「過去に囚われた男ランボーの勇姿とA・J・クィネル「燃える男」との関連性」ランボー ラスト・ブラッド ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
過去に囚われた男ランボーの勇姿とA・J・クィネル「燃える男」との関連性
数々地獄の戦場を生き延びて、アリゾナの牧場で平穏な生活を送るランボーが、大切な娘を救う為に、人身売買組織に立ち向かう。
今回の相手は、軍隊や権力ではなく、悪名高いメキシコの犯罪組織なので、「ボーダーライン」などのクライムアクション調の雰囲気が強くて賛否もあると思うが、かなりの力作。
カーボーイ姿で馬の世話をするランボーと同居する友人マリヤと孫娘ガブリエラ達との生活場面も簡潔で、定番だけど三人の関係性が、風景も含めてきちんと描かれている落ち着いた前半が、とてもいい。
その生活に心を癒されつつあるランボーが、突如の暗転と悪夢の様な展開を経て、打ちのめされながらも立ち上がるランボーの悲しみに涙を禁じ得ない。
女性達を売買の道具として扱う、最低最悪な組織に対して、ランボーが凄まじい暴力を振るう場面は、壮絶で静かな怒り満ちており、後半の要塞化した牧場地下でのオーバキルな戦闘まで、そのテンションが貫かれている。
過去に余り見ないと思う、カーボーイ姿も似合うシルベスター・スタローンの円熟した静と動の凄みを使い分けた演技を素晴らしくて、本当にランボーそのもので、現在の映画のトレンドを取り入れて、作品毎に印象的なセリフと見せ場も巧みに織込んでくる脚本家としてのスタローンの実力も垣間見える。
今回の敵が、軍隊ではなく、犯罪者で小物のイメージも強いが、荒廃した都市迷宮に潜む凶悪な組織のボス、マルティネス兄弟は、ランボーを半死半生に追い込むなど、中々に手強い。
半死半生のランボーを救う、犯罪ジャーナリストのカルメンとの、似た過去に囚われて苦しむ者同士の共感も印象的。
思えば、冒頭の救助場面もそうだが、救えなかった人や過去のトラウマや抱えながら立ち上がる人達をスタローンは描く事が多い。
壮絶な戦闘を終えてから、揺り椅子に束の間に佇んだ後、「シェーン」のアラン・ラッドのようにまるで、死に場所を求めて去って行くランボー=スタローンの姿に感銘を受ける。
ちなみ、最後までこの作品を観て浮かんだのは、日本でも人気があったA・J・クィネルの傑作冒険小説「燃える男」の3回目の映画化あたるのではないかと。
設定や展開などに類似点が、多くて過去に映画化された作品より忠実に感じる。
勿論似た話は数々あるが・・スコット・グレンの1987年版と2004年のデンゼル・ワシントン版が原作から改変した娘の非業死を正面から描いているからかも。だから主人公が、敵に対し凄まじい暴力を振るっても溜飲下げられる。