ジャスト6.5 闘いの証のレビュー・感想・評価
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半端なくヘビー
まずは、映画として手抜き感がなく、場面場面の描写も、時に感嘆してしまうシーンありで、思わず、すげー、と唸ってしまいます。
麻薬に関わった者は即死刑と言うイランで。麻薬の末端中毒者の摘発から始まり、元締めに辿り着き。最後には死刑台に送り込むまでを、丹念にリアルに描いてるってのが。初めて見ました、こんなに詳細まで描写されてるクライムもの。
「影」から屋上に誰かが居ると察してから始まる追跡競争と衝撃的な結末。工事資材置き場で暮らす人々を襲い、全員を逮捕し留置すると言う警察バイオレンス。留置所の悲惨な環境と、悲惨な親子、と言うより、少年の無残。警官の同士撃ちとしか言いようのない、しがらみ。元締めナセリの取り調べ場面のせめぎ合い。麻薬精製の地下ラボの爆破。判事一人による簡素な裁判と、あっけないほどの死刑判決。家族とナセリの面会で、体操を見せる甥っ子が脱いだ服と靴を抱えて小走りに家族を追いかける姿。そして、量産される刑。狭い路地の突き当りの家に戻る家族。
重量級のパンチの連続ですよ。無遠慮にドカドカ来ます。殴られっぱなしです。そもそも、イランのこと、良く知らんから。えっ?そんなもんなの?えっ?それでええんか?と、あっけにとられてるうちに短いエンドロール。
日本人の連絡先を教えろ。おれなら、もっと上手くやる。
止めろ、絶対に止めろ。
ラストカットは、物語りの最初よりも、更に多くの人々を逮捕しようとする警察と脱げまどう人々の姿。
たった6.5kgの麻薬で、あれだけの人々が不幸になり、絞首刑にもなる。
6.5millionの人々が、今、この国ではジャンキー化している。
捕まれば死刑だと判っていて、クスリの売買に手を染めるのは貧困のせいだと言う、本気度100%の社会派ドラマ。技巧的にも、イラン映画ってレベル高いです。って言うか、日本を巻き込まないでくれませんか!
良かった。重かった。とっても。
息もつかせぬ
走って逃げる犯人をひたすら追いかける冒頭だけでなく、その後も緊迫感が続き、中弛みがない。
主人公の警官は麻薬に汚染されたホームレスや低所得層を一層し、末端の売人から諸悪の根源を炙り出そうとする。最初は大元となっている売人は実在するのか?というレベルだったが、3段階で意外とあっさり確保。苦労して逮捕した割にそこら辺のザコ犯罪者達と一緒くたに収監するので、手下を脅して自分だけ助かろうとするが、手下が歯向かうのは意外だった。
未解決の過去の子どもの誘拐殺害事件の疑いと冒頭で捕まえられなかった売人の件があり、警官も一枚岩ではない。一方、売人の方も戸籍を変えた過去が明るみに出るなど、計算外のことで足元を掬われそうになる。クライマックスは麻薬の数が足りず主人公の警官がくすねたと言い出し、ライバルの警官がウソの証言をしたため、くすねていないという証拠がない、と勾留される場面。
高級マンションのペントハウスで豪奢な生活を送っていた売人も実は貧しい家庭の出で、貧乏から抜け出せるよう兄弟姉妹に経済援助をしていたことを涙ながらに訴えるが、麻薬で苦しんだ人たちを考えると到底許されないことであり、絞首刑も仕方ないのだろう。
先が見えない展開で面白かった。
バイオレンスさが映画作品として更に魅力を増していた
ストーリーとしては主人公の麻薬捜査官が巨大な麻薬組織のボスを捕まるよくある作品での一つである。
序盤は下っ端を捕まえ、そして彼らを強引に捜査していくことでボスまで辿り着くストーリー展開である。
ボスを捕まえた後は更に彼に関連する組織や人物を追っていくわけだが、その道のりに終わりが見えず終わりなき道はまだまだ続く。
作品の大半は麻薬捜査官の刑事の視点で作品は展開されていくが、この作品の面白いところは最後の30〜40分くらいは捕らえた麻薬王のボスの視点に変わる。
彼は彼なりに幼少期を貧しく過ごした経験から自分をそして家族を裕福にしたい一心で犯罪を繰り返していた描写が描かれる。
ただ元カノには存在を警察に売られ、そして最後は家族も彼が犯罪で稼いで得た富を手放す決断をされるなど、命懸けで稼いだ金は一時のものとなってしまいボスは落胆する。そして死刑となる。
この辺の悪い事をしたお金の存在価値の描き方は上手く感じた。
決してこの描写はボスに対して同情を誘うわけではない。良し悪し関係なく各々視点で作品を描かれておりそれがこの作品の魅力の一つであった。
そしてこの作品の最大の魅力はバイオレンスだろう。
24のジャックバウアーとまでは言わないが捜査官たちが非常に暴力的に捜査を進めていく為映画作品として更に魅力を感じ魅了される。
麻薬王のボス以外の囚人も見た目の汚さが妙にリアルに感じたり、子供を売ってまで保身に走る親の醜さ汚さなんかもこの作品のバイオレンスさを増し楽しめる。
見慣れないイラン映画ではあったが、とても見やすく感じた。時間も2時間を超える長作ではあるが個人的にはあっという間に感じとても楽しい時間であった。
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