「でもさあ、人間、どれだけ惚れて、死んでいけるかじゃないの?」Red 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
でもさあ、人間、どれだけ惚れて、死んでいけるかじゃないの?
佇まいだけでクズ臭が漂う鞍田と、いまだに過去の甘味が身体から抜け切れていない塔子。エピソードがひとつも出てこないので想像するしかないが、演じる妻夫木の冷めた目、夏帆の訴えかける表情で十分それは伝わってくる。それは孤独な男と孤独な女ゆえ。そして、暖色系と寒色系の色彩を、立場や感情に合わせて巧みに訴えかけてくる映像、それが醸す空気。そこらへんは監督の見事な手腕だ。
だけど、反面、そこが女性監督ゆえの弱点。美しい恋愛映画にでも仕上げようとしているのか、泥臭さがない。だいいちこの映画、脱ぐ勇気をもたない女優が主役ってどうよ。塔子の覚悟が見えてこない。役者の覚悟(例えば「火口のふたり」の瀧内ほどの)が足りないから、説得力も足りず、塔子の最後の選択を許す気になれない。そりゃあ僕だって、一人の人が好きで忘れられないなんて人間の性、業なんだもの、しょうがないと思っている。だからこそ、そこは他人をねじ伏せるもの、つまり、”どれだけ惚れたか”をみせてくれることを期待したのだが。
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