アトランティスのレビュー・感想・評価
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ここが俺の生きる場所
シアター・イメージフォーラムでも7月29日に上映が終了してしまうとのことなので、慌ててこの週末に『アトランティス』と『リフレクション』を鑑賞。隔日上映のため、スケジュールの都合上で『リフレクション』を先に鑑賞したが、これはやはり『アトランティス』を先に鑑賞すべき。『リフレクション』についてはまたそのレビューで述べるが、『アトランティス』を観て『リフレクション』の位置づけと意味がようやく理解できた次第。
ストーリーそのものは複雑なものではないが、色使いと登場人物の心理描写がとてもよい。主役の二人アンドリー・ルィマールクとリュドミラ・ビレカは本当のウクライナ軍兵と看護兵だそうで、今回のロシアによるウクライナ侵略で戦場に戻ったとのこと。海外への移住を勧められた主人公が、(2022年にロシア軍に陥落されることとなる)アゾフスタリ製鉄所で「ここが俺の生きる場所」とヒロインのリュドミラ・ビレカに述べる言葉は現実そのもの。必見。
そこに戦争がある限り
…親愛なる諸君、今こそ、ナチの手先のファシストから、同胞を守護するのだ。これに勝る正義はない。同志諸君、我らの団結に、不可能はない。君たちなら、あらゆる艱難辛苦を、克服できると断言する!。それが証明できる君たちを、私は誇りに思う。競って歴史にその名を刻め!。立て!。同志よ!。ジーク!、ジオ……ん?
あ、すみません。凍てつく大地の大統領を、脳内ハッキングしたら、こうなるのかしらと想像していたら、1人で盛り上がっちゃいました。
件の大統領なら、これくらい言いそうですけど、言ってる当人が、アカの手先のファシ野郎に見えるのが、戦争なんですよね。そこに戦争がある限り、ヒトラーの尻尾は、現れるようです。
守り抜いた祖国と、汚染された大地。今、そこにあるのは、夥しい死体袋。でもだからこそ、生が煌めく。
ウクライナ。かつて、米露に次ぐ核保有国だったそうです。ウクライナは核を放棄しました。でも、戦争は、ウクライナを放棄しなかったようです。親ガチャならぬ、国ガチャで、私達があの地にいるとすれば、どうしたらいいの?。
流石に連日の報道で、感覚が麻痺している自分に、気づかなくなっています。毎日100体程の死体袋が使われているとの報道もあります。それが何ヵ月続いていますか?。立て籠っていた多くの捕虜、及び民間人が国籍を変えさせられ、シベリア送りになったらしいとの報道もありました。民族浄化するつもり?。やはり、あの大統領は、ヒトラーの…。
私達は、未来を歩んでいるのか、過去に退行しているのか、本作をご覧になった方なら……。
浄化とお清め
2025年、戦後1年のウクライナ東部で暮らすPTSDに悩む元兵士の話。
PTSDに悩むということだけど、そんなようなことを最初に話してはいたけれど、それっぽい描写は特に無し。
多くは固定カメラで映す画面の中で殆どセリフもなく動く人達をみせる描写をつないでみせていく感じ。遺体の観察だけは細かく語るけど。
車が故障したボランティアの女性を助けたことで、自分も手伝う様になっていくのはわかったけれど、交流がどうのと言うほどやり取りはないし、彼女と知り合ってから地雷にやられた車を助ける件では、何故か死人は運ばず。
最後にビルマの竪琴的なことをセリフで語って…って言いたいことはわかるし、話し自体は良いけれど、あまりにも淡々とし過ぎているしブツ切りだしで途中の機微が伝わって来なかった。
1/3ぐらいの尺で充分に感じた。
ウクライナ兵の苦悩
PTSDに苦しむ主人公のセルヒーの姿が、悲惨すぎました。
戦時中は敵兵を殺して埋めていたであろうセルヒーが、(現実とは違い、予想される)戦後はその償いの気持ちなのか、掘り返して身元確認するボランティアに従事する。
日常生活には戻れず、射撃訓練をしないと眠ることも出来ず。
傭兵になることさえ模索するセルヒー。
作中のウクライナ人視点では、「ロシアはかつての強国ソ連に戻る夢のために、ウクライナを占領したかった」と指摘し、強烈に批判していたいました。
そりゃそうだろうと。
主人公の名は同監督の対となる別の作品『リフレクション』と同じ「セルヒー」でしたが、役者もキャラ設定も全く異なりました。
映画の中は終戦を迎えていますが、現実はいつ終わるかも分からず。
まじでロシア、信じがたい悪行ですわな。
2019 32nd TIFF
戦争後の近未来もの。しかし、舞台がウクライナであり、設定があくまで現代の延長線上にあるということを意識して見ると、印象はがらりと違うはず。
個人的な印象としては、雰囲気はタルコフスキー的なニュアンスを強く感じて、それ故の興味と同時に難しさも感じた。
内容もさることながら、その主題も難題を突きつけられているような、率直に難しい作品だった。
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