「懐かしいけど新しい」シン・ウルトラマン U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
懐かしいけど新しい
TVシリーズのオマージュをふんだんに感じるものの、何故か新しい。
棒状の飛行体型とか、それが風車のように回る様とか、スーツのシワとかマスクのバリとか。予算上の都合か当時の精一杯の結果なのかは判断しかねるが、それら全てを必然として肯定したような本作。
見応えと問われれば答えに詰まりもするが、色々と感慨深かった。
既出の作品だけに期待値なんてものもあるのだが、そもそも「ウルトラマン」とは何だったのか?そんな事にまで言及してる脚本に思う。もとより当時は小学生くらいなので小難しい事は考えてもいなかったろう。
大人になって、当時のヒーローを再考し楽しむ為の裏付けのようなものがいっぱい描かれてた。
コレはウルトラマンであって、ウルトラマンではない。そんな感想をも抱く。
とはいえ、カメラも特撮技術も進化を遂げて当時では考えられないような…いや、考えついたとしても実現できないようなカットが多数ある。オリジナルのスタッフはこの作品を見て「コレコレ!」と歓喜するのであろうか?
印象的なのは庵野カットの存在感だ。
アニメ、主にはエヴァなのだけれど、ちょいと見慣れないアングルがやたらに挿入されてくる。なのだが…そのカットと芝居がシンクロするわけでもなく戸惑う観客も多いのだろうと思う。だが、これが庵野作品なのであろう。監督故の特色と言っていいのかもしれない。
物語は大人が見て楽しめるウルトラマンだったと思う。メフィラスの立ち位置とか絶妙で…なんか2つ名があって宇宙一の策士とかそんなんだったと思うのだけど、ウルトラマン怪獣大百科とか読んでもピンとこなかった。なのだが、本作ではなるほど、と唸る。彼による世界観の説明もとてもスムーズで、好印象。怪獣の生い立ちや何故地球が狙われるのか、とか。
気になるのは多用される「マルチバース」
…マーベルのソレと同一のものなのであろうか?いや、まさか、さすがにそんな事は起こらないとも思うのだけど、冒頭のタイトルの前に提示される「シン・ゴジラ」なんらかの関係性を想起させられる。
ウルトラマンのデザインも怪獣の造形も大好きだ。
怪獣は現代よりにブラッシュアップされてはいるものの、当時とほぼ変わらないウルトラマン。
とても、とても、素敵なのである。
simple is Bestとでも言おうか、普遍性さえ感じてしまう。
普遍性と言えば音楽もそうだ。
当時を想起させるカットの存在感も含め、実に世界観を雄弁に語ってくれる。
融合と言えばいいのか、その辺りはシン・ゴジラの時よりも成功に近かったように思う。
ゼットンまでを見事にまとめた本作。
単発になるのか、前振りになるのかは分からないけれど、50越えたオッサンが楽しめる空想特撮映画であった。
あれ?元は空想科学小説じゃなかったっけ?
ウルトラQとごっちゃになってるのかな?
■追記
色々なレビューを読んでふと思う。
CGのモーションが良くないとかあるのだけれど、コレが正解はないのではないかと思う。
怪獣も宇宙人も見た事ないだろ?
人間がスーツを着て宇宙人にならざるをえなかった時代とは違うので、どんな動きをしようと「人間」を基本に比較する必要はないと思う。
関節がなかったりしても不思議じゃないよ。
突如4本腕になっても、地球外の生態系なのだから、否定のしようがない。
人間とは違う機能を有しているのだから。
■追記2
あっさり終わったラストカットについて、ふと思い立った事がある。
あのラストカットを俺は「妙な終わり方するなぁ」と疑問に思ってた。で、何故アレだったんだろうと。
神永の目線ではあるものの、神永を通した観客の目線なのかと思い…ウルトラマンは貴方の心の中にもいるよ、とか。神永は貴方だったんだよ、とか。
崇高な意志を持つ生命体の断片を人類全てで分かち合う、というようなメッセージであるならば、あのラストカットにも合点がいくなぁと。
ふと、そんな事を思いたった。
今晩は。
今作のレビュー数を見ても、皆、ウルトラマンが好きなんだなあ・・、と思いますね。
で、レビューを拝読して思ったのは
■追記の文章に深く納得してしまったことです。”木を見て森を視ず”(ちょっと、違うかな。)ではないですが、今作の様な空想映画は、細かい所を突っ込むのは粋じゃないよなあ、と思いましたので。
では、又。返信は不要ですよ。