「幸せの価値観はその人次第。」わたしの叔父さん はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
幸せの価値観はその人次第。
デンマークの農村地。牛を育て田を耕し生きる27才のクリスとその叔父。父と娘ではない。どこか気を遣い合っているかのような絶妙な距離感と、共に長く生活していることが伺えるあうんの呼吸。もどかしくも愛しい関係性。
毎朝ブラウン管から流れる遠い国の不穏なニュースも朝食をとる2人にはBGMに過ぎない。映画はすでに始まっているというのに会話もなく淡々と日々のルーティーンを見せつけられる。それなのに1秒たりとも目が離せないただならぬ空気がスクリーンを包み込んでいた。
予告を見て田舎で家業と介護が必要な叔父さんの世話を押し付けられた女性が運命の男性と出会って夢を取り戻し旅立ってゆく話だと思った単純な自分を恥じたい。
リアルに時にはコミカルにクリスという一人の女性の生き方と幸せの価値観を描き出した本当に素敵な作品でした。
仕事終わりに2人が大きな布を引っ張り合いながら折り畳むシーンがめちゃくちゃ秀逸。あとから思えばこの2人の間にマイクが入る余地はなかったかな。
家に帰って叔父さんがいなくなったあとのクリスを想像してみた。案外すぐに土地を引き払って誰にも告げずに都会に出るかもしれないな。それでおしゃれなカフェなんかで働いてスーパーでふとヌテラを手に取り過ぎ去った叔父さんとの生活をぼんやり思い出している。そんな姿が目に浮かんだ。
もちろんそれは望郷の美しい思い出として。
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