「過酷な在宅医療の現実だけではない、人の温もりが描かれていた」痛くない死に方 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
過酷な在宅医療の現実だけではない、人の温もりが描かれていた
在宅医・長尾和宏氏の原作を実写映画化。原作は未読だが、ノンフィクションであることくらいはわかる。
それを自伝的な内容の映画にしたということか。全体的にゆったりと時間が流れる作りだった。さほど意味のないシーンに結構時間をかけたりしているのはドキュメンタリーのようなリアルさを出したいからなのだろうか。個人的にはあまり好きではない。でも、退屈しなかったのだから作り方がうまいということなのかも。
本作に登場する終末期患者は2人。主人公の河田が変わる前と後って感じの扱い方だ。変わる前の河田は患者との向き合い方がややドライ。病院の勤務医の延長という印象だ。後半の河田は先輩在宅医の影響を受け、患者とその家族に一歩踏み込んでいく医師になっていた。その変化はとてもよかった。
特にこれ!という答えがあるわけではないが、死ぬということについて考えさせられてしまう。経営のために患者を早く退院させたい病院側の論理だったり、どんな時間であっても患者家族から呼び出される在宅医の過酷さだったり、自分らしく死のうとする尊厳を押し通すことの難しさであったり、すべて国が推し進めようといしている在宅医療の現実だと感じた。
特に印象的だったのは、最初の患者の一言。病院から自宅に戻ってきて、「やっと自由になれた」と言い放つ。でもその「自由」は家族に多大な苦労を背負わせるものだった。尊厳を守るためにはお金も人的な苦労も必要ということなんだろうか。
そういう意味では後半の終末期患者の死に方はたしかに完璧だった。演じた宇崎竜童の素晴らしさもあるが、本当に見事だった。あんな死に方ができるなら自宅で死ぬのもありだ。
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