「演出やコンセプトは良い。ただ…」イン・ザ・トール・グラス 狂気の迷路 メイフラワーさんの映画レビュー(感想・評価)
演出やコンセプトは良い。ただ…
原作が彼の有名なスティーブン・キングと確聞して視聴。映画の冒頭は、どんな展開が待っているのか半ば興奮気味に見ていました。
ところが…。物語の終盤になっても、頭上に疑問符が付くような内容。話のテンポは良いですが、始終盛り上がりに欠けます。
はたまた、説明不足な箇所が多々散見されますから、視聴者が置いてけぼりになります。まあ、尺がないからセリフにないところは勝手に考察してねっていう製作陣の意図なのかもしれませんが、その割には敵に追われてる状況下で不必要に言い争う場面があったような…?キャラクターや人間関係を明示するには、必要だったのかもしれませんが、ちょっと冗長だったかなという印象。
しかし、問題点はそうした過程より、物語の結末です。これで完全なるループ物だったら、推測等で補完しつつ、ストーリーに一定の理解を示すことが出来たのですが。変にご都合主義(ループから抜け出すための条件等が明かされないまま、なぜか最終的に脱出できるという結果)にしたせいで、後味の悪い作品になったのではと思います。思い切って、誰も救われないバッドエンドでも良かったのでは。
一方で、演出や俳優の演技力は光るものがありました。とりわけ、妊婦役の女優の降雨のなかの叫喚シーンは寒気すら覚えたほど。
あと、コンセプトも良かったですね。鬱蒼とした草原から声が聞こえてきて、その声の主を助けようと中へ入ると、次第に距離感が掴めなくなり迷子になってしまう。一緒に入ったはずの者とも会えなくなり、生者は自身の意思に反して地点を移動してしまう。動かないのは死体のみ。
とかく、この映画はそうしたコンセプト、演出等は評価できると認めた上で、何もかも中途半端に過ぎたと思います。説明不足だからそのキャラクターがどんな目的で、その行為に及んでいるのか判然としないし、ループも不完全だし。この作品には、ストーリーテラー的な語り手が必要だったのではと思いました。