「最高傑作・・・私の好きな言葉です。」シン・ウルトラマン よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
最高傑作・・・私の好きな言葉です。
ウルトラマンシリーズはメビウスをリアルタイムで追っていた世代。
昭和のウルトラ六兄弟は空想科学読本とかでどんなお話があったかはそれなりに知ってる程度。
庵野監督の実写はシン・ゴジラを見て大興奮していた。
まず、単純にテンションがむちゃくちゃ上がる。
テーマがしっかりとあった上で特撮特有の謎科学や戦闘シーンの描写でアドレナリンが出まくり。
中毒性があって何回もリピートしたくなる。
今作は兎にも角にも怪獣の人選が良い。
ウルトラマン好きだとレッドキング、ジャミラ、バルタン星人辺りも出したい筈だろうにそこをグッと堪えてテーマを伝えるのに必要な五体の怪獣に搾ったのは最良の選択。
即ち、
ネロンガ(禍特対、ウルトラマンの紹介)
ガボラ(スペシウム光線で倒すと人に害が及ぶ為ウルトラマンがどういう選択をするのか)
ザラブ星人(仲間によってウルトラマンが救われ、仲間の必要性を感じる)
メフィラス星人(超科学技術に対する人間の愚かさ)
ゼットン(人間とウルトラマンの共闘、絶望と希望)
こうして観ると現在の人間とはどんな生物かをテーマにしているのではないかと感じた。
外星人から見た人間の愚かで下劣な部分と協力して創意工夫をする長所。
これらが非常に良く纏まっている。
まず冒頭ウルトラマンのあのタイトルバックが出て、その時点でワクワクが止まらない。
そして、そのあと現在までの簡単なあらすじがいくつかの映像と字幕で表現される。
多少強引ながら時間をかけずに我々観客を特撮の世界に引きずり込むには最良の手だと思う。
そしてネロンガ出現。
ここでその世界の日本が禍威獣に対してどんな対策をとっているかが端的に説明される。
さらにその時の会話で禍特対の中で誰がどんな役割を担っているかが明示される。
更に更にこのネロンガの特徴を推定してそれに対する対策を講じるまでの会話も庵野秀明節全開でシン・ゴジラ好きとしてはかなり楽しい。
もちろんウルトラマンをある程度知ってる人ならネロンガがどんな怪獣かを知っているわけだが、その特徴をこうやって導き出すのかと楽しかった。
更に現代技術を持ってすればネロンガの透明も型なしだというのも面白かった。
そして現代兵器ではネロンガに太刀打ち出来ないことが明らかになったところでいよいよウルトラマンの登場だ。
この時カラーリングが我々の知ってるウルトラマンと違って銀一色なのに少し違和感を覚える。
が、到着して比較的すぐ放たれるスペシウム光線。
この時の光線の分析もプラズマ化とかウルトラマンの小ネタが随所に入っていて楽しい。
そして浅見の登場によってバディや仲間という単語が既にウルトラマンと同化して神永に提示される。
というかウルトラマンが神永に化けてる様にも思えて同化していると感じられる表現が少なかったのは少し残念か。
そしてガボラ戦。
ここできちんと現代兵器では太刀打ち出来ずもうどうにもできないというところにウルトラマンが登場する。
つまり人間が努力して努力してもなんとか出来ない時に救世主として現れるウルトラマンの基本スタンスが説明される。
そしてここでちょっとクスッとしたのが、滝が「これはあとしまつが大変だぞ〜」という台詞を言ったこと。
図らずも大怪獣のあとしまつを思い出して笑ってしまった。もちろん撮影時は件の映画の情報は入ってないだろうから偶然なんだろうが。
そしてザラブ星人編へ
まず津田健次郎さんの声の不気味さが良い。
後に出てくるメフィラスとはまた違った妖しさでなんならメフィラスより腹に一物ありそうな感じがたまらない。
メフィラスとの内面の差別化もうまく出来てるなと思う。
ただ他の話と比べると途中少し無理な展開もあった気がするがノリと勢いでどうにか見れた。
更にウルトラマンの空中戦が見れたのもよかった。
途中細かいなと思ったのはザラブが「なぜ最初に日本と条約を締結しようとしたのか」について「最初に降り立ったのが日本だった」と答えると浅見が「ウルトラマンがいるからでしょ」と言う。
その時にザラブに少し間があったこと。
図星を指されたから一旦黙ったのかと2回目にして気づいた。こういう新しい発見があるのも楽しい。
そして本命メフィラス星人編。
このメフィラス編でこの映画のクオリティが段違いに上がってると言っても過言では無い。
この話原作だとメフィラスが科特隊のアキコ隊員の弟に対して「地球をあげます」と言わせようとしていて多少強引で乱暴なところもある外星人だったのがその性格と計画が大幅に見直されてより紳士的に侵略・・・いや当人の言葉を借りるなら管理する計画が建てられていた。
これによってメフィラスの魅力度がグンと上がり反対に人間の醜さが浮かび上がるようになっていた。
なんならベータカプセルを持てるだけの知性と理性を人間が備わっていればもしかしたらウルトラマンも手を出さなかったかもしれないと思わせるだけの態度だった。
反対に人間は、巨大化した浅見の映像を多数ネットにアップしてメフィラスいわく「下劣」な行為をしたり、ベータカプセルを先に手に入れて少しでも他国より優位にたとうとしたり人間の愚かな本性丸出しである。
そして「〇〇〇〇、私の好きな(苦手な)言葉です」という名台詞を生み出したのは特撮史に残る快挙だと思う(少し大袈裟だろうか)。
もう完全にシンウルトラマンのメフィラスでアップデートされてこれ以降のウルトラシリーズでもこのキャラが踏襲されていくのではないかと思うくらい魅力的なキャラクターに仕上がっていた。
更に外見的なことで言うと肉弾戦を意識してか原作よりスマートになっていたのもカッコよかった。
そして!そして!!!
戦闘BGMがカッコ良すぎる!!!!!!
もうここから終始興奮しっぱなしですよ。
ウルトラマンと互角に渡り合うメフィラス。
ここの戦闘シーンが本当にカッコいい。
そのメフィラスが帰る理由を最終章に繋がるように少し変えてメフィラス編は終了となる。
そして最終章、ゼットン。
原作でまさかのウルトラマンを死に追いやるゼットンを光の国の最強兵器に変えた解釈には驚いた。
光の国も他の外星人と同じように、いや他の外星人以上に人間を危険視(知能とかではなくその圧倒的物量をだが)しているが故に滅ぼそうとしているのが原作の理想郷感とはまた違ってリアルな感じで良い。
そうすることによってウルトラマンが地球で人として過ごした中で感じた人間の魅力が解説されるのも上手い。
メフィラス編から少しずつあったウルトラマンがいれば俺らいらないじゃんという他力本願な考えが不穏な空気を醸し出し、ウルトラマンが敗北したときの絶望感というのはかなり凄まじかった。
ここで何も知らない人々が普通の生活を送っているシーンを挟むのがうまい。
人の幸せを見ることでこれからこの幸せが絶たれる未来を予想してしまって絶望感がマシマシになる。
そこからウルトラマンが撒いておいた希望の種を人間が育てて対ゼットン作戦を立案する様はそれまでの絶望感があっただけに最高のカタルシスがある。
人間とウルトラマンの共闘シーンはこのシンウルトラマンにおいてそれまで撒いておいた種が成長して実った瞬間だったと思う。
その後ウルトラマンの口から人間の魅力が語られ無事神永が地球に帰還しエンドロールへと行く。
全体的に後半は音楽が素晴らしく戦闘シーンのワクワク感が倍増されていた。
あとあのウルトラマンお決まりの変身カットが最後の最後に披露されたのも最高のおあずけで良かった。
また成田亨さんを尊重して廃止されたカラータイマーの代わりにウルトラマンの体色がその役割を果たしてるのが面白い。
更に神永と同一化する前は銀一色で同化してから赤色になるというのも芸が細かい。
さて、役者陣の演技であるがみなさん素晴らしかった。
禍特対の面々もそれぞれのキャラがよく立っていて上手いこと差別化され、更に難解な科学用語や軍事用語が多用されてるセリフの中にそれぞれのキャラの性格や心情を載せていたのは凄まじい
個人的には早見あかりさんの船縁さんが好き。
有岡大貴さんも解明できない謎を前に科学者として苦悩する姿をよく表現していて好印象。
西島秀俊さんも温厚でリーダーシップがある、いつもの西島さん全開で安定感がある。
長澤まさみさんも素晴らしかった。
そして何と言ってもメフィラス星人を演じた山本耕史さんである。
まさに怪演。
その紳士的なたたずまいの中に自然と胡散臭さを匂わせていてすごい。
短い出番で今作1番の印象を残していた。
竹野内豊さんが内閣側の人間として出演していたのもシンゴジラを思わせて興奮した。
シンゴジラではゴジラ等怪獣映画を自然災害として捉えてシミュレーション風にして新たな形の怪獣映画を提示して、
シンウルトラマンでは新解釈を交えつつも成田亨さんのデザインを採用するなど原点回帰の姿勢も提示して、
シン仮面ライダーではどんな映画を見せて貰えるのか、、楽しみで仕方ない。
【追記】
3回目を見てきた。
どうやら冒頭のダイジェストはウルトラQのオマージュだったそうだ。
最初に映画を見た後に行った庵野秀明展でも思ったが、庵野監督は本当に特撮が好きだったんだなと。
また3回も見てると冒頭からさりげなく台詞の中に伏線が張り巡らされてる事に気づく。