劇場公開日 2020年12月4日

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「同じシーンも視点を変えると・・・」ミセス・ノイズィ RFさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0同じシーンも視点を変えると・・・

2021年1月10日
PCから投稿

かつては人気作家だった真紀は、スランプに陥り焦りながらの毎日を過ごしていた。引越し先で、隣人の美和子の布団叩きを注意したことからトラブルになり、ストレスをため込み仕事も家庭もうまくいかない。いとこのアドバイスで隣人のをネタに小説を書き、起死回生をはかるが・・・。
(この作品において、歌いながら布団を叩くところは騒音おばさんがヒントになっているが、共通点はそれくらいで実話をもとにしている話ではない。存命中の騒音おばさんをネタにして不謹慎という風評があるが、それについては否定しておく。)

久々に非常にいい作品に出会った。
序盤は作家の真紀を軸に、非常識極まりない隣人の美和子が描かれる。美和子は朝6時に布団を叩いたり、真紀の娘と勝手に遊びに行ったり、旦那と真紀を入浴させたりと、完全にアブナイ人にしか見えない。
ところが、途中で主人公が変わると、同じシーンも全く違って見えるようになる。この転換が非常に上手い。巧みな脚本で観客の感情移入を誘導しており、常識は極めて主観的なものだとよくわかる。全く同じ常識を持つ人間は2人としていない。だから、トラブルになったときに常識を持ち出すと泥沼化してしまうのだ。
この「常識や善悪は主観的」というテーマそのものは、別に珍しいものではない。でも、この作品はそれをとても上手く表現できている。物珍しさではなく、その上手さを評価したい。

若干気になったのは、主人公がなぜ引っ越さないのかという描写がなかったこと。主人公に感情移入する上で、その描写は絶対にあったほうがいい。ただ、その描写を入れるのが難しい理由もなんとなくわかる。

終盤は感動的で、映画でめったに泣かない私も少しうるっとしてしまった。ぜひ見に行ってください。

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RF