「【”如何に弾圧されようとも、文化の灯りは消えず。そして、優れた絵は世の中を変える。”今や世界に認められている、北斎の絵画の才能の萌芽と、開花する姿を名優二人が見事に演じた作品。】」HOKUSAI NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”如何に弾圧されようとも、文化の灯りは消えず。そして、優れた絵は世の中を変える。”今や世界に認められている、北斎の絵画の才能の萌芽と、開花する姿を名優二人が見事に演じた作品。】
ー 今作は、人によっては説明が足りない、人物相関が分かりにくい、と言う人もいるかもしれない。だが、そういう場合は、一人の一途に自分の道を突き進む男の物語として見れば良いと思う。
勿論、文化文政時代の様々な出来事の知識がある程度あれば物語の面白さは、倍加するが・・。ー
■感想
◆青年期
・北斎の青年期の記録は殆どない。
・が、今作では“きっと、そういう人物だっただろう・・”と思わせる破天荒な負けず嫌いな青年、北斎(実際は勝川春朗と言う号を名乗っていた。)を柳楽優弥さんが、魅力たっぷりに演じている。
・蔦屋重三郎(阿部寛)に、見込まれるも、歌麿(玉木宏)や、突然現れた写楽”この人の存在は、今でも疑問視されている。名のある画家が変名で書いたのだろう・・とか。”の屹立した絵の世界観に圧倒され、苦悩する姿。
ー 青年期シーンの白眉は、全てを投げ捨て、放浪の旅に出た際に海に入り、波に揉まれて生み出した、”江島春望”で描かれた“波”の筆致に辿り着くシーンであろう。ー
◆中堅期
・若き日に、新境地を見出した海岸に行った帰りに見た、紅に染まる不二(劇中では、”二つとないから不二”を忘我の表情で見詰める北斎。(田中泯:イメージがドンピシャである。)
・富岳三十六景の名作”赤富士”の誕生である。
ー 名もドンドン変えながら、絵師としての幅を広げていった時代であるが、今作ではサラリと描かれている。ー
◆老年期
・紺青(プルシアンブルー:ベロ藍とも呼ばれていた・・)と出会った際の、北斎が雨中、家を飛び出し、全身に流れる紺青の鉢を高々と掲げ挙げる歓喜の表情のシーン。
・お上の文化統制により、武家でありながら読本を書いていた柳亭種彦(永山瑛太)の非業の死をイメージして描いたかのような鬼気迫る”非業の死”。
ー 明らかに、町民文化を抑圧する江戸幕府が執行した”天保の改革”への強烈な怒りが生み出した作であろう。ー
・そして、青年期と老年期の二人の北斎が、プルシアンブルーも鮮やかな、「怒涛図」の”男浪””女浪”を描き上げる幻想的で、美しくもダイナミクス溢れる力強きシーンも見事である。
<絵を基に、木の板を削り出し、版画を作り、刷るシーンなども、面白く鑑賞。
あれだけ、幕府の統制を受けた北斎の錦絵や、肉筆画が現代の世界の美術界から絶賛を受けている事実を鑑みれば、如何なる弾圧を受けようとも、優れた美術文化の灯は、永遠に世界を灯すと言う事実を再認識し、且つ柳楽優弥、田中泯と言う現代邦画が誇る稀代の名優が青年期、中堅期、老年期を演じた今作は、実に見応えがあった。>
◆亡き、杉浦日向子さんが遺された名作「百日紅」が、読みたくなった作品でもある・・。
書きそびれました。
杉浦日奈子さんは、昭和・平成を代表&牽引した、大変優れた時代考証家です。
杉浦さんの浮世絵話は、非常によく研究された時代考証&風俗考証に基づいたフィクションです。
本作、河原さんとやらの仕事ぶりは「時代考証家」という価値ある仕事の存在意義を根底から否定するものだと感じました。
私の中高時代の親友のお父様が、当時長年NHK大河の時代考証・風俗考証をなさっておられましたし。
フィクションにも「格」「品格」というものがあると思います。
本作からはそれが感じられないから不快を覚えたのかもしれません。
NOBUさんが杉浦日奈子さんのお名前を出して下さったので、杉浦さんとの対比で問題点が明確に浮き彫りになりました!
貴重な示唆をありがとうございます^ ^
なるほど、なるほど〜。
フィクションである事自体はまったく構わないんですが、
「歴史的資料を徹底的に調べ」という部分が、引っかかってしまいますね。
今の世の中、例えばWikipediaなどは論文の引用や参考に認められないと思いますが、本作はたかだかWikipediaごときで5分もかからずに得られる程度の知識すら持たずに、勝手な思い込みだけで暴走気味に創作している・・・というのが感じ取れますからねぇ。
「演技」に関しては、何一つ文句はありません。
皆、それぞれに解釈を深め、味わいのある表現を魅せてくれました。
まぁ、低評価の原因には「期待値の高さ」もありますよね。
北斎という人物自体が非常に魅力的。
俳優陣も安心・安定を上回り「何を観せてくれるのか?」という信頼おける面々。
私も壱の章に関しては、史実や時代考証を一切無視すれば面白かったですからね。
ただし、女子高生、女子大生時代に「楽しかった」と感じたレベルと同等いう意味ですが。
ゴジラvsキング、始まったのですね。
こちらは小学生時代の気分さえ満たしてくれればいいので、楽しみにしていますw
私、これはダメでした〜。
いくら「若い頃の資料」が少なくとも「生年・没年」の史実くらいはあります。
北斎破門の年齢は35歳。19歳でデビューしてずっと絵で身を立ててきているのですから、壱の章、弍の章は脚本家の妄想。
参の章に至っては「生首図が印象に残った」→「種彦が同年亡くなったのを知った」→「この絵は種彦を想って描いたに違いないわ!作家として直感的にわかったわ!」→「北斎はこの絵を通して、伝えたいメッセージがあったのよ。」という発想らしいですね。脚本家のインタビューを読むと。
種彦の刑はただの始末書提出なんですが・・・。60歳ですし、柳亭
派として弟子も複数いましたから、幕府もそれなりに尊重した扱いはしてくれたでしょう。
人気絶頂中連載の、源氏物語パロディの断筆を命ぜられたショックはあったそうですけど。命を賭けるような文化芸術作品という気はしません。
壱の章も脚本家は「蔦屋はメンター的な役割で、方向性の定まらない北斎を愛の鞭で鍛えて才能を引き出そうとした。それによって北斎は自分の絵の世界に開眼したんじゃないかと思います。」って言ってるんですね。
つまり、史実を丁寧に調べた上で「敢えて、自分オリジナルの創作ストーリーを作った」のではなくて、
北斎の代表的作品を見ながら、浅い知識と絡めて「きっと史実はこうだったに違いないわ!間違いないわ!」って思い込みで脚本書いてるみたいなんです。
丁寧な調査と正しい知識理解の上で、文化的価値のあるフィクションを創作するならば意義を感じますが、本作は「女子学生レベルの手慰みでも一流どころの役者をこれだけ集めれば、ある程度観られるものになる」という検証に感じましたね。
役者の皆さんの素晴らしい演技には敬意を表します。
まあ、あのレビュワーだけじゃなく、この作品もそうですが、ひっどいレビューが、映画.comは多い様に思います。
僕がパラレルでやってるもう一つの方は、もっと高いように思いますね。サブ垢、ステ垢で本垢に共感しまくるのがないのの違いがあるように思います。
NOBUさんこんばんは。
いつも共感ありがとうございます。
私は北斎の波の絵が好きです。ずっと観ていても飽きせん。
今回の二人の北斎。若い北斎を柳楽が熱血に演じて、また老年期を田中が見事に演じてよかったと思います。
アニメの百日紅。杏ちゃんの声がお栄の気の強さ品のある江戸っ子の口調が印象に残っています。