「何気ないのに、深い」街の上で 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
何気ないのに、深い
ラスト30分の面白さは言葉ではとても、筆舌に尽くせないです。
2021年。監督・脚本・編集・今泉力哉
前半は主役の青(若葉竜也)が、ただただ雑談を繰り広げる。
それは下北沢のスナックでだったり、カフェだったり、古書店だったり、
仕事場の古着屋だったりで
マスターや客や店員さんと、ダラダラ話してて、
それが妙にドキッとするフレーズがあるが、長くて本題になかなか入らない。
・・・ん!「この映画大丈夫かい?」と、心配になった。
冒頭は印象的!!
浮気された荒川青(アオ)が同棲中の川瀬雪(ユキ・・穂志もえか)に、
「オレは別れたくない」と哀願している。
ユキは「あなたとはムリ、好きな人ができた。別れるから・・・」
浮気した女の方が強気で、「わたしに浮気させるアオが悪い」・・そんな論調だ。
それでもアオはユキが好きで忘れられない。
恋愛映画の名手・今泉力哉監督は「愛がなんだ」で、振り向いてもくれない酷い男(成田凌)に尽くす女(岸井ゆきの)の、究極の片思いを描き絶賛された。
この「街の上で」ではまたまた新鮮な切り口の恋愛を描いた。
女が男を選ぶ基準、地位とか経済力ではない基準。
(そこはネタバレするので控えます。)
愛を求めて何人かと交際は、ごく当たり前のことで、
今どきの若者は元カノや元カレが数人いるのは普通のことだとか。
それが不潔感なんか微塵もなく当たり前。
そうなんだよ。
初めっから、似合う相手なんか簡単に見つかるワケはない。
友情出演の成田凌が、重要なパーソンで、映画をプッシュしています。
若葉竜也も、一般人(ごく平凡な普通の青年)を絶妙に演じています。
初主演との事ですが、「AWAKE」の棋士も「くれなずめ」も「生きちゃった」も、
みんなとても心に残る若手です。
雪(ユキ)役の穂志もえかも群像劇の中で、光を放つ独特の透明感でした。
下北沢の街が主役で、お店も実在するし、街並みもしっかりオールロケーション。
最初の方と最後に出てくる警官のオジサン=左近洋一郎(ルノアール兄弟=漫画家)は、
超絶面白かった。
話の軸になる「自主制作映画」の設定も生きている。
言っときますけど、大絶賛してますけれど、映画の好みは人それぞれ、
面白くないと思う人も多いと思います。
ただ私には合いました、大好きです。
空気感と絶妙なアンサンブル。
今泉力哉、凄い。
さすがお笑いを志した過去が生きてる。
アオとイハの恋バナは、若者の恋愛の相手との距離感を写し出す。
「愛を描いた映画の一本」としてロングセラーになる予感がします。
過去鑑賞
普通、こんなネタで映画にならないと思いますが、映画にしてしまうところがすごい。
予告編は大したことがなさそうなんですが、観るとすごい。
予告編は面白そうだけど、観るとショボいが普通なんですけど、今泉監督の特異な才能ですね。
おじゃましました。
この映画のコメント書いてると幸せです。俺も大好き。もう、なんていうか、「今泉節、炸裂!」の一本! この監督、どうしてこんなに人を幸せにするのが上手いんだろう。
自分も長く残ってほしいです。それは、今泉監督作品の多くに感じるなあ。