「静かで確かな愛情」わたしの叔父さん ヨルさんの映画レビュー(感想・評価)
静かで確かな愛情
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舞台はデンマークの片田舎、茫洋とした景色が広がる静かで薄暗い町。展開するストーリーも実に静かだけれど、心が温かく締め付けられ、しばらく席を立てなかった。
序盤はクリスと叔父のつつましく単調な日々毎日がサイレント映画のように繰り返され、言葉の少なさから最初はクリスが生活に不満を持っているのかと思ったが、徐々にその生活と、何より叔父を愛していることがひしひしと伝わってくる。
そして、叔父さんもクリスを心から愛していることが静かな画面から溢れるように伝わり、その様子だけでぐっときてしまった。
中古の聴診器やヘアカットのくだりでは、温かく姪の背中を押す叔父さんと複雑ながらはしゃぐ気持ちを隠せないクリスの様子が特に愛おしい。
デートに付いて(連れて)行っちゃうところなんかは、全体的に重め雰囲気な分クスッと笑えてとても良かった。
愛しているからこそ単調な生活から送り出したい叔父(親)と、愛しているからこそ留まりたい姪(子ども)の関係は普遍的なテーマかもしれないが、その心の機微を鮮やかに描き出してくれていたと思う。
誰かの目線というのがあまりなく、常に引き気味のカメラワークも、ドキュメンタリーのようで作品の魅力を見事に閉じ込めていたように感じた。
他のキャラクターを含め、登場人物が皆温かいことがより顛末を切なくさせる。
ちなみに祖父母っ子の私は叔父が愛おしすぎて見るのがつらいまでありました。
ふらりと見た作品だったけど本当に良かった。何度でもじっくり味わいたいです。
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