「光の国の正義は誰のためのもの?」シン・ウルトラマン ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
光の国の正義は誰のためのもの?
〔ウルトラQ〕や〔ウルトラマン〕はリアルタイムで見ていた世代。
ただ幼いこともあり、興味はやはり
単純な怪獣退治モノに偏りがち。
右代表は〔ゴメスを倒せ!〕や〔ペギラが来た!〕〔ガラダマ〕の回か。
〔1/8計画〕や〔あけてくれ!〕などの面白さが判るのは、
かなり長じてから、それも再放送を見た時で。
しかし、そうした単純な勧善懲悪モノの方が
ウケは良かったのだろう、
続いてのシリーズはそちらに特化した〔ウルトラマン〕。
ただその中にも〔故郷は地球〕〔まぼろしの雪山〕といった、
今から思えば社会性を帯びた回もこれあり。
『ジャミラ』であれば、その対極に在るのは
〔オデッセイ(2015年)〕と、
後々の作品との比較も、楽しかったりする。
さて、「シン」である。
同じ惹句を冠した〔ゴジラ〕では、突然の厄災に衆知を集め対応し、
永く向き合う決意をし、更には光明を見い出す、
イマイマの日本の表象を描いた『庵野/樋口』コンビが
どんな外連を見せてくれるのかと期待したら、
蓋を開けてみれば、まるっきりの{リブート}作品。
これには少々、拍子抜け。
とは言え、そのことが全体の面白さを毀損しているかと聞かれれば、
そのようなことは全く非ず。
先ずは出て来るクリーチャーを「怪獣」と「星人」に大きくカテゴライズ、
各々が頻出する理由を説明する。ああ、なるほど、
なので今回は単なる「侵略者」の「バルタン星人」は登場しないのだと納得。
現代的なアレンジは施しつつ、各エピソードの骨格はきっちり踏襲。
その中身が五十年を経て古びていないのは、
元々の構想が秀逸だったのだろうと感心。
偉大な先達である『成田亨』や『古谷敏』へオマージュを捧げたいとの想いにも
激しく同意。
加えて、過去作との比較で見つける楽しみも。
「ザラブ星人」による「にせウルトラマン」は
目の形だけが異なり、肝心のつま先を見せない、とか。
或いは巨大化させられる『浅見弘子(長澤まさみ)』は
『フジ・アキコ隊員(桜井浩子)』とは異なり
科特隊の制服姿ではないので、サービスシーン満載との
嬉しい余禄はあったりも。
また、対象はちと違うが、
「メフィラス星人」のフォルムは「EVA初号機」そっくり、とか。
先の作品でお馴染みの、政治に対しての揶揄は軽めも、
ちくちくと寸鉄を刺すような皮肉は十分に効いている。
一方、風俗の取り込みは、全くと言っていいほど行われておらず。
その分、原作の流れを忠実になぞっているので、
知識のある者にとっては判り易い。
他方、初めての鑑賞者に対しては、親切な造りであったかどうか。
魂は細部に宿ると言うけれど、
不思議なコトにイマイマの社会情勢を予見したような幾つかの科白にははっとさせられる。
とりわけ「ゾフィー」が吐く科白は、
あまりに現状のどこかの国のスタンスに合致し過ぎて驚愕。