劇場公開日 2022年5月13日

「庵野秀明はウルトラマンに邦画の限界を見たか?」シン・ウルトラマン ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5庵野秀明はウルトラマンに邦画の限界を見たか?

2022年5月14日
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初めに言っておくと、私は初代ウルトラマン本編を全く見たことがありません。
本作を見るに至った理由はあくまで、「シンゴジラが1本の映画として素晴らしかったから」。
その庵野秀明の関わる新作実写映画だから見たのであり、特撮映画が好きなわけでもウルトラマンの新作だから見たわけではありません。

あくまで非ウルトラマンファンで映画ファンの人間が、フラットに作品に触れての感想という事でご了承ください。

いきなりですが、近年の庵野秀明作品を点数比較すると以下となります。
■シンゴジラ:100点
■ シンエヴァ:80点
■シンウルトラマン:55点

シンウルトラマンは1本の映画として合格点とはならず…と言った感じ。ひいき目なしに評価した場合、賛否で言えばはっきり"否"といっていいクオリティでした。
正直、シンゴジラと比較してあまりに見劣りする内容と映像であり、心からガッカリしたというのが本音です。

後で知りましたが、本作はあくまで「樋口監督作品」であり、庵野秀明氏は脚本以外大きく関わっていなかったとの事。撮影現場にも殆ど顔を出せていないらしく、"庵野風樋口映画"といった作風になってます。
故に、映像面もストーリー面もカメラワークもチグハグした印象が拭えないわけです。

まず、良かった点。
冒頭〜序盤は物語も映像もテンポよく進んでいきます。
ウルトラQを思わせるタイトル表示。
パシフィックリムのように、これまでの怪獣(禍威獣)との交戦、科特隊(禍特対)結成までの歴史を振り返るアバン。
ウルトラマンという巨大な異形と人類の遭遇。
2体の怪獣とのスケール感のあるバトル。

ここまでは100点です。
映画の導入として文句なしのクオリティでした。

が、良かったのはここまで。

あとはやたら冗長な人間ドラマと専門用語の応酬。
アクションやCGも終盤にかけて加速度的にチープになっていく上にボリュームも少ない…といった具合です。
外星人との話になってからはメフィラス星人の演技で何とか見れるものの、ドラマパートが多くの比重を占めており、テンポは一気に悪くなります。

見ていて特に辛かったのは、シンゴジラでうまく処理していたドラマパート。
今回も早口で捲し立てるようなセリフが多く、カット割も多用されているんです。それは良いんですが、この演出をもってしても目に余るくらい演技が酷いし、明らかに悪目立ちしているキャストがいました。特にアニメ調のセリフが多くてこの辺りも見ていてしんどい。生きた人間同士の会話にはとても見えません。邦画の悪い部分が滲み出ていました。

邦画ならこんなもんでしょ…って?
いやいや、邦画の悪き慣習を大きく打破したシンゴジラの後にこれはないですよ。邦画だから…という忖度や甘えありきのスタンスではシンゴジラを超える事はできません。

4部構成でストーリーもドラマも圧縮されすぎ。
駆け足すぎて余韻も成長ドラマもない。
故にウルトラマンの葛藤が読み取れない。
メッセージ性も希薄に見えてしまう。
この点も、元の題材が面白いだけにもったいない。

また、シンゴジラと異なり最初からノリが軽いので、最終局面に至っても絶望感がまるで感じられない。
リアリティラインが不明確なので「何が起きてもどうにかなる」と思えてしまう。
これでは緊張感を得るわけもなく、視聴者がハラハラドキドキするわけもない。

最後の最後まで作品に没入することなく…終了。

これで良いのか庵野秀明!
これが今の日本映画の限界なのか⁈

本人も不本意なままでの映像化だったのではないかと思わずにはいられません。
予算も限られていたし、自分が撮影に関われる時間も少なかった。その中でもいちファンとして詰め込めるものを詰め込んだんでしょうが、不完全燃焼感は否めません。

このタッグならもっと良いものが作れたはず!
そう思うと非常に残念と言わざるを得ないです。

ジョイ☮ JOY86式。