劇場公開日 2022年5月13日

「痒い所に届かないむず痒さ」シン・ウルトラマン Flagmanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5痒い所に届かないむず痒さ

2022年7月19日
iPhoneアプリから投稿

庵野作品、樋口作品はほぼ鑑賞済み。
賛否が激しく分かれている作品と言うのも前情報でバッチリ叩き込んで本日鑑賞。
意外にも年配のお客さんが多く驚きました。

僕はウルトラマンで言うと『ティガ』世代。
もちろん大好きで子供の頃は初代も母にせがんで全部レンタルして観ておりました。
ゼットン戦には子供ながらに衝撃を受けたのを覚えています。

で、本作。
単刀直入に言うと、めっちゃ好きだった。
圧倒的庵野思想作品だった。
ウルトラマンオタクが作ったウルトラマン。

面白かった面白くなかったではなく、好きだったか?嫌いだったかに分かれると思う。
もちろんそれは面白かったか面白くなかったにも通じるがちょっと違う。

まず巨大な人型の外星人が地球に干渉し、『ある事』が起き、斎藤工演じる神永の行動に興味を抱き、己の探究心の為同化する。
旧作と違い人類(ハヤタ隊員)に同情してでは無いアプローチの仕方が良かった。

そう。全体的にウルトラマン=人類の味方と言う昔のヒーロー的な描き方ではなく、あくまでも傍観者の立場であると言う完全な神的目線で描かれている。

そして言い方は悪いが初代の初期型ウルトラマンのあの気色悪さと、あえてチープなCGで作られた細くひょろ長い手足が薄気味悪さに拍車をかける。
お馴染みの『ジュワッ!』や『ヘヤッ!』の声を付けない為、感情変化がなく只々目標殲滅に動く姿は言い意味で気味が悪い。

何か無機質な兵器の様な印象を受けるが次第にその姿は斎藤工に見えてくる不思議。
斎藤工もウルトラマンに見えてくる笑

全体的な設定は、シン・ゴジラ同様非常に細かく現実味を帯びており、そこに非現実を落とし込む事で面白い状況が出来上がる。
面白い設定を面白かった!で終わらせたのがシン・ゴジラ。
あれは唯一無二の傑作だと思います。

本作も同じニュアンスを感じるが、面白い設定を詰め込み過ぎた上面白かった!で終わらせられなかったのかも知れない。

はい。
詰め込み過ぎです。

冒頭からの怪獣殲滅ラッシュと情報量の多さとゴジラ以上に読ませる気も無い長い文章。
まぁ庵野作品ですから、、、と言えばそれまでですが。。

ゴジラはオリジナルがほぼ映画作品。
同じ映画ならば作りやすいのは明白なのだが、今回はオリジナルがドラマである為、ウルトラマンとの信頼度を築く為にはより怪獣を倒し人類の見方をすると言う1話毎の話を映画にまとめるわけですから難しいですよ。

それはわかるんだけど。
にしても蛇足してた。

ザラブ星人いるかな??
外星人と言う概念や、ウルトラマンが敵かもしれないと言うアンチテーゼ的流れ。
神永がウルトラマンである事実が明かされた上、人類との信頼を築く大切なロジックだとは思うが、なんとかならなかったのか。
夜の空中戦は良かったが。。

うーん。
全編通して騒々しい印象。
もっとスマートにして欲しかった。

シン・ゴジラは単一の敵として扱われ映画全体の目的が明白だった上ゴジラ殲滅に対するプロセスがしっかりしていた。
ウルトラマンではそうも行かないのでここばっかりは仕方ないのかな、、、

そして、僕が何よりも嫌いだと思った物がゼットンの扱い。

正直『はい?』と。
これは頂けない。
まさかの衛星兵器。
嫌いです。

ただ↑でも書いた様に、ゾフィならぬゾーフィの言い分は光の国の立場が傍観者として一貫しててよかった。
ゼットンを召喚させる理屈も理解できたし面白い設定だった。

まぁ作中、高次元やプランクブレーン、マルチバースの存在を明言したのでシン・ゴジラ、シン・エヴァンゲリオンとの関係性も何となく『シン・ユニバース』が何をやりたいかも分かりました。

面白い試みだと思います。
庵野作品は個人的に好きなので是非成し遂げてほしいシリーズです。

シン・ウルトラマン
個人的には好きな作品になりそうです。
あと数回観れば大好きになっているかもしれない。

ただ人にはお勧めしません。

Flagman