなんじゃない!
彼女が、自ら望んだ選択。
叔父さんも そんなクリスと またいつもの静かな毎日を送るのを 淡々と受け入れる。
この先 どうなるか分からないけど…
いいじゃないか….。彼女が幸せなら…
東京国際映画祭でグランプリを受賞したことで、デンマークで話題になり、上映館が何倍も増えたそうだ。
こういう作品を芸術作品というのかな?
ただ、心に何かを残す 不思議な余韻の有る映画だったのは確か…。
[ 追記 ]
レビューを書いてから、その後、じわじわと映画の良さが胸に来ています。
☆ 赤石商店 土蔵映画館にて
9/30鑑賞
今晩は
今作は、虚飾なきスタイルを取りながら、主人公と叔父さんの日常の中に起きる僅かな小波を、細やかに描いた作品であったかと思います。
私が、今作を鑑賞した会社から車で5分のミニシアターのレビューに主人公と叔父さんの実際の関係性がサラリと記載されていましたが・・。
何だか、心地よき余韻が残る作品でしたね。では。
今晩は
コメント有難うございます。
凄ーく、お久しぶりな感じがいたします。
変わらず、良作をご覧になっていますね。
私は、45を越えてから、読書量が激減したため(老眼のため・・(涙))映画で、知的好奇心を満たす週末の日々です。
映画って、大画面故なのか分かりませんが、焦点がバッチリ合うんですよね。で、枕頭には未読の本が堆く高く積まれています・・。
不惑を越えてから、映画っておぢさんに優しき文化媒体だなあ・・、と思っています。では。返信不要です。