「庵野監督と同時代を生きている喜び」シン・ウルトラマン のむさんさんの映画レビュー(感想・評価)
庵野監督と同時代を生きている喜び
ウルトラマンを知らない小4の息子と小1の娘と一緒に見に行ったが、案の定娘はドラマパートで飽きてしまい、鑑賞後も「ウルトラマンはカッコよかったけど、話はよくわかんなかった」という感想だった。
私自身も66年のウルトラマン世代ではないが、昭和と平成の合間世代の私は、ビデオデッキが普及し始めたことも相まって、小学校入学前後に昭和ウルトラマンに触れた世代である。ウルトラマンは、ビデオ等で全話見た記憶がある。
1960年生まれの庵野監督は、もちろんウルトラマンのドンピシャ世代なのだろう。庵野監督の『シン』シリーズは、彼が生きてきた中で彼が好きだったものが詰め込まれているように思う。本作も、にせをチョップした際の痛がるシーンや、ゾーフィとゼットンの件など、当時を生きた子どもたち(それを知っている次世代のオタクたち)に向けた小ネタがバンバンと繰り広げられる。彼の映画にとっては、ネタバレも何もない。なぜなら「全部すでに出ている」からである。この映画を見た人の中にも、娘のように「よくわかんなかった」という感想を抱く人は多いだろう。「よくわかんなかった」という娘に言いたくなった言葉は「それはお前が勉強不足だからだよ」(もちろんそんなことは本人には言わないが…。)
パンフレットの樋口監督のコメントの中に「僕らが少年時代に熱狂した感じを共有すること」とある通り、これは全方位的映画でもある。オリジナルを知らなくても見られるようにできている。おそらく小1のこどもにとっては「よくわからないけど、カッコイイ」でいいのであろう。そう考えると、30分というTVシリーズは絶妙な長さである。これを入口にして「ウルトラマン」という沼にはまる若い世代も、もちろん増えるであろう。
同人誌と一般向け作品の、絶妙な中間作品。それが私の『シン』シリーズに対する感想である。庵野監督と同時代を生きられている幸せを感じながら、『シン・仮面ライダー』を楽しみに待つとしよう。
※マイナス評価ポイント(-0.5ずつ)
・ストーリー展開上どうしても仕方がないのだが、メフィラス(引き分け)⇒ゼットン(負け)と続くのでどうしてもウルトラマンが「そんなに強くない」という印象を受けてしまう。
・ウルトラマンが倒せなかった敵を、人間が倒すというプロットならば、「1ミクロン秒でパンチ」は雑だろう。
以上でマイナス1、4.0採点にさせていただきました。