「絵具を頭から浴びてはいけません」HOKUSAI ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
絵具を頭から浴びてはいけません
中1くらいの時に美術の授業で初めて本物の浮世絵(厳密には錦絵)を見ました。それまで私は、お茶漬け海苔のおまけの浮世絵カードに興味はありませんでした。
木版を何枚も重ねて作った錦絵は非常に緻密で、江戸時代の技術の高さに感心しました。また、色を変えて摺った物もありまして、錦絵とは、絵師だけでなく、彫師の繊細な技術と、摺師のセンスが不可欠なのだと知りました。でも後世に名前が残っているのは絵師だけなんですね。
本作で制作の過程が見られて良かったです。
本作は、北斎という絵師の生涯を描いたというよりは、反骨精神を貫いた男の生きざまを見よ、みたいな映画です。作品の紹介が少なすぎます。
4章に分けた事も成功しているとは言えないですね。もし分けるなら、作風の変化とか仕事の内容に絡めた方が良かったかも。
北斎が青い絵具を頭から被るシーンについて。
私は、探し求めていた色についに出会った喜びを表現したと解釈しましたが、あれを天然の岩絵の具(毒物が多い)かと思ったのでぎょっとしました。後で調べたら、あれは紺青(こんじょう=プルシアンブルー)という人工顔料で、毒性はないと分かりました。
ただ、北斎が多用したことで北斎ブルーと呼ばれるそうですが、日本で最初に使ったのは伊藤若冲で、他の絵師も使っていました。そもそも紺青は輸入品で大変高価なものだし、体に掛ける意味が分かりません。
想像するに、実際は、頼んでいた絵具が入荷したので早速試し書きして、「うん、これだよこれ!」とニンマリ、みたいな感じだったのではないでしょうか。
そういえば、私の記憶では、第2章で子供をあやそうと(全然泣き止まなかったが)顔にいたずら書きしていたのが、墨ではなく青い絵具だった気がするんですが、あれは何か意味があったんでしょうか。
長くなったので他の違和感については書きませんが、結論として、制作者の熱意はわかるのですが、出演者の熱演をもってしても、北斎の魅力が十分伝わったとは言えない、と感じました。
そうなんですよね。
「歴史モノ」をシリアスにやる場合は、フィクションであっても「時代考証・風俗考証」をきっちり行う事が肝心だと考えます。
時代考証無視の場合は、徹底的なコメディにしてしまい、誰も「本当の話だとは思わない」ように仕向けるのが制作者の良心だと思うんですね。
(福田&大泉の新説三国志のように)
HOKUSAIの脚本は残念ながら、女子学生がお遊びで書いた小説レベルでした。このような作品で、世間様からお金を取るというのはクリエイターとしての誇りが無い会社かな、と思いました。
まぁ俳優陣の演技は素晴らしいプロの仕事でしたから、尚更残念です。
超一流の高級食材(俳優さん達の演技)を料理人が素人調理で台無しにした。
それを「客に食べさせる料理として店で出せるのか?」という話ですね。食材代と考えるか?「料理」としては出せないと考えるか?
店のプライドが問われるところです。
ゆり。さん! まぁ!ありがとうございます!読んでいただき嬉しいです!追記描き終わった時、ふと、私が一番書きたかった事はこの事だったのかな?と思いました(笑) 北斎はエピソードが 本当に面白いですよね😄
おはようございます。
見えないものを見るってことで言うと、怪談話の百物語の会に出たり、物語の挿絵を、更に解釈して描いてしまうなんてのも、そんなことの一部のように思いますね。
ゆり。さん
コメントありがとうございます。
私も観賞後wikiなどで調べてみました。
柳亭種彦の死についてはあんな殺され方じゃなくて、版木没収によるショックから病死したとの説が有力らしいですね。
フィクションならもっと納得いく脚本にして欲しかったです。
北斎の魅力については、描き方が浅くてあまり伝わってこなかったですね。