「三部作にして欲しかった」シン・ウルトラマン でいさんの映画レビュー(感想・評価)
三部作にして欲しかった
全体的にスピーディな展開だし、「シン・ゴジラ」との連続性も感じられる内容だった。
要するにゴジラ撃滅で国連安保理に核を使わせなかった日本は「その道のプロ集団」だと認定され、米軍も弾代だけだしゃB2は送るしバンカーバスターも使っていいよとなり、災害慣れしている日本人は「禍威獣」が出てきても「またか」としか思わず、通常兵器が効くだけゴジラより遙かにマシだとあしらい続け、ゴジラ退治に一役買った物理化学官僚集団の後釜として「禍特対」を設立し、直接攻撃役を担う自衛隊、在日米軍の上位指揮に位置付けた。
やがて本格的にヤバい禍威獣が出現しだしたことで見るに見かねた正義の善人ウルトラマン(ルピア)が助けてくれるようになる。
ウルトラマンが善意の存在だとなると今度はウルトラマンを貶めるザラブが出現する。
ウルトラマンの正体が神永だと暴露された上、拉致され、偽ウルトラマンの暴虐で信用を失墜させると既婚者の葛城ミサト的な神永のバディ浅見が信頼に応えて神永を救いザラブの謀略を暴き倒す。
すると一連の禍威獣騒動の黒幕メフィラスが地球人類と取引して巨大化の仕組みであるβシステムを供与する見返りに地球人類を生物兵器として内戦させようと画策し、ルピアとの停戦交渉を求めるが拒否したことで戦闘になるものの、ゾーフィの介入を知ったメフィラスはアッサリ退く。
一連の事態を監視監督していたゾーフィは地球人類の危険性を感じて最終兵器ゼットンを送り込み、一度は敗北したウルトラマンは人類への情報提供で滝ら科学者たちの解析で共闘してゼットンにリベンジするが・・・という話。
ただ、勿体ないのが折角の設定と展開とが生かし切れていないこと。
山本耕司演じるメフィラスはビジネスマン的な存在でとても魅力的な悪役。
「シン・ゴジラ」では臨時内閣の一員だった嶋田久作が大隈総理に、竹野内豊が「謎の男」として劇中終盤に登場する。
三部作設定であるなら、第一部を禍威獣激闘編とでも位置付け、禍特対と自衛隊、米軍が協力して事に当たるが対処しきれなくなるところでウルトラマン登場とし、レッドキングあたりをラスボスにして、ラストで外星人の存在を仄めかす。神永とルピアは身体は一つ心は二つの曖昧な存在となる。
第二部は外星人謀略編とでも位置付け、国際宇宙ステーションの作業員が拉致され、βシステムで巨大化した上で地球外星人母星に奇襲侵攻し、ウルトラセブンを彷彿とさせる光の星の戦士たちに殲滅され、星団評議会が地球人類を生物兵器となり得る脅威だと危惧し、調査責任者のゾーフィを正式派遣。騒動に便乗したザラブやメフィラスがそれぞれの思惑で暗躍する。
第三部が地球命運編と位置付け、外星人による度重なる地球人類拉致事件とメフィラスの提供したβシステムによる人類決戦兵器ウルトラマンアースとルピアの共闘で数々の脅威を撥ね除けるが、逆に増長した地球人類はβシステムを各国が要求し国家間対立の火種に。星団評議会の脅威意識は強まり、中立的に差配し強攻策に反対するゾーフィが星団評議会の決定に押し切られる形で最終兵器ゼットンを用意するものの、ゾーフィはルピアの真意を問い質した上でどうするべきかの最終的な結論を地球人類の精神活動に最も通じるルピアに委ねる。
そんな形であれば政治的な動きと外星人の策動、地球国家間の共闘論とβシステムの扱いや神永の帰属を巡って荒れる展開となり、ウルトラマンアース(エヴァンゲリオンのオマージュでありウルトラマンAとも通じる精神的に未熟な少年少女の化身)が鍵を握ることになり、元公安所属の加持リョウジ的な神永本人とルピアの対立葛藤共闘と揺れ動く展開となり、ウルトラマンと禍威獣の戦いで一般市民の死傷者犠牲者は増えて世論は二分し、あくまで地球人類側の警察官僚という立ち位置の神永とルピアは葛藤対立し、ルピアは地球人類に協力すべきか見限るべきかで苦悩する。
禍威獣が日本にしか出現しないのも元々の光の星の戦士たちのルーツが日本にあり、ゾーフィ、ルピアら光の星の戦士たちとは生物兵器たる起源もつ日本人がその姿を変え、大きな戦いを通じて発足した星団評議会から信任と共に戒律を課された存在だとなれば、過去の経緯を知る外星人たちが一番脅威になりそうな日本と日本人を早めに叩くなり、懐柔しておきたいとの説明がつく。
そして、地球人類は未開でこそあるが繁殖力に富み、その知性は時として外星人たちの高度理論を看破する侮れない存在と規定すれば、大逆転劇を可能にする叡智も備えた存在だとなる。
なんにせよ妄想が膨らみ、シン・ウルトラマンの世界観は無限に拡大する。
戦闘シーンにおいては殊に空中戦においては着ぐるみでは再現が難しかった多彩な動きが表現されていてその象徴たるカラータイマーが逆にないことで、エヴァにあった活動限界を悟らせない趣向となっている。