「仏製なのを忘れる最幸のエピソード」シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
仏製なのを忘れる最幸のエピソード
地元映画館での公開初日に観ました。
北条司さんの高評価を知りつつも、実写化作品への偏見で、正直あまり期待してませんでした。
ですが、予想を大きく裏切り、思いっきり楽しめる作品でした。
90分ギチギチに遊び心が詰まった、最高のB級コメディでした。
感想を以下の3つ分けて書き留めます。
1. 最高の原作リスペクト
2. B級感が程よい新エピソード
3. 行き届きすぎな日本仕様
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1. 最高の原作リスペクト
獠や香や冴子のルックスはともかく、キャラ設定・衣装・小道具やカラスの使い方まで、テイストはほぼ原作の通り。
海坊主に至っては、ルックスもそのまんまん。
しかも、下手なモノマネの残念な偽物っぽさもなく、作品にとても馴染んでました。
「20世紀少年」然り、漫画どおりに実写化しようとすると、映画としては不自然な仕上がりになりかねません。
なので個人的には、原作に似せようとしすぎず、独立した映画作品としての完成度に拘るアプローチが好きです。
ですが本作は、原作の魅力を見事に再現し、新たな映画作品として昇華させることに成功していました。
勝因の1つは、日本人がフランス人キャストがを、全く知らないことにあるかもしれません。
日本人俳優やハリウッドスターがキャストを務める場合、どうしたって先入観がある分、イメージ合う合わないの論争になります。
仮に演技としては、かなり役への憑依に成功していても、やれ胸がないだ、背が低いだと、原作ファンという暴君になりがちです。
でも、フランスでは人気があっても、Philippe Lacheau も Élodie Fontan も、日本では全く無名。
なので、衣装や髪型、立ち振舞いが設定どおりなであれば、イメージが空白な俳優に、観客がキャラのイメージを当てはめやすかったのかもしれません。
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2. B級感が程よい新エピソード
もう1つの勝因は、既存エピソードを実写化せず、香の兄が殺される導入部以外は、オリジナルのエピソードを構築した事でしょう。
既存エピソードを利用すると、観客がプロットを予想する愉しみがなくなります。
加えて、再現性を試す目線になり、粗を探しがちです。
でも本作は、女好きの獠が、惚れ薬でおっさんに恋してしちゃうという新プロット。
荒唐無稽でバカバカしいけど、お色気展開でうまい外し要素になっていて、笑い所の沢山作っていました。
ここらへんは、監督脚本主演の Philippe Lacheau には、お手のものなのかもしれません。
アクションも、リアルではなく記号的で、笑いを重視していました。
特に、終盤の獠と香コンビネーションは、とても愉しめました。
ただ、おどけ方が全体的にベタベタなので、B級感は付き纏います。
序盤で心電図の波形がモッコリしてる小ネタは、笑いました。
と言っても、原作自身がそもそもB級コメディ感たっぷり。
原作ファンにとっては、むしろリスペクト要素。
一方で、原作を全く知らない観客には、B級感が足を引っ張り、高い評価には繋がらないかもしれません。
因みに、IMDbでは10点満点て6.5点でした。
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3. 行き届きすぎな日本仕様
更なる勝因の1つは、行き届きすぎた日本仕様での公開形態でしょう。
自分が探した限りでは、殆どの映画館では、日本語吹替のみの公開のようです。
獠と香の吹替こそ、アニメ版の神谷明と伊倉一恵ではありませんが、両氏が推薦した山寺宏一と沢城みゆきが、アニメ通りに好演。
特に、山寺さんの再現性、憑依っぷりには唸りました。
ちょい役ですが、神谷さんと伊倉さんの出演も、愉しく心憎いです。
役名も、仏版では獠は Nicky Larson、香は Laura Marconi、海坊主は Mammouth とアニメ版の時点で異なりますが、吹替では原作通りで違和感ゼロでした。
更には、エンドロールで流れた "Get Wild"。
心が一気に30年前に遡りました。
ですが、仏版のエンドロールはおそらく、日本語声優のクレジットで流れてた仏語の曲。
歌詞の詳細は聞き取れませんでしたが、"Nicky Larson"と繰り返すのは分かりました。
何れにせよ、日本ではしっかり日本仕様に加工されていたおかげで、漫画もアニメも観ていた自分にも、違和感なく受け入れられたのでしょう。