「ワイドスクリーンは楽しめたが・・・」大地と白い雲 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
ワイドスクリーンは楽しめたが・・・
「シネスコ」サイズを生かして、広大な草原を背景に構図を切り出す、あからさまな“映像美”を狙った作品だ。
緑なす草原は、冬には一面の雪原へと変化する。「馬追い祭り」も映される。
馬を走らせてバイクを追うシーンでは、“馬がバイクに追いつく”という素直な驚きとともに、上空からの撮影に見応えがある。
ライティング(あるいは撮影時刻)には特徴があり、不思議な光に満たされた作品でもある。
しかし内容はというと、同じことの繰り返しが、延々と続くような感じで困惑させられる。
しかも、主人公を間違えているのではないかと思う。夫のチョクトが描かれることが多いが、妻のサロールの視点から描くべきではなかったか。
というのも、チョクトのキャラは単純で一貫しており、説明不要だ。「こんな時代に、自分だけが、草原の真っ只中で羊を追えというのか?」だ。しかも隣との境界は柵で囲われて、本当の“遊牧”すらできない。
しかし一方、サロールがなぜ草原を離れたくないのか、理由が分からず、まさにそのことが、本作のストーリーの弱さに直結している。
同じことの繰り返しを描くなら、その中で少しずつ変化していった、サロールの心の揺れに密着すべきだと思う。
変わりゆくモンゴルの社会を描きたいのだろうが、登場人物を限定してるわりには、底の浅い残念作である。
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