「ラクガキ、すきよ」映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ラクガキ、すきよ
映画クレヨンしんちゃん28作目。
今年はコロナの影響で公開が従来の4月から9月に。レンタルも今の時期に。初めての事。
遥か上空に浮かぶ“ラクガキングダム”。地上の自由なラクガキをエネルギー源としていたが、地上からすっかりラクガキが無くなり、崩壊の危機。このままでは地上に落下。
若き防衛大臣はクーデターを起こし、地上の人々に無理矢理ラクガキを書かせる“ウキウキカキカキ作戦”を決行、地上に侵攻する。
いち早く気付いた姫は信頼する宮廷画家にある物を渡して地上に逃がす。書いた物が実体化する秘宝“ミラクルクレヨン”と、それを使って王国を救ってくれる勇者が現れる事を信じて…。
画家が降り立ったのは、見慣れた街。
お馴染みの春日部。
そして、画家が見つけ出した勇者はとは…、そう、くりくり頭の嵐を呼ぶ園児。
しんのすけ!
何だか今回久々に原作コミックの一篇を基にしているそうだが、一応原作コミックは全部読んだつもりだが、あったような、忘れたような…。
毎回ゲスト声優が話題になる映画クレしん。今回も山田裕貴、きゃりーぱみゅぱみゅ、(もはや消えた)りんごちゃんらが出演しているが、私としてはそんな事はどーでもいい。監督と脚本に注目。
監督は『ラブライブ!』などの人気アニメを多く手掛けている京極尚彦、脚本は多くの実写映画を手掛け、2014年の『そこのみにて光輝く』で数々の賞を受賞した高田亮。
これまで『クレヨンしんちゃん』の映画は“内部”の人物がほとんどだったが、メインを“外部”の人物が担当。
劇中さながら風変わりで自由な発想であると共に、笑い、冒険、泣き…としっかり王道『クレヨンしんちゃん』映画になっている。
宮廷画家に懇願されても、何処吹く風のしんのすけ。
だって、しんのすけの頭の中はななこおねいさんの事でいっぱい。今度の日曜、しんのすけの家に遊びに来る。
ところが、キングダムの侵攻でななこおねいさんが行方不明に。
ななこおねいさん、どこ~!?
やっと、しんのすけのやる気に火が点く。
まずは画家の助けでいったん春日部を脱走する。
個人的にこの画家、いいキャラしてただけに序盤退場が残念~。
しんのすけに頼み込む時の、「おうちに連れてってあげるから」「お菓子買ってあげるから」…って、オイ!
タイトルの“ほぼ四人の勇者”。
てっきり野原一家かと思ったら、早々にみさえが敵にやられて壁に張り絵に。
かすかべ防衛隊かと思ったら、しんのすけ入れて5人だし、やはり風間くんが壁に張り絵に。
となると…?
そこでこのクレヨンが!
しんのすけは勇者。
しんのすけがミラクルクレヨンで書いた物は実体化する。
で、書いたものが…
何故か履いた2日間経ったブリーフ。
ななこおねいさん! でも、5歳児の画力じゃ…。
でも、この面子だけじゃあ心細い。お助けヒーローが必要だ。そう、我らが、ぶりぶりざえもん!
うん! 何て言うか! 何て言うか…。
ブリーフは最も責任感強く、面々のサポートや博識役。いじられたり、ナイスツッコミも。
全く似ても似つかぬななこおねいさん。「しんちゃん、すきよ」とただ一言しか喋れず、現れるシーンはまるでホラー。しかししんのすけには献身的で、面々の中で最も頼りになる。そして薄々感付いた。最後、泣かせてくれそうな事を…。
2代目声優になって初めて映画登場のぶりぶりざえもん。やはり、ぶりぶりざえもんはぶりぶりざえもん! 役立たねぇ!(笑) それがぶりぶりざえもん! でも、いい所も魅せてくれる。それもまたぶりぶりざえもん! とにかく私は『クレヨンしんちゃん』のキャラの中でも、“ぶりぶりざえもん、すきよ”なのである!
このラクガキ3キャラが各々個性豊かで、立ち位置もしっかり。
そこにしんのすけも入り、春日部へ向かう珍道中が楽しい。
街の明かりが見えて来て、しんのすけたちはとある食堂にやっかいに。
そこには、春日部に行ったきり帰ってこない母親を待つ少年・ユウマがいた。
ユウマも加わり、春日部へ。
…ん? これじゃあ“五人の勇者”じゃ…?
これでいいのだ。だって、ぶりぶりざえもん“ほぼ”だもの。
このユウマが加わって、本作のテーマが明確に。
ユウマは如何にもな現代っ子。おとなしい性格で感情を伝えるのが苦手で、友達は一人もおらず、SNSでしか誰かとも繋がっておらず、家の外にも出る事も無い。
そんな少年が“自由”なしんのすけと出会って…。
このユウマこそ、友情、成長、自由の体現だったのではなかろうか。
そんな彼がクライマックス、春日部の住人に呼び掛ける。
しんのすけ、ユウマ、ラクガキキャラ、野原一家、かすかべ防衛隊、春日部の住人たち、そしてキングダムも一丸となって、秒読みとなったキングダム落下を食い止めようとする。
皆の思いが詰まったヒーローよ、今こそお助けの番だ!
“ほぼ四人の勇者”ではない。皆が“勇者”なのだ。
思えば本作には本当に悪い奴は居ない。
防衛大臣も国を思ってした事。
平和と自由とラクガキを愛する心は同じなのだ。