「彼の王国で、闇の奥を見せつけられる。」ランボー ラスト・ブラッド yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
彼の王国で、闇の奥を見せつけられる。
2008年公開の前作がランボーシリーズの最終章の位置づけであったはずなのに、まさかの復活です。それだけスタローンの本作に対する思い入れが強いのだろうと、期待する思いが半分と、前作の残虐表現がより強化されていたらどうしよう、という不安が半分という心持ちで、作品を鑑賞しました。
冒頭、スタローンがジョン・ランボーという、自らの分身でもある傷心の英雄にどのような思いを託しているのかを、いきなり強烈な形で見せつけてくれます。
前作で故郷に戻り、遂に心の安らぎを得たはずのランボーですが、本作までの年月を、ひたすらかつての敵が行ってきたことを、たった一人で行い続けてきたのです。彼のパートナーや義理の娘はそんなランボーに理解を示していますが、それは彼女らの理解力と包容力のたまもので、端から見れば完全に狂気の沙汰でしかありません。
今回ランボーの敵となる勢力の設定は、これまでのシリーズをなぞる形で、その時々の世相を反映したものに一応はなっています。ただ問題は、これほどの威厳と貫禄を備えた70過ぎのランボーの前では、どのような敵であっても雑魚にしか見えない、という点です。最後の闘いが近づくにつれ、彼らがどこに住んでいて、どんな悪いことをしたんだっけ?ということなどどうでも良くなります。ジョン・ウィックであれば洗練された戦闘場面となるところ、ランボーならここまで血みどろになっちゃうのか、と無残に破壊されるギャング達と共に打ちのめされました。
今度こそ彼の心に平穏が訪れて欲しいですね…。
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