「家族とは…愛情とは…優しさとは…」種をまく人 かひこさんの映画レビュー(感想・評価)
家族とは…愛情とは…優しさとは…
子育て中だとなかなか映画を観る機会が無かったのだが、子どもも一緒に観られると聞いて、家族で観に行った。
一緒に観た主人と感想を話していてふと思ったのだが、この映画の感想を聞くと、心に闇を持っているのが分かる気がした。
いわゆる毒親に育てられた主人、母親の愛情を受け取れずに育ったため、屈折した部分があるのを私は最近になってようやく受け入れることが出来ているが、そんな主人が、この映画を観て「泣きそうになった…」と。主人の心に突き刺さる何かがあったのだと思う。
私自身も衝撃を受けた。母親の葉子に、自分が重なってしまったからだ。
私には二人の娘がいて、下の娘は障害児ではないが、長女のような賢さもないし、おとぼけだし、色々なことが出来なさ過ぎて、それが何だか癒される。
二人の娘に同じように愛情を注いで育てていたつもりだったが、実際には次女を可愛がって長女には厳しくしていた自分に、この映画を観て気づかされた。
だから、長女が次女に対してどんな気持ちを持ってるのか気になったのだけど、長女の感想が「ちえちゃんはわざとじゃないんだよ」と言ってたし、光雄おじさんのことを「ちえちゃんが可哀想だから、自分は黙ってほんとのこと言わないんだよ。だってわたしだって可哀想な小さい子を見たら、自分はどうでもいいって思うんだよ」と言ってた。
長女の感想を聞き、わざとじゃない、と思ってくれたところに救われた。
実際には故意か過失か…その前提をどちらで観て行くかで、映画が違うものにみえる。
セリフや説明的な場面が少ないからこそ、登場人物の表情や顔色、映像の流れとかを追って行きながら、気持ちを読んで行くと、あっ、そうか!という感じになった。
ついついセリフとか説明的なものに頼りがちだけど、むしろ娘のように感性で観た方が、映画の内容を受け取ってるように思った。
私たちは普段の生活の中で、その人の言った言葉だけではなく、表情だったり顔色だったり、目の色や行動を複合的に見て判断しながら人と関わっていると思う。そんなふうに映画を観ると、見えて来る世界が違ってくる。
子育てしているママさんに、是非観て欲しいと思う映画だった。
誰よりも純粋で心優しい光雄と、家族思いで人に対して分け隔てなく心の優しい裕太、弟も障害がある…きっと彼らが生まれ育った環境がそういう人格を築き上げたのかなと思うが、唯一光雄と裕太と違ったのは、自分の家族を持っているかどうか…なのかなと思う。
どんなことをしてでも、裕太は家族を守り抜く決意をしたのだと思うが、それが切ない。
よくある映画のハッピーエンドとは違って、現実にはこうなのかもしれない。善悪では判断出来ないからこそ胸が張り裂けそうで、自分の生きている現実の世界と重なって、自分自身と向き合わずにいられない。
最後のシーンが頭から離れない。
裕太は兄想いの本当に心優しい人なのだと思う。でも、苦渋の決断で病院へ兄を戻してしまったのか…兄の最後のあの表情を思い出すと涙が出て来てしまう。
それでも、何をしてでも守り抜きたい、家族とはそういうものなのだと、改めて思った。