「下北沢にはロン毛の男しかおらんのか」街の上で といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
下北沢にはロン毛の男しかおらんのか
まず、結構批判的なレビューになってしまうことを先に謝ります。この映画を楽しんで鑑賞された方は私のレビューは見ない方がいいかもしれません。
「とにかく何でもいいから映画を観たい」っていう日ありますよね。ない?あるよね?
私にとってこの映画を観た日がその日でした。何観るかも決めずに全然調べないで映画館行って上映時間的に丁度良かったので、本作は事前知識が全くない状態での鑑賞です。
結論。多分これを楽しめる人もいるんだろうけど、私には合わなかった。申し訳ないけど。
終始繰り広げられるアドリブのような妙に間の空いた会話。全く笑えないシュールなギャグ。遅々として進まないストーリー。短いコントが延々と続いているような内容で、「この何気ないシーンがラストの伏線になっているんだろうか」って思うようなシーンが多いけど、ぶっちゃけ伏線がどうのというタイプの映画ではなかったです。シュール系のショートコント詰め合わせ映画でした。
しかしながら、後ろの席に座っていた男性は驚くくらいゲラゲラ笑っていたので、多分このシュールなギャグが合う人は爆笑できるんだと思います。レビューサイトでの評価の高さを見るに、私に合わなかっただけであって、面白いと感じる人の方が多数派なんだと思います。
・・・・・・・・・
下北沢の古着屋でアルバイトしている荒川青(若葉竜也)は、バイトしたり古本屋に行ったり行きつけのバーに行ったりライブを観たりと悠々自適な下北沢ライフを楽しんでいた。しかしある日、彼女の雪(穂志もえか)が別の男と浮気し、青は雪から一方的に別れを告げられてしまう。彼女への未練が残ったまま日々を過ごしていた青。そんな中、アルバイト先に現れた大学生の高橋町子(萩原みのり)から自主映画へ出演してほしいとオファーをされた。
・・・・・・・・・
いかにも下北沢っぽい。この一言に尽きる。主人公の青も行きつけのバーのマスターもライブに出演していたアコギの弾き語りしてるおっちゃんも全員髪が長くてぼさぼさしている。ステレオタイプの下北沢イメージですけど、東北地方の片田舎に住んでいる私でも「下北沢っぽい」って直感的に思いましたね。
劇中、下北沢にある実在のお店や実在の小説などの固有名詞が多数登場します。そういう現実との地続き感を作ることで、作品のリアリティや登場人物の生々しさが生まれています。しかし、せっかく出した固有名詞が有効に働いていたかと問われれば全くそういうわけではなく、地方民の私には全く響かない東京の人たちにしか分からないローカルネタを見せられているような感覚でした。
また、レビューを読んでいるとシュールなギャグについて「クスリと笑えるギャグ」と書いている人も多いですが、私は笑いのツボが違うからか全く笑えず、延々とアドリブのような寒くて妙に間の空いた会話を聞かされて、居心地の悪さと不快感を抱きました。今泉監督の独特なユーモアセンスが合わない人にとってはひたすら苦痛の時間です。しかもそのギャグシーンが後の展開に活かされるかと言えば全くそんなことも無く、取ってつけたようなギャグシーンのためストーリーの進展も無く、やりっぱなしのギャグシーンになっていたのが個人的には不満です。
「アドリブか?」と感じるような奇妙な間の空いた会話シーンがところどころにあります。これも私にとってなんだか居心地が悪く、フラストレーションがたまりました。知らない人のぎこちない会話を延々と聞かされるような感じです。後ろの席の人は会話に妙な間が空く度にクスクスと笑っていましたが、私には合わなかったですね。表情筋が1ミリも動かなかった。
あと個人的に全く納得いっていないのは、青の元カノである雪についてです。
青との交際中に間宮と浮気。一方的に青に別れを告げ、青からのLINEの内容を行きつけのバーのマスターにバラし、青のことをストーカー呼ばわり。しかし間宮との付き合いが上手くいかなかったことで間宮に別れ話を持ち掛け、青と復縁して元鞘に収まる。やっていることが自分勝手で結構酷いと思いませんか?少なくとも私は「なんだこの女は」と怒り心頭です。これがまるでハッピーエンドのように演出されていることに対しても違和感を感じましたし、雪の言動に対して誰も何も咎めないのも違和感です。
2014年の『世にも奇妙な物語』で神木隆之介主演の『未来ドロボウ』という話がありまして、その際に主人公の彼女が本作の雪とほぼ同じ行動を取っていたんですけど、当時結構ネットで荒れたの覚えてます。当時の盛り上がりを知っている私から見ると、雪の言動を否定的に見るレビューがほとんどないことに対しても違和感を感じてしまいます。やはり私は少数派の人間なんでしょうか。
とにかく、シュールなギャグもアドリブのような間の悪い台詞回しも人間関係の描き方も恋愛描写も何もかも、私には合わなかった。終始観ているのがキツかった。下手な胸糞映画よりも胸糞に感じて、観るのがキツかったです。
ギャグやコメディは人によって好みが分かれる傾向が強いので、評価の高さでハードルを上げ過ぎないようにした方が良いかもしれません。これから鑑賞される方はご注意ください。