「高揚感に富み、思わず朗らかになる」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 nazionaleさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0高揚感に富み、思わず朗らかになる

2022年2月1日
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舞台の転換や登場人物の入れ代わりが激しく油断すると置いていかれる様なテンポ感で物語が進んでいく。
雑誌社の編集部とそこに在席する個性豊かな記者たちが紡ぎ出す記事を映像として再現し、それらが次々に移り変わる。
その大枠は理解できても詳細を把握しようとするとそれだけで手一杯。
ただこの映画、どちらというと感性で感じ取るような作品じゃないだろうか。
そう考えてからは全体の流れに身を任せ独創的な映像表現やウェス・アンダーソンらしい色彩、おかしみに溢れた会話劇など作品のムードに没頭できるようになった。

どこを切り取っても静止画として完成されているような理路整然とした画一的美しさやコメディタッチに優れた間のとり方、シットコムや舞台のようなカメラワーク、横と縦の幅を活用しつつ、ミニチュア劇を彷彿とさせる引きの絵も用い、かと思いきや一気に登場人物に寄って物語に引き込んでいく構成など監督ならではの独創的表現技法に富んでおり、場面転換やアニメーションに切り替わる部分などとにかくそれらの引き出しと使い方を見るだけでワクワクさせられる。
豊かで活き活きしていてその雰囲気に浸るだけで気持ちが朗らかになるような作品
この創りこそウェス・アンダーソンの映画だと改めて感じた。
EDに流れるアニメーションも洒落ていて、それでいてポップで見ているだけで気持ちが踊ってしまう。

必ずしも物語の詳細や登場人物の意図などが理解しきれなくても作品として見た場合の満足度とは別なのかもしれない と思わせられ、新たな気付きの様なものも与えてくれる そんな映画だった。
ちなみにエイドリアンブロディが吹っ飛ぶ場面は最高でした。

nazionale