「ウルトラマンってどんな奴?」シン・ウルトラマン ヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
ウルトラマンってどんな奴?
いやー、面白かった!
本作最大の特徴はウルトラマン本人が地球人と会話する点だと自分は思う。
元のテレビ版ではウルトラマン本人が自分の意思を口にするのは第一話・ハヤタ隊員との融合時と最終話・ゾフィーとの会話の時だけである。会話時間も僅かだ。人間体の時はハヤタ隊員の意思で動き、ウルトラマン時はウルトラマンの意思となる。
しかし本作は違う。外星人、宇宙人としてウルトラマンが地球人と対話する。そして地球人を理解しようとしている。
庵野さんが学生時代作った自主製作映画、帰ってきたウルトラマンでも庵野さんが(庵野さんの顔で!)ウルトラマンを演じていた。
庵野さんはウルトラマンに変身する人間をやりたいのではない。ウルトラマン本人という宇宙人になりたい人なのだ。
だからウルトラマンが本人の意思を人間の体を通じて話してくれる。
で、そのウルトラマン。人間臭くて良い奴だった。
この映画、とにかくテンポが早い。情報マシマシ、いつもの庵野映画だ。
映画が始まってすぐ怪獣(禍威獣)を見せてくれる。ごたくは良いから早く禍威獣を見たいという欲望を理解してくれている。
この映画、シリーズ第1作のウルトラマンを見ているとより分かりやすい。どこがテレビ版ウルトラマンでどこが違うのか、ちょっと気づいた点を列挙してみた。
まず元のウルトラマンと同じ点
・シンゴジラタイトルからシンウルトラマンへのタイトルクレジット変更(ウルトラQからウルトラマンへの移行と同じ。前作から本作への引き継ぎクレジット)
・ウルトラマン本人のきっかけで命を落とした地球人とウルトラマンが融合する。
・ザラブ星人がウルトラマンを監禁し、ザラブ星人がニセウルトラマンとなり街を破壊する。
・メフィラス星人が地球人の女性を巨大化させて街を破壊する。
・メフィラス星人とウルトラマンの対話、論理のぶつかり合い
・最終怪獣ゼットンに敗北するウルトラマン
・ゼットン撃退を人類の力で行う
・最後のシ者として現れるゾフィー
・ラスト、融合したウルトラマンと地球人の分離
テレビ版ウルトラマンと違う点
・カラータイマーが無い
・ウルトラマンと人間が融合するきっかけが元のテレビ版はハヤタ隊員とウルトラマンの宇宙船の衝突であるのに対し、今回は神永が子供を守った為、命を失った。これはウルトラマンというより帰ってきたウルトラマンである。
・体力が無くなると緑色になるウルトラマン。これも帰ってきたウルトラマン放映時に児童書に記載された設定だ。
・ザラブ星人の身体。着ぐるみの時は3Dだが、平面構成の2D怪獣。現代で無ければ表現できない外星人だった。
・メフィラス星人とウルトラマンの対話が人間体。そしてなんと居酒屋!ウルトラマン、日本酒飲むんだ(笑)そういえばウルトセブンでもセブンとメトロン星人が木像アパートの一室でちゃぶ台を囲んで地球の存亡を掛けた会話をしていた。ザ・ウルトラマンという漫画作品でも帰ってきたウルトラマンが酒飲んでたな…
・ゼットンの起動理由。テレビ版はゼットン星人の地球侵略だったが、今回は光の国側の地球殲滅。
・ゾフィーの体色。
(訂正・ネットの考察を拝見してゾフィーの体色は成田亨氏デザインのウルトラマン神変というウルトラマンのデザインが黒と金色だそう。またゾフィーがゼットンを起動させたのは、テレビ版放映時の児童誌でゾフィーがゾーフィという名前でゼットンを連れてきた敵宇宙人として紹介された誤記かららしい。)
・ゼットン、デカッ!
とりあえず思いつくものを挙げてみた。自分はウルトラマンもそうだが帰ってきたウルトラマンの影響も色濃く受けていると感じる。
また演出上、ウルトラマンをリアルタイムでテレビで見ていたら出会っていただろう映像体験を伝えようともしていると感じた。
まず冒頭5分(ここも情報過多(笑))で登場するウルトラQ(ウルトラマンの前番組)の怪獣達がなんとなくモノトーンな感じなのだ。
モノクロ作品で作られたウルトラQに対し、ウルトラマンはカラー作品。その変化を示すためにモノトーンな画面、色彩を抑えた禍威獣を出したのではないか。
さらにウルトラマンが初めて地球に来た時、体色が灰銀色、口元にシワが寄っている。
これもカラーテレビが無い家庭ではカラー作品のウルトラマンを白黒でしか見れない。
さらにテレビ版序盤の口元にシワが寄ったザラついたマスク造形(ウルトラマンを喋らせようとしたという説がある)を再現しているのでは無いか。
そんなウルトラマンが人間と融合することでカラー作品ウルトラマンが始まる。
何点か疑問点もある。
・一戦目、二戦目の場所、山地が連続してしまうのはちょっと飽きちゃう。
・長澤まさみのセリフ回しがシンゴジラの石原さとみ、アスカ、ミサトと脈々と受け継がれる庵野さんの有能女性セリフ、ちょっとダサい。
・メフィラス星人のベーターボックス、メフィラス星人が出現させた時に掴むんなら匂いで追う必要性あった?
・日本に出現した禍威獣は古代に埋蔵された生物兵器?ちょっと分からない。
・ベーターカプセルの原理が伝わりずらい。
・メフィラス星人とゼットン、まんま使徒
・全体的にちょっと情報過多過ぎて追うのが大変だった。
だけど自分としてはこんなの重箱の隅つつくようなものだった。いやー、本当に面白かった!
多くの人は幼稚園や小学校低学年でウルトラマンを、ヒーローを卒業していく。
しかし、ウルトラマンはなぜ人類の為に戦うのか、どんな変身原理なのか、そしてウルトラマンと話してみたいと50年間本気で思っていた人が作った映画だと思った。
その50年間真剣に考え続けた人物とは勿論、庵野秀明だ。
> 体力が無くなると緑色になるウルトラマン。これも帰ってきたウルトラマン放映時に児童書に記載された設定だ
へえへえへえへえ!!そうなんですね。知らなかった!!
> ウルトラQ(ウルトラマンの前番組)の怪獣達がなんとなくモノトーンな感じなのだ
ですね。全く同感!セピアというか。それがまたのっけからいい感じなんですよね〜!
> 山地が連続してしまうのはちょっと飽きちゃう
これは、そうですね。でもお金って、尽きちゃうものだから。レビューにも書いたけれど、前○さんが庵野樋口組に百億くれないかなあ。