「解釈、感情次第で極端に振れる作品」シン・ウルトラマン zem_movie_reviewさんの映画レビュー(感想・評価)
解釈、感情次第で極端に振れる作品
IMAXデジタル、TOHO轟音、立川爆音で三回連続で鑑賞してきました(笑)
堪能するなら轟音が断然お勧めです。効果音、BGMとセリフが上手くバランスしています。迫力と明瞭さが両立していて聞きやすいです。IMAXは音のチャネル間で断絶を感じて余計不自然だった印象です。爆音は迫力があり過ぎてセリフを消してしまってますし、高音域に不自然な山があって耳が痛くなる箇所がいくつかあります。画面はIMAXと他で差があるとも思えませんでした。コスパを考慮すればIMAXは必要なかったですね。逆に轟音の素晴らしさを再認識しました。
さて、肝心の作品ですが冒頭で嫌な印象を受けました。ウルトラQロゴの代わりに表記されたシン・ゴジラのロゴには不遜を感じました。確かに本作はシン・ゴジラの続編と捉えた方が自然かもしれません。本作を観た後だと余計にシン・ゴジラとの親和性と連続性を否定できませんけれども。また「かいじゅう」「かとくたい」の漢字表記には、オリジナルを凌辱していると感じました。作ってる方がそんなことを微塵も思っているはずもないのでしょうけれど。また、「かとくたい」が、ただの出向役人の集まりとしかなってないことにも不満です。科特隊のメカ、技術革新、怪獣の撃破も欠くことのできないウルトラマンの魅力の一つです。でもそれが一切ない。スーツで怪獣に立ち向かうのかよ、って。また、科特隊は国際的な組織でしたがねえ・・・。残念です。
一方、2時間程度にウルトラマンの物語をまとめた手腕は高く評価したいですし、こういうストーリー構成になるのには納得もできます。よくきれいにまとめたと思います。(良かったとは言ってない)
良かったところ
・ストーリー構成。コンパクトかつ盛りだくさんで分かりやすくまとめたのは素晴らしい。きちんと筋として成立もさせている。(ナラティブとして面白いとは言ってない)
・原作放映時の日本社会を現代に反映させたような多くの設定には熱いものを感じました。団地だったり居酒屋だったり通勤だったり「かいじゅう」の登場場所だったり。
・ウルトラマンの造形。こっちがしっくり来ます。ただ、オリジナルはオリジナルで当時の技術をもってやれることをやっていたので全否定はしませんし、そこはリスペクトすべきです。カラーリングで状態変化を表すのは良かったです。不思議なのはウルトラマンの登場時と二度目移行で口の形が変わったことです。登場時は人間の口に近いもの(はっきり言って不気味)でしたが以降はいつもの口でした。なんか意図があったのかなあ。
・画面のカット割り。独特で映画で観てこそ、な撮り方は面白いし流石のセンスでした。非常に個性的でシン・ゴジラ以上に良かったです。
・山本耕史。とにかく素晴らしい。彼の演技を観るためだけに映画館に行くのも全然あり。ここだけでも満足できる。いやあ、すごかった。逆に斎藤工、食われすぎ(笑)
残念なところ
・山本耕史の演技と対になるのかもしれませんが、演技演出が残念。わざとなんだろうけど、西島秀俊に関しては素だろうとは思いますが、どうせやるなら振り切れても良かったんじゃないかなと思います。まさか、西島さんの演技ラインに合わせた??
・茅場晶彦(ソードアート・オンライン)が登場。ってか、シチュエーション的にも音声表現も茅場のまんまでした。いくら同じ声優だからといって・・・。一方、津田健次郎は良かった。
・CG処理が雑過ぎ。吹き飛ばされた岩石が森に吸収されたり地面に着く前に蒸発していたりウルトラマンの動きが軽かったり。あえて原作にあわせて「ソフビ」仕様にしているのかもしれませんけど、動きだけでなく物体そのものの重さを感じないんですよねえ・・・。予算の問題かなあ・・・。違うと思う。
・メフィラスとの戦いがまんまエヴァ。
・「かとくたい」もドンパチやって欲しい。
・細かいところで設定が雑。ワザとかもしれませんが、庁の長は大臣ではなく長官ですしお役所で使うには椅子が高価(ウィルクハーンで自分が使ってるw)すぎます。とか。
・日本をアメリカの属国扱い設定に貧乏臭さや凡庸を感じる。シン・ゴジラの時もでしたけど。
・ないものねだりは承知ですが、ウルトラマンのエンタメ要素が欲しかった。例えば、ライバルはバルタン星人だと思っているので(笑)
その他
・エンドロールが庵野秀明だらけw
・監督補、副監督、准監督、総監修、監督のならびに目が点になったw
・声の出演に「高橋一生」が。三本観てどれかわからなかった。後から調べましたが、結果にびっくり。設定を知ってさらになるほどとなりました。
手放しで絶賛はできないかなあ・・・。自分は。