「寄せては返す波のように心地よく語りかけ、深く胸に沁み渡っていく秀作」マイ・ビューティフル・デイズ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
寄せては返す波のように心地よく語りかけ、深く胸に沁み渡っていく秀作
こんな小さな作品のことなど見落とされるか、すぐさま忘れ去られてしまうかもしれない。が、本作はえも言われぬ魅力を秘めている。これだけは確かだ。冒頭、舞台に幕がおり、周囲の観客が引き波のごとくいなくなった後も主人公が一人、座席に腰掛けたまま立ち上がれない描写があるが、この映画に触れた自分の正直な気持ちもこの描写とまさに同じだった。
演劇大会という題材がまず素晴らしい。普段は目立たない生徒が、人前で思い切り感情を表現する。そのスイッチが入ったかのように変わりゆく姿。廃部寸前の部活動の面々が引率教師のボロい車に乗り込んで目的地を目指す。彼らの高揚と緊張、それに教師の過去のエピソードが絡まり合って、忘れがたい週末のひと時が織りなされていく。と、あらすじにすると無味乾燥なのに、映画の感触は波打ち際のように爽やかで、深く心に染み入ってくる。彼らの旅は、成長は、かけがえのない素敵なものを届けてくれた。
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