「相変わらずピカイチのセンスの良さなのだが…」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 osmtさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0相変わらずピカイチのセンスの良さなのだが…

2022年2月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

相変わらずピカイチのセンスの良さなのだが、今回はユーモアのキレがイマイチだったか。
フランスにある架空の街で、New Yorker みたいな雑誌を作ってるという設定それ自体がホント最高で、もうこのアイデアだけで流石のウェス・アンダーソン節!なのだが…
あのオムニバス形式の構成が Amazon で配信していたコンテンツのパロディのようで、もう最初の方から分かる人には分かるのだが… な展開になってしまい…
まあ、そういった作り手の趣味性の偏りの方は良しとしても、肝心なパロディとしての毒っ気の方が… なんともパンチが足りず…
そして、なんと言っても、いかんせん、ストーリーの方がなんとも… なんとも…
あともう一捻りは、なんとも、なんとかして欲しかった!

特にデル・トロのエピソードは、もっと抱腹絶倒で面白く出来たと思うけどな〜
劇場では誰も笑ってなかったよ。
あの如何にもMETなんかにいそうなティルダ・スウィントンの設定はもっとカリカチュアしても良かったのに。

ラストも、これで終わりか〜?と思ったら、本当にそのまま終わってしまった。
まあ、その後に続くエンド・クレジットのイラストも如何にも”The New Yorker”なイカしたセンスの良さではあったのだが…
結局のところ、New Yorker とフランスへのオマージュで終始してしまった感じだ。あまりに好きすぎて、おバカな笑いとしては、あまりイジれなかったのか?
架空の街の美術設定や、いつもの自由に動き回るカメラワーク、レア・セドゥの美しい裸体などなど、映像の方は今回も相変わらず最高だっただけに、チョットもったいなかった。
編集部の自社ビル?の前に止めてあったミニバンの社用車。アレなんか、もっとフィーチャーして活躍させて欲しかったけどなあ〜

あともう、これ見よがしなフランシス・マクドーマンドは、ホントもういいよ。
アンダーソン自身も、ああいうの欲しくて、本人もそれに応えているだけなんだろうけど。全然面白くない。ああいった配役は本来のアンダーソンなら、もっと意外性のある女優を選んでいたはずだ。というか、あのエピソードそれ自体イマイチ”らしくない”というか、ホント捻りもなく一番つまんなかった。
パリの五月革命の憧憬かもしれんけど…
であるならば、もっとサルトルやカミュなどの実存主義や60’sのロックンロールのカルチャーを思いっきり徹底的にイジり倒さないと!やっぱりコメディとしては物足りない…

ちょっと全体的に楽屋オチっぽくなってしまった感じかな。
作っている連中は最高に楽しかったのかもしれないが、観ているコッチの方は「それほどでもないよ」といった感じ。
色々な細かい拘りやセンスの良さは全く衰えてないので、ここは、やはり次回作に期待しよう!といったところか。

あと邦題の方はシンプルに『フレンチ・ディスパッチ』が良かったんじゃない。
あの長いタイトルはアルファベットだとサマになるけど、カタカナじゃあ、全然ピンと来ないよ。

osmt