「最初から最後までクライマックス」シン・ウルトラマン コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
最初から最後までクライマックス
元のテレビシリーズを知らない人でも楽しめるエンタメ作品に仕上がっていたと思います。
知っている人には、リスペクトするような小ネタも満載なので、より楽しめるかと。
作品タイトルロゴが出てきた瞬間からずっとクライマックス。
三幕五戦八場のスピーディな展開は、サブスク配信にYouTubeやTikTokなどで倍速再生に慣れた子供たちすら飽きさせることはないはず。
それに、ウルトラマンも怪獣も、庵野さん監修のもとに作られた、直感的に「かっこいい」「美しい」と思わせる造形なので、老若男女問わず視覚的に引き付けられると思います。
なにより、役者さんの持ってるポテンシャルを引き出す演出・撮影がすばらしく。
主演の斎藤工さんもよかったですが、終わってみれば長澤まさみさんと山本耕史さんのことばかり思い出します。
このあたり、役者の演じるキャラを丁寧に撮る、樋口監督の手腕がいかんなく発揮されたと思います。
私自身、ものすごく面白かったと感じたし、何度も観返したいと思いました。
ただし、若干の懸念が2点。
まず、本作ではテレビシリーズ最終話「さらばウルトラマン」に描かれた「宇宙人と人間のコミュニケーション」「ウルトラマンが人間を好きになって守りたい気持ち」を大事に膨らませています。
かつてのテレビシリーズでは、最終回と宇宙人の絡む数話以外は「怪獣と科特隊(人間)」が主人公で「人間目線」で物語が構築されていました。
今回は「ウルトラマンが主人公」になり、人間と外星人の狭間にある「ウルトラマンから見た目線」が多く入れられたため、(禍威獣の脅威にさらされる当事者・地球人類側視点=自分事としてではなく)俯瞰した「第三者」「観察者」から見た人間の姿が描かれることになります。
これによりSF的要素が強まり、かつ『ウルトラセブン』に近いテイストが足されていたように思います。
そのことが、物語に没入しにくくする可能性があるかもと。
もう一つが、お色気やフェティシズム要素が強いこと。
コメディ要素として機能するように描いてはいるのですが、一部には過剰反応して叩く人が出そうなことも心配です。
本来ならその辺をマイナスと思わず、物語を面白くする工夫と捉えたほうが、作品を素直に楽しめるとは個人的には思うのですが、娯楽は嗜好品なので……捉え方は人に寄りけりかなと。
そんな不安は杞憂・取り越し苦労で済むように、大ヒットしてくれたら嬉しいかな、と。
劇場から出るときに、興奮していたよその子どもたちや、女性たち、外国人たちの姿が見えたので、心配しなくてよいのかもしれません。