「絶妙な空気感が楽しめる、今泉監督色が堪能出来る作品です♪」街の上で 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
絶妙な空気感が楽しめる、今泉監督色が堪能出来る作品です♪
いろんな作品を観る度にその独特な食感が癖になる今泉力哉作品w
そんな今泉監督作品の最新作は以前から気になっていたので、早速鑑賞しました。
鑑賞した「ヒューマントラストシネマ渋谷」は公開2日目と言うのもありますが、満席。
で、感想はと言うと…良い♪
下北沢と言う永遠の青春が緩やかに心地好く流れる様な街の中での日常の一編の様な物語。
心のバリアの距離のすれ違いや触れあいに時には違和感や温度差を感じながらも互いを気遣いながら、時には同じ空間を共有していく。
良い意味でそれ以上でもそれ以下でもない距離の取り合いがなんか良いんですよね。
多分、凄く好きな人にはハマる作品でこういう空気感を味わう様な作品がダメな人にはダメでしょうね。
もしくは下北沢大好き人間にはたまらない作品かとw
まだ東京に上京したての頃、下北沢に何度も足を運びました。
演劇の小劇場やライブハウス。古着屋に雑貨屋。美味しそうな洋食屋にお洒落なカフェ。
今なら珍しくないお店も当時は下北沢に行かなければ巡り会えない
初めて食べた東京のラーメンの美味しさに感激し、「ザ・スズナリ」の雑居感に圧倒されつつも惹かれて、スズナリの前に通る茶沢通りのカーブを曲がった先にある小田急線の踏切から見える夕陽に感動したのを覚えています。
昼間の賑わいと夜の喧騒が心地良くて、サブカル感が漂う街ですが、個人的には毎日が文化祭の前日みたいでワクワク。
フラッと立ち寄った飲み屋に行くのも良いけど、あまりにも居心地が良すぎて、終電で帰る自信が無いw
そんないろんな「楽しそう」が詰まった街、下北沢。
下北沢にはいろんな思いでも沢山あるので思い入れも一杯。だから観ていて楽しいんですよね♪
ストーリーは彼女が浮気をしてフラれる青年、青の青春の延長戦の様な日常の物語がゆるふわに描かれていますw
草食男子と言えばそうなんですが、温度差の会話のちぐはぐが妙に面白い。
なんでもない日常と言えばそうだし、女々しい奴と言えばまさにそうw
でも嫌な奴ではないし、強いて言えば心を許せるタイプw
毒にも薬にもならない様なタイプですが、一緒に飲むと気遣いせずにダラダラと一緒に飲めそうw そんな絶妙な青を若葉竜也さんの演技はグッジョブ♪
登場人物もいろんな意味で良い距離感の人達w
変な奴は警察官ぐらいw
でも、その警察官との会話がラストの伏線になってるのが面白い。
間宮役の成田凌さんはなかなか贅沢な使い方かと思いますが、成田さんだから出来る良い使い方なんですよね。
その中でも女性陣がなかなか魅力的。
元カノの雪と古書店員の冬子。若手映画監督の町子と映画制作の衣装係のイハ。
個人的には中田青渚さん演じるイハが良い♪ 飲み会後になんとなく意気投合して、イハの家でお茶を飲みながらの恋バナをベースに探り合いの会話が面白い♪
イハと付き合ったら良いのに何故か雪と再び付き合うかが個人的には分からんw
いろんな絶妙な会話の妙が面白くて、その微妙なすれ違いで最後まで行くかと思いきや、なんとラスト手前で5人の鉢合わせw
これにはビックリ。ここに来て一気にコメディ感が爆発して面白さがグッと上がった。
ここまでがまさかの貯めだとすると今泉監督の演出の緩急強弱の妙は一気に上がった感じなのと、こういった作品が今泉監督の本領発揮かと。
今泉監督は「愛がなんだ」や「アイネクライネナハトムジーク」「his」が今泉監督の色彩が色濃く出てましたが、「あの頃。」で少し毛色の違う方向性を示しているけど、今回脚本を担当された大橋裕之さんとの合致も上手くいったのも良い形になったのかと。
現在公開中の「ゾッキ」「音楽」の原作者で妙に癖になる変な感じが脚本でも活きているかと。
撮影の長回しで生まれる空気感も良いし、それを醸し出せる役者陣も絶妙で、こういった空気感を醸し出せるのが今泉・大橋コンビの妙でしょうか
最初にも書きましたが、それ以上でもそれ以下でもなくて、その会話の探り合いが絶妙な会話劇になっているんですよね。
「あの頃。」はあれはあれで凄い好きなんですが何処か商業的な雰囲気もあったし、今泉力哉作品のイメージとしてはちょっと違う感じ。
でも今作は儲けとかを考えずに今泉監督がやりたかった事に近いのかなと。
決して大作ではないし、どちらかとミニシアター系の作品ですが、作品の雰囲気も好きだし、鑑賞中の劇場で良い作品を皆で一緒に観ている空気感を共有しているのも良い。
コメディと言う感じでもないし、かと言って硬い訳でもない。群像劇であるが、下北沢でこそ繰り広げられる青春の日常の一変の物語かと。
かなりお勧めな作品なので、興味があって、良質な作品を観たい方は是非是非な作品です♪