「部分的には魅力的、ストーリー全体は説明不足かな」HOKUSAI たきさんの映画レビュー(感想・評価)
部分的には魅力的、ストーリー全体は説明不足かな
美点はあれど、ストーリーが散漫で、伝えたかったことはわからなくもないのですが、映画にのめり込ませるほどの物語性がなかったように思いました。
また説明もかなり少なくて、しばらく見てから、辻本さん演じるこの人が曲亭馬琴か…と気がついたりしました。エピソードでヒントを出すんじゃなくてテロップで名前を出してくれって思いました。全体的に知ってたらわかる、知らない人は、知らなくても話はわかるはずなのでほっとく、という感じが多くて、中途半端に知っている人間からしたら、これは誰なんだ?と気になって途中で検索したくなりました。
冗長で、前半を見たところでまだ半分あるのかぁ〜と少しげんなりしました。
あと、出てきた割に全然回収しない出しっぱなしの演出も少し気になりました。最初に出てきた殴られて泣いていた子どもとかも全然回収しないし、玉木宏さん演じる喜多川歌麿が見せしめで捕まって50日くらい投獄されるとなったあとも、捕まりっぱなしで次のシーンに移行してしまい、大丈夫だったのかな、と心配になりました。
役者さんたちは豪華で、見応えがありました。阿部寛さんはやはりひきがあるなぁと改めて思いました。阿部寛さん演じる蔦屋さんで映画作った方がストーリーがわかりやすくて良かったのでは??とも思いました。またもちろん主演の方々もさすがでした。
またこの作品で良いと思ったのは好きなシーンがいっぱいあったことです。
好きなのは、蔦屋さんが北斎を上手にコントロールしていくシーン、性格の異なる北斎と馬琴が一緒の部屋で作品を作っているシーン、田中泯さん演じる北斎が、突風に煽られて慌てる人々を見てすごく楽しそうに目を見張って観察しているシーン、同じく田中さん演じる北斎が新しい顔料を手に入れ雨に打たれるシーン、そして最後に柳楽さん演じる北斎と田中さん演じる北斎が一緒に波の絵を描くシーンです。
演技や演出など部分的にはすごく良かったです。もっと北斎について知りたくなったのもあり、総合すると見て良かったなと思いました。