「禁止されるほどのネタバレとは…?」シン・ウルトラマン ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
禁止されるほどのネタバレとは…?
仏つくって魂入れず、冷めたピザ、味のしないゴム、ってただのゴムか。
うーん誰に向けて何を楽しめというのか。
カイジューの魅力も乏しいし、ドラマは盛り上がらないし、特撮パートもパッとしないし…ねぇ。
後からの情報によると、どうも予算もスケジュールもかなりタイトだったもよう。
なるほど。。
ストーリーはともかく、シンゴジラに見られた映像的なこだわりすらあんまり感じられなかったのはそのせいかな?
庵野秀明と仲間たち、は多くの才能ある人材を抱えたドリームチームとお見受けしますが、なぜかその中にストーリー面を牽引できる人がいない。
(前田真宏氏は自作ではシナリオを的確にジャッジできるはず、ですが庵野監督案件ではもっぱらデザイン面や画作り方面のみのサポートを要請されているようす)
とにかくシナリオのプロが前に出てこない。
そこの交通整理が甘いまま撮影に入ってしまったのが最大の敗因ではなかろうか。
ここらへんスケジュールのなさも影響してるかも。今回は通しのプリヴィズ作ったんでしょうか?
なにしろ話が終始ガチャガチャしてる。
色んなカイジューが出てきて戦ったりはするんだけど、それがひとつのお話として積み上がってる感がない。すごい単調。
骨折した土台の上でどんなにセリフでがんばってもすべては上滑りしていく。
そのうえ気持ちを全部セリフで説明しちゃうんだ。「リアル」な大人ってもっと嘘ついたりタメがあったりすると思うんだけどね。。
思うにゴジラとの違いは下地がTVシリーズであること。20分×1年とかのフォーマットを2時間の映画に再構成するのはいかにも無茶で、ゴチャつき不可避なんだろうとは思う。
そのためか長いシリーズを無理やり再編集したかのようなダイジェスト感は否めず、ウルトラマンが人と関わってヒーローになっていくカタルシスも、絶望的な状況下でヒーローを信じて苦闘する人間のドラマも盛り上がらないまま終幕へ。
特に気になったのは場面内のウルトラマンと人間側の視点の混在。
どっちの視点なのか曖昧なままシーンが進行してしまうので、過剰にセリフで説明してるのに肝心なことは説明不足っていう日本映画にありがちな悪循環に陥ってしまっている。
とくに序盤において、見せるべき場面と背後にふせておく場面の判断を間違えてしまったことが最大のつまづきだったように思う。
クライマックスがあれなら、シンジがウルトラマンになったくだりはもっときちんと描かないとダメなのでは…?
往年のファンはともかく、私のようなリテラシー低い客からしたら、出てくる星人をもっと整理してドラマの盛り上げに絞ってくれた方がよかったのではと思う。
売れっ子声優さんが担当したあの星人とか、エピソードとしてはそんなにボリューム必要ないのでは?
むしろメフィラス出るならもうそれメインでよいのでは?
人間側の政治的な駆け引きとか、あれドラマに関係ある?
カトクタイも基本リクルートスーツでパソコンカタカタしてるだけだし…ただの解説役?
そもそも原子力施設や電気に関するカイジューって時点で、てっきりゴジラより踏み込んだ原発ネタをやるのかと思ってたわ。。
いい加減もう、本当はノンポリなのに見せかけだけ「政治的」なネタや、「リアル」の風を吹かすのやめにしてくれないかな?
俗に子供ほど大人に見られたがるとかいうけど、正直見てるこっちが恥ずかしい…
やりすぎ実相寺アングルとか、会話の途中でちょこまかイマジナリーラインを越える繋ぎとか、別に中身がおもしろければ全然アリだと思うけど、この出来だとドラマに自信がないのをごまかすための小細工みたいに見えてしまう。
パンフレットでネタバレしたところで特段つまらなさは変わらないだろうし、帯の警句がむなしい。ネタバレってどのカイジューが出るとかそういうことを指してるのかな…?
もちろん役者は全員ちゃんとプロの仕事をしてたと思うし、とくに長澤まさみは石原さとみ以上に演技力であの非現実的なキャラに実在感を持たせていたと思う。その献身ぶりが逆に切ない。
低予算でもというか、低予算になればなるほどシナリオはクオリティ向上に寄与するコスパのいい工程のはず。
伊藤和典とは言わずともプロのライターの1人や2人、せめてアドバイザーを付けたところで予算はそう膨らまないと思うのですが。。
でもそういう真っ当なバランスの良さをこの人たちに求めること自体がまちがいだって言われたら、確かにその通りとしか言いようがありません。
なにせ「式日」の監督なんだからなぁ(式日は大好き)。。