「ヨコハマのお姉ちゃんとガンダムプラモとジョジョラビット」ジョジョ・ラビット ウシダトモユキ(無人島キネマ)さんの映画レビュー(感想・評価)
ヨコハマのお姉ちゃんとガンダムプラモとジョジョラビット
自分が歳をとって変わったからなのか、時代がそうなったのか。“親戚づきあい”というのがめっきり薄くなった。令和になったのを機に仕事以外の年賀状もやめにしたので、いよいよこれで慶弔のみの関係になるんだなぁとも思う。
でも子どもの頃は親戚の家に行くとか親戚が家に来るって、けっこう楽しみなイベントだった。ある年の夏休みに「ヨコハマのお姉ちゃん」が家に何泊かで来ることになって、僕は有頂天だった。
“あぶない刑事のふるさとYOKOHAMA”からやって来た6歳年上のヨコハマのお姉ちゃんは、オシャレで、優しくて、美人だった。とにかく構ってもらいたくて僕ははしゃいでいた。
でも残念ながら僕には5歳年上の兄貴がいた。6歳年上のヨコハマのお姉ちゃんは、6歳も年下のコドモと遊ぶより、同年代の兄貴とテニスをしたりボーリングに行ったり、喫茶店でアイスコーヒーを飲んだりすることを楽しんでた。その全部に僕はついていったけど、兄貴は露骨に僕をうっとおしがった。わかっていたけど僕は全部についていった。テニスは全球空振りして、ボーリングは全球ガータだった。喫茶店では兄貴とヨコハマのお姉ちゃんが隣同士に座って、僕は対面側にひとりで、バニラアイスの乗ったコーラを飲んだ。僕はアホのように楽しそうにしてたけど、心のなかでは兄貴死ねと思ってた。
ヨコハマのお姉ちゃんが横浜に帰る日、兄貴がいない時に、僕のおでこにチューしてくれた。そして誕生日プレゼントだよって「1/100リアルタイプガンダム」のプラモデルをくれた。ものすごく嬉しかったけど、ヨコハマのお姉ちゃんが帰ってしまった寂しさのほうが大きくて泣いた。後日作ろうと思った1/100リアルタイプガンダムのプラモデルは、「お前が作るとヘタだから」ということで兄貴が作ってしまって、また泣いた。口に出して言うと殴られるから、心のなかで兄貴死ねと思った。
その兄貴が27歳でほんとに死んだ時、葬式に来てくれたのが、たぶんヨコハマのお姉ちゃんと会った最後だったような気がする。子どもの頃の記憶と変わらず、オシャレで優しくて美人で、そして素敵な紳士の奥様になっていた。それ以降は年賀状だけが横浜と愛知県を往復した。その年賀状も平成とともにやめにする。
『ジョジョ・ラビット』という映画は、観た人みんなに褒められるに相応しい、良い映画だと思う。戦争の独裁に思いを馳せたり、スカヨハの母親像に胸を打たれたり、褒められるべきところがたくさんある映画だ。
その中で僕にはやっぱり、「あれくらいの歳の男の子が、あれくらい年上のお姉ちゃんに恋をする話」として、懐かしいキュンキュンを味わった。全球空振りでガータだった僕からみれば、ジョジョはずいぶん立派な戦士だったと思う。
あのラストシーンのあと、ふたりはどうなっていったのかな。映画はイイところで終われるから、美しいよね。