「きたぞ われらの 長澤まさみ。 これ、ご新規さんにはちょっと厳しくないっすか…。」シン・ウルトラマン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
きたぞ われらの 長澤まさみ。 これ、ご新規さんにはちょっと厳しくないっすか…。
1966年の誕生以来、今なお愛され続けている空想特撮シリーズ『ウルトラマン』を新たにリブートした一作。
また、映画監督・庵野秀明を中心として制作されている一連のSF特撮&アニメシリーズ「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」の第3作目でもある。
巨大不明生物「禍威獣」の脅威に晒される現代日本を舞台に、謎の巨人「ウルトラマン」と禍威獣との戦いを描く。
脚本/総監修/企画/製作/編集は庵野秀明。
主人公である「禍特対」の作戦立案担当官、神永新二を演じるのは『海猿』シリーズや『シン・ゴジラ』(戦車中隊長、池田役として出演)の斎藤工。
禍特対の分析官、浅見弘子を演じるのは『君の名は。』『コンフィデンスマンJP』シリーズの長澤まさみ。
禍特対の班長、田村君男を演じるのは『風立ちぬ』『クリーピー 偽りの隣人』の西島秀俊。
”光の巨人”ウルトラマンの声を演じるのは『耳をすませば』『シン・ゴジラ』(文部科学省職員、安田龍彥役)の、名優・高橋一生。
光の星からの使者、ゾーフィの声を演じるのは『魔女の宅急便』『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの山寺宏一。
禍特対に接触してくる政府の男を演じるのは『シン・ゴジラ』(内閣総理大臣補佐官、赤坂秀樹役)『狐狼の血』の竹野内豊。
まずは自分の立ち位置を申し上げておきますと、世代としては『ティガ』(1996-1997)ど真ん中(Gonna TIGA! Take me, take me higher〜♪♫)。
とはいえ熱心に観ていた訳ではなく、親の目を盗んでチョロチョロっと観ていたという感じ。
自分にとっては、むしろ『ティガ』よりも『ゼアス』(1996)に思い入れがある(ゼアス!ゼアス!ゼアス ゼアス ゼアス!)。
『ウルトラマン』ガチ勢にとっては邪道かも知れないが、子供の頃に劇場で観た『ゼアス』は最高に面白かったのだ!
なので一番好きなウルトラマンは『ゼアス』である。異論は認めない。
本作の下敷きになっている『初代』を観賞したことはない為、思い入れは全くない。
だが、子供の頃の愛読書は「怪獣図鑑」だったし、ソフビもすごく沢山買ってもらっていた。
全く詳しくもないし思い入れもないが、同世代の中では『ウルトラマン』シリーズ好きな方に入ると思う。
そんな自分が本作をどう観たか?
端的に言ってしまうと「そんなに二次創作がしたかったのか、庵野&樋口」。
そりゃ『ウルトラマン』好きが観ればテンション上がるかも知れないけど、自分のようなビギナーにはちょ〜っとシンドい映画ですよコレ。
まず一番引っ掛かるのは作品の構造。
本作は「ネロンガ編」「ガボラ編」「ザラブ星人編」「メフィラス星人編」「ゼットン編」の5つに分かれている。
2時間の映画であるにも拘らず、5つもストーリーパートが存在している為、一つ一つの物語が早足になってしまっている。
そのため、キャラクターの掘り下げや人間関係が構築されていく過程の描き込みなどがおざなりになってしまっており、全く「禍特対」のメンバーを好きになれずに映画が終了してしまった。
まるで本作は『シン・ウルトラマン』というテレビドラマの総集編のよう。
これは、製作陣にやりたいことがありすぎて、それを詰め込みすぎてしまった結果こんなことになってしまった、ということだろうか…?
…いや、多分そんなことはない。
百戦錬磨の庵野秀明が、そんなポカを冒すわけがない。
おそらく、この歪んだ作品構造自体が『ウルトラマン』に対するオマージュ(というか、金のかかった二次創作)なんだろう。
『初代』には、『長篇怪獣映画ウルトラマン』(1967年)、『実相寺昭雄監督作品ウルトラマン』(1979年)、『ウルトラマン怪獣大決戦』(1979年)という3つの総集編映画が存在する。
おそらく、庵野秀明は『シン・ウルトラマン』をあえて総集編っぽい映画として作ることで、過去の『ウルトラマン』映画のオマージュを行ったのだろう。
…うん。
そりゃ『初代』を知っている人なら「うわー!この総集編っぽい感じ!これこそ『ウルトラマン』の映画だよなぁ♪😆」となるかも知れない。
でも、『初代』を1ミリも知らない自分のような人間からすると、ただの不出来でブサイクな映画という風にしか捉えられない。
映画の為のオマージュではなく、オマージュの為のオマージュになってしまっており、これではただの二次創作の域を出ていない。
CGのはずのウルトラマンがあたかも模型のような回転をするとか、あまりにも妙ちくりんなカメラアングルとか、見る人が見ればわかるであろうネタが随所に散りばめられていたが、これも『ウルトラマン』ビギナーからすればただの違和感。
『シン・ゴジラ』(2016)のように、劇伴がオリジナルのものであるという程度のオマージュなら鑑賞の邪魔にはならないが、今回はちょっと度を超えている。
まさに内輪の楽しさを最優先して周りとの温度差が生じるという、オタクの悪いところが出てしまった一作という感じ。
とはいえ、全てのオマージュが不発だったのか、というとそんなことはない。
例えば巨大化するフジ隊員もとい長澤まさみには大爆笑してしまったっ!🤣あれで2時間観たいくらい、個人的には大好物!
ゼットンの1兆度の火球って実はトンデモない威力なんやで〜、という「空想科学読本」ファンには堪らないネタを持って来てくたのも良かった。
巨大化とか1兆度とか、大真面目にバカをやるオマージュはおおむね上手く機能していた。
ゼットン星人のポジションをゾフィーが担う、というのも良い裏切りだったと思う。
ゾフィーの名前が「ゾーフィ」だったのは、ゼットン星人とゾフィーが混じって「ゾーフィ」というなんだかよくわからん宇宙人が怪獣図鑑に紹介されてしまった、というのが元ネタ。
こういうわかる人にはわかるけどわからない人でも別に鑑賞の妨げにはならない、というオマージュは良いと思います。
このように、決して全てがダメ〜という訳ではないのですが、やはり二次創作感が強すぎて自分ではついて行けなかった、というのが正直なところ。
二次創作感云々を抜きにしても、後半の展開には疑問が残る。
だってメフィラス星人もゼットンも、ウルトラマンがやっつけないんだもん。
映画開始1秒で怪獣が現れるという思い切りの良さに対し、後半は小難しい会話劇に終始してしまったのはなんとも勿体ない。前半のテンションで最後まで貫き通して欲しかった。
『シン・ゴジラ』では東日本大震災と原発事故を戯画化してみせていたが、今回は安全保障問題と日本の核武装論を戯画化している。
「日本が核武装したところで、もっと強い兵器でボコられて終わりっしょ。」
「安全保障とか言ってるけど、いざ戦争になったらアメリカが日本を命懸けで守ってくれる訳ないじゃん。」
という庵野秀明の思想を、全く押し付けがましくない形で描いている点は流石。
その上で、「自分のケツは自分で拭け」という結論が提示される。
テーマに対しての回答を明確に提示する。これが出来ている時点で立派な作品ではある。
…ではあるんだけどさぁ。あの世界会議の場面はあまりにもチープ過ぎやしませんか?
予算の関係なんかもあるんだとは思うけど、あまりにも海外の描写が無さすぎて、地球滅亡の危機という緊張感が描き切れていなかった。
あとは長澤まさみが匂いを嗅がれるというセクハラシーン。
あれはちょっと不快だわ。
政治的な内容に踏み込んだ作品なのに、女性への性暴力問題についての配慮が無さすぎる。
ただでさえ、今の邦画業界は性暴力問題で揺れまくっているのに、そこにこのセクハラギャグはちょっと…。
お色気ギャグとセクハラギャグは全く別のものであり、お色気ギャグは笑えるけどセクハラギャグは笑えない。
庵野・樋口両監督にはこの点に早く気がついて欲しい。
色々と書いたが、決して嫌いな映画ではない。
むしろ、『ウルトラマン』を大人も楽しめる娯楽映画として甦らせてくれたことに関しては感謝しかない!
とはいえ、コロナによる公開延期も相まって最高潮に高まった期待値を超えてはくれなかった。
なんかCGも安っぽかったし。『シン・ゴジラ』の方がクオリティが高かったような…?
これなら着ぐるみとミニチュアでやってくれれば良かったのに…。
ちょっと点数を辛めにつけすぎた気もするが、『シン・仮面ライダー』はもっと頑張って欲しいのでこのスコアで。
※竹野内豊が出演していたが、これって『シン・ゴジラ』と繋がっているのか?
竹野内豊は「MCU」におけるニック・フューリー的なポジションで、まさかの日本版アベンジャーズを結成しようとしている…?
「マルチバース」という聞き馴染みのある言葉も出て来たし、MCUを意識しているのは間違いないですよね。
まさか『ゴジラvsエヴァンゲリオンvsウルトラマンvs仮面ライダー シン・コンパチヒーローズ』が実現する可能性が…!?
大分前のレビューに共感ありがとうございます。
「シン仮面ライダー」まで観て、お色気とセクハラのはき違えに大いに同意出来ました。男女一緒に寝てるシーンのがよっぽど感動的。
こうえんさん、コメントありがとうございます😊
長澤まさみと山本耕史が巨大化して、怪獣プロレスを繰り広げるという展開があれば最高でした!
そうです私は変態です💦
コメントありがとうございます。シン・仮面ライダー、予告での浜辺美波プッシュにシン・ウルトラマンとは違うオリジナルストーリー展開を期待しつつ、一抹の不安も(笑)