「リアルな宗教事情」ディスコ Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0リアルな宗教事情

2020年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ストーリーは追えるが、上映後のトークイベントがなければ、背景がイマイチ理解できない作品だった。
ノルウェーにおける「ペンテコステ派」の流れをくむ布教活動を描いたものだという。“ワーシップ・ソング”が英語なのは、そのためらしい。
ただ、信者は0.7%ということで、少数派だ。

“クラブ”の雰囲気で人を集める伝道師、怪しげなテレビ伝道師、一見カトリック風なカルト集団の伝道師などが出てくるが、伝道師が各々一派を構えている感じだ。
「音楽」については、宗派によらず布教手段の要である。
ただし、「異言」など、「ペンテコステ派」に特徴的と言われる信仰形態の描写は、特になかったように記憶する。

主人公の若い女は、「フリースタイル・ディスコ」のダンサーで、大会で優勝するほどの実力をもつ。
しかし、うまくいかなくなって、信仰に救いや、スランプからの脱却を求める。
「トーキョーノーザンライツフェスティバル2020」の作品紹介では、「病気と教えのはざまで苦しむ」とあるが、ちょっと違うと思う。
宗派の間は、互いにいがみ合っており、隠れて悪口を言い合い、信者の取り合いをしている。
そんな中で、主人公はどういう選択をするのか?という話だ。

いきなりダンス大会が出てきたりして、面食らうところもあったが、見終わってみればシンプルなストーリーだ。
本作の女性監督は、カルトな宗教を批判的にとらえて、この作品を作ったようだ。
「閉ざされた集団の暴力」、「権力の悪用」、「弱っている人に、コレが真理だと誘導する」、「宗教以外でもありえる」とも。

だが、この映画を観る限り、批判的な意図はそれほど感じないし、過激なシーンもない。
終わり方も唐突で、謎めいた余韻を残す。
問題視されているのが、カルトなのか、商業主義なのか、あるいは、宗教そのものなのか、作品の意図はよく分からない。
伝道師たちの“人間臭さ”をリアルに描写して、後は、観客に解釈や判断を委ねているように見える。

Imperator